第32話 ルナの成長
互いの自己紹介も終わり、この後の予定の打ち合わせに入る。といっても、打ち合わせるのは護衛隊長とウリアさんたち青薔薇がやってるし、女性陣――――というか、メフィさんとリンちゃんはなにか話し合ってるし、オルガさんはセバスチャンさんと話してる。ミューは偵察に出てるし、リーフは――――あれは光合成か?
「くぅ~~ん」
「ん、ルナ。どうした?」
ルナが近くに寄ってきて、なにか言おうと哭く。
「クルルルルルル……。」
「ふんふん、さっきレベルが上がって新しい技能を得たって?」
「わん。」
「おお、それはよかったな。」
頭をわしわしと撫でてやる。
「わふっ。」
「ん、使ってみたいって?戦闘用の技能じゃないのか?」
「ぐるるるるわん。」
「そうか、いつでも使える技能なんだな。」
「どうされましたか?」
メフィさんとリンちゃんがこっちに来た。
「ああ、ルナが新しい技能を覚えたらしいんだ、それで、戦闘用じゃないから、今から使ってみるんだって。」
「そうなんですか。それは見てみたいですね。」
「楽しみ。」
「じゃあ、ルナ。やってみてくれ。」
「わん。うーーーーーー、わふっ!」
ルナの体が一瞬膨らんだかと思ったら、すぐ縮小していき、煙を噴き出しながら姿が変わっていくシルエットが見えた。そして、その煙の中から女の子が現れて俺に飛びついてきた。
「ごしゅじんさま、人化の術できた!」
「「「なーーーーーーっ!」」」
10代半ばくらいの犬耳少女が尻尾をブンブン千切れんばかりに振りながら抱きつく。
「ちょ、ちょっと服着て服!」
「こっち来る。」
メフィさん付きのメイドさんが布を持ってきて少女に巻き付け、メフィさんとリンちゃんの二人がかりで少女を俺から引き剥がし、馬車に押し込む。
馬車の中からオレのじゃ丈が足りないだとか私のじゃ尻尾が邪魔ですねとかならば尻尾穴を開けましょうかとか色々言いながらどたばたしている。
あの娘、たぶんルナなんじゃないかなぁ……。髪や尻尾の色が同じだったし、俺に向かってごしゅじんさまって言ってたし。
で、あれは、真っ裸だったから連れていかれて服着せられてるんだよなぁ。
まあ、そんな大騒ぎをしていたらみんなこっちに来るわなぁ。
簡単にルナが人化の術を覚えて人に近い姿になって、今あそこで着せ替え人形にされてるって伝えたら、女性陣がそれならって馬車に向かって突入しだすし、ただ、馬車はそこまで大きくないから青薔薇の三人は外で覗きがいないか警戒してるし。
じっくり1時間ほどかけて、お色直しは終わったみたいだ。中から満足そうで艶々した顔のメイドさんが出てきた。
「と、言うことで――――ルナちゃんです。」
その白銀の髪に合う青い色のドレスを着た少女がいた。頭には犬耳、尻尾は垂れて、少し不機嫌そうに見える。
「ルナ、可愛いね、似合ってるよ。」
頭をわしわし撫でるといつも通りバサバサと尻尾を振ってくる。
「ごしゅじんさま、ルナ、似合ってます?」
「ああ、似合ってるよ。」
「これでごしゅじんさまと番になれるです。」
「ぶっ!」
お、おう。なついていると思ったらそっちかー。だが、リンちゃんにもプロポーズされてるんだが……。
「いや、だけど――――。」
「強い雄なら複数の雌が付くのは当然。」
そういえばこの娘、狼だった!狼ならそうくるのか。
「と、とりあえず落ち着い――――。」
「安心する。雄の交尾を受け入れるのが雌の役目。ごしゅじんさまがしたくなるまで一緒にいる。」
「安心じゃねーー!」
何故っていうような顔をするルナ。
「とりあえず、人間――――というか、ヒトの一般常識を身に付けてくれ。」
肩を落としながら指示を出す。
「オレが。」
「リンちゃんはルナと同じ思考回路っぽいからダメ。」
ある程度、節度はつくだろうけど、グイグイ押してくる未来しか見えない。
「では、私が淑女に仕立てあげましょうか?助けてもらったお礼を兼ねて。」
「今日会ったばかりの人にお願いするのは気が引けますので。」
「そうですか。」
んー、たぶんこれからルナも冒険者やることになるから……。
「オルガさん、お願いできますか?」
「そうですね。消去法的にそうなりますね。」
苦笑しながら承諾してくれた。町に行くまでに常識を教えるなら選択肢はないからな。
そうこうしながら、王都への旅を再開した。同行人が一気に増えたけど……。




