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神の娘の思う事 ②

 

「フィトちゃん」

「フィトさん」

「フィト」

「フィト様」



 この村では、私はちゃんと自分の名前で呼ばれる。

 ちょっと特別な力を持っていても個人として呼ばれる。




 ――そのことが、心地よい。




 私の『神子の騎士』としての力はまだまだ安定していないし、分からないことが多い。

 私が舞っている間に、それを見た人たちを強化できる。でもそれは制御の効かないもので、検証のために森で踊っていると、活発化した魔物に攫われそうになったこともある。



 ……ちょっと頭の良い魔物だと、私の舞の力で強化が出来るなら攫ってしまおうみたいに思ったりもするみたいだった。グリフォンが傍にいてくれたから問題はなかったけれど、幾らこの村の中では私がただ一人の特別でなかったとしても、外からしてみれば特別だったりもする。

 私はレルンダに比べれば力がないと言えるけれど、力はあるのだから。



 私はこの村で大人しく過ごすことを望んでいない。レルンダの力になれるようになりたい。でもそのためには……自分の身ぐらい自分で守れるようにならなければきっといけない。

 そう思ったから獣人たちにちょっとした護身術を習ったりもした。舞は昔からしているけれど、護身術と舞は身体の動かし方も違って難しかった。


 ちゃんと力を使いこなすこと。

 そして自分の身を守れるようになること。

 レルンダの手助けになること。




 私がやりたいことは沢山あって、それを叶えるために行動していても中々うまくいかない。






 特別ではなかった私が、特別になって。

 だけど、それは私だけじゃない。


 神の娘としてたった一人で民族を率いなければならない状況はもうない。私は『神子の騎士』という立場であろうとも、ただのフィトとして認識されている。確かに特別であるのに、それでも個人として認識される。


 それが許されるのは、此処がそういう風に色んな人を受け入れる土壌のある場所だからなのだと思う。

 そもそも本人たちが自覚しているかはともかくとして、この村には特別なモノが多すぎる。




 『神子』であるレルンダもそうだし、『神子の騎士』もそうだし。それにレルンダの契約している魔物たちも、とても強大な力を持っている。そしてこの村は色んな種族の人たちが暮らしている。



 私は世界をそんなに広く知っている訳ではない。神の娘として、ただ限られた世界を生きてきたから。そんな私でもこの村が普通ではないことは分かる。


 色んな人たちが暮らし、そして共存している。

 ここはそういう素敵な場所。私にとって守りたいと思っている。今の帰る場所。


 そしてこの場所は、私だけが背負わなくていいことが結構生きやすい。

 私が悩めば、レルンダたちが助けてくれようとする。私一人だけではなく、皆で背負っていくようなそんな場所なのだ。



 考えると私たち民族は色々限界を迎えていたのだと思う。一番最初の神の娘としての力を誰も持ち合わせていないのに――それでもその力にあやかって、何の力がなくても神の娘としての立場を継承し続けて、そこには確かに限界があった。

 一人だけが背負っている状況なんていうのは、結局いつか綻びが出てしまうもので……、それをどうにかすることなんて難しいのだ。

 だからこそ、こうして一人じゃなくて皆で背負える環境はとても村としての形がいいなと思う。



 一番特別であるレルンダにだけ背負わせるのではなくて、周りの人々がレルンダに負担にならないようにしている。そういう環境でいられるのはレルンダの性格も影響しているのかもしれない。

 レルンダの性格がまた違ったら、何か一つでも状況が掛け違えば、この状況はきっとなかったはずだから。



 そんなことを考えながら、私はぼーっとしている。

 こうやって気を張り続けることなく過ごせるのも、今、私がたった一人の特別ではないからだ。


 穏やかで優しい、当たり前の日々。

 だけど、レルンダという特別な存在を外の人々が知ったらどんな行動を起こすのかというのは分からない。







「フィトちゃん、何しているの?」



 レルンダのことを考えていたら、丁度レルンダがやってくる。



 木の傍に腰かけ、ぼーっとしていた私に近づくレルンダは不思議そうな顔をしている。




「少しぼーっとしていたの。風にあたるのも気持ちが良いから」

「うん。風にあたるの気持ちよいよね」




 私はそうやってにこやかに笑うレルンダを友達として支えていきたいと思っている。

 この笑顔を守っていけたら、そしてこの場所で穏やかに過ごして居られたら――きっと幸せだろうから。




 だからこそ私はこの『神子の騎士』としての力をうまく使いこなせるようにならなければいけないとそんな決意をするのだった。






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