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【第2部開始】ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜  作者: 月森 かれん
第2部 始祖竜編

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第56話 旅商人との出会い

 「お世話になりました」


 港町ゼフィカの船着場。

濡れタオルを返して、船を降りた私は船長さん達にお礼を言った。


 「ガッハッハ!また乗る時は声かけてくれよな!」


 「はい!その時はよろしくお願いします!

ありがとうございました!」 


 手を振ってから振り返ると、ゼフィカの街並みが視界いっぱいに広がる。

白っぽい石造りの家と簡易的な布を屋根にした露天がたくさんあり、薄着の人々が行き交っていた。


 「ブラウア大陸とは全然違う……」


 太陽もギラギラと照りつけている。

それに風も乾燥していて、肌の水分をもっていかれそうだ。


 「って、ここで立ち止まってる場合じゃなかった」


 そう言いながらチラリとポケットを見る。

船酔いしたラディウス達を風に当てないといけない。


 「風の当たる場所……」


 目をこらして探していると、遠目に広場のような場所を見つけた。

その中心に石造りの噴水があり、水を噴き出している。 


 「風じゃないけど、水でも涼めそうだね」


 人にぶつからないように気をつけながら、そこに向かった。


 噴水の周りは待ち合わせ場所になっているのか、日焼けした老若男女がたくさんいた。

 何人かは噴水の縁に座っているので、私も真似をして座る。

この辺りだけ空気がひんやりしていて気持ちがいい。 

肌も潤ってきている気がした。 

 さっそくポケットからラディウス達を取り出して手に持つ。

 

 そのまま10分ぐらい経った。

 手の中でラディウス達がモゾモゾと動き出す。


 「もう治ったの?」


 『完全じゃねぇけどな。かなり楽になった』


 『あー、どうなることかと思ったぞ!船はこわいな!』


 「はしゃいでたくせに」


 『だって船初めてなんだもん!仕方がないじゃん!』


 アルゲオの開き直りにある意味尊敬した。


 「でもここから出る時も船乗らないといけないよ?」


 そう言うとアルゲオはともかくラディウスまで動くのをやめてしまった。


 「移動手段が船しかないんだから我慢してね」


 『本体だったら飛べるのになー』


 『俺への当てつけか!?』


 ラディウスが拗ねそうだったので、立ち上がってもと来た道を戻ることにした。 




 調子を取り戻したラディウス達を連れて、再び露天通りに来た。

改めて眺めると、見たことのない真っ赤な果実を売っている店、キラキラしたアクセサリーを売っている店、壺や布等の雑貨を売っている店等、本当にたくさんのお店がある。

 今の所持金は銀貨4枚と銅貨5枚なので、何か1つぐらいなら買っても大丈夫そうだ。


 「せっかくだから何か買いたいな」


 『役に立ちそうなの買えよ。どうでもいいアクセサリーとかやめとけ』


 「えー!?どうして!?綺麗なのに」


 アクセサリーを見るのは実家以来なので、もう数十日だ。

自分へのお土産にちょうどいいかと思っていたので、否定されて少し腹が立つ。


 『キラキラしてるだけだろうが!それにお前、服買うんだろ?』


 「そうだけど……」


 『もし買うなら服を買った後の方がよさそうだぞ、シーラよ。

後々困っても我等は何もできんからな!』


 「はーい……」


 知らない大陸に来てまでわざわざお金稼ぎはしたくない。

ラディウス達の意見を取り入れることにした。 


 しばらくモヤモヤが続くと思っていたのに、露天を眺めながら歩いていると

そんな気持ちなんて吹き飛んだ。 

 本当に色々な物が売られていて、目移りする。




 「おい、そこのお嬢ちゃん」


 通りはザワザワうるさいのに、その低い声はハッキリ耳に響いてきた。

キョロキョロと周囲を見回すと、端で小さな露天を開いているお兄さんと目が合う。思わず動きを止めると彼がそのまま私に手招きしてきた。

 

 だけど、不安なのでラディウス達に聞いてみることにする。


 「あれ、行ってもいいと思う?」


 『いいんじゃねぇの。身の危険を感じたら逃げればいいだろ』


 『正直不安ではあるが……。ここのことは何もわからないからな。

ついでにいろいろ聞いてみるのも良いかもしれん』

 

 「行ってみる。もし危なそうだったら教えて」


 おそるおそるお兄さんの所に行った。

頭に白い布を巻いていて、そこから短い黒髪が見えている。

さらに生地の薄そうな紺色のロングコートに足首まである白いズボンを履いていた。


 間違っていたらいけないので、確認を取ることにする。


 「私のことですか?」


 「そうだ。てっきり素通りされるかと思ってたんだが……。

 ところでお嬢ちゃん、ここ、初めてなんだろ?

俺が案内してやってもいいぜ?」


 「え、本当ですか!?」


 嬉しくなって思わず距離を詰めると、お兄さんがニヤリと笑って日焼けした手を差し出してくる。


 「ああ。ただし、銅貨5枚な?」


 「えぇ、お金取るんですか……」

 

 「そりゃそうだろ。俺は商人なんだからさ。

まぁ、全く知らない大陸で迷子になって野垂れ死んでもいいんなら、

俺なんざ頼らなくていいけどな」 


 『コイツ、金に目がねぇんだな』


 『ハーッハッハッ!案外貧しいのかもしれんな!心が!』

 

 すっかり元に戻ったラディウス達の言葉に反応しないように耐えていると、お兄さんはニヤニヤしながら急かすように手を揺らす。


 「で、どうするんだ?」


 「うーん……」 


 とても迷う。お金を払わないといけなくなるけど、そこまで高い金額でもない。それにお兄さんの言っていることも間違っていない。

私はこの大陸に来たばかりなのだから。


 「自分で言うのもなんだが、俺は誠実な方だぜ?

ちゃんとお金もらった分の仕事はするさ。

 それに、少し後ろを振り返ってみな」


 「え?」


 お兄さんに言われたとおりにすると、露天店主の5人ほどの男女が一斉に顔をそらした。

 思わずお兄さんに顔を戻すと、ほくそ笑んでいる。


 「ほらな。お嬢ちゃんを狙ってる奴、他にもいるんだよ。

他の所から来た人なんてカモだからな」 


 「……お兄さんもそうじゃないんですか?」


 そう言い返すと、お兄さんは黄色がかったオレンジ色の目を細くした。


 「おいおい、俺を悪徳商人と一緒にしないでくれよ。

少なくとも依頼受けてる間はちゃんとやるぜ?」


 『完全に信用はできねぇが、筋は通ってるな。

さっき慌てて顔そらしたヤツラよりはマシだと思うぜ』


 『我も同感である!ひとまず案内を頼んでみたらどうだろうか!

露骨に彷徨うよりいいだろう!』


 ラディウス達も猛反対ではなさそうなので、モヤモヤしながら革袋から銅貨を取り出した。これで残りは銀貨4枚だけになる。


 「じゃあ、よろしくお願いします……」


 「おう。聞き分けよくて助かるぜ。

俺はサハル。改めてよろしくな、お嬢ちゃん」


 「私はシーラと言います。よろしくお願いします……」


 上手く話を進められたような気もするけど、悪い人ではなさそうだ。

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