巡り15
「…」
沈黙は次の質問を考えているらしい。ムラサキは自分に関しての話が広がるよりも、残り少ない時間を問題解決に当てたかった。
“ヒサキも気になった”
そう。なぜ自分はあの男が気になるのか…
「ヒサキ?」
“ヒサキ”
「ヒサキがどうして気になったの?」
“ハルワがスウリの相手にってすすめてた。”
「それはもうハルワが勝手に言っていることだから気にしないで。」
“スウリは私の絆の相手でしょう?絆の相手とどっちが大事?”
私はスウリが他の仔竜に優しいのも、本当に自分の絆の相手なのか疑問に思ってしまいそうになる。
ましてや人間は人間同士で婚姻関係とやらも結ぶ。夫となるものと私の関係はどうあるべきなのか…ムラサキは許せる気がしない。他の竜や歴代の王竜はどうだったのだろう?
「お父さんに私も聞いたことがあるよ。お母さんとチッタどっちが大事?って。お父さんは比べられないって言ってたわ。それに、私達はまだ正式な絆の相手ではないのよ。人間が竜の額に手を当てて、誓いをお互いにたてるの。私達は言い伝えで絆の相手になるべきではないと思うの。ムラサキが、私の相手になりたいか決めたら良いのよ。私は私で決めたら良いの。」
“私が王竜ということはきまっている。絆の相手もそれと一緒”
スウリは少し困ったような顔をした。
“スウリは私が嫌い?”
「大好きよ。あなたの羽は黒く見えるのに光に当たるととても鮮やかな紫色だった。眩しかった。」
“羽が綺麗なだけ?”
「今はそれが一番。他はこれから。ムラサキ、私とあなたは初めてたくさん会話したでしょう?相手のことを知るには相手にたくさん関わってそれから知ってるって思うのが良いの。それでも、本人しか知らないこともたくさんあるんだけどね。ムラサキはまだ生まれて数日。まして、人間は私にしか会ったことがない。他の人と比べようもない。人同士を比べるのはあまり好ましくはないわ。でも、ムラサキ自身の大切なことを決めるこの件に関してはそれは必要だと思うわ。」
“…。私は人間はスウリと話すだけで良いと思う。”
今日、食卓とやらについたが、スウリの学校の話は気になるが、ヒサキやスウリの母の話はスウリに関係ない場合、なんとも思えなかった。
「王竜の件は竜の根底で他の竜も感じるみたいだから私には何も言えないわ。決められてることで、ムラサキ自身の中で永遠に葛藤しなければいけないことかもしれない。でも、絆は、確かに私には竜の皆の声が言い伝え通り聞こえるけれど、決めるのは私達で良いと思う。しっかり一緒に考えていこう。」
竜の声が聴こえる娘はスウリだけなのに、ムラサキ自身が気になるのもスウリだけなのに、この先、スウリが私の絆の相手ではないということもあるのだろうか?
ムラサキは来る前以上に謎が深まってしまった。
しかし、スウリは話したいことは話せた。と満足そうに眠りについていった。




