01-8
「で? 毛玉の名前は?」
『毛玉って……確かに毛玉だけど…………今はラウル・ポラリスって名乗ってる。つか、そう名付けて貰った。』
「名付けて貰った?」
『こっちで目覚めた時、日本での記憶はあったんだけど、何でか名前だけ忘れててさ。んで、ある理由からラウルの名前を貰ったんだ。』
と、毛玉改めラウルがそう話すも、顔は見えないが何処か困ったように言っている感じがした。
だが、出会ったばかりな相手なため、エルミアは理由を聞かない事にした。
名前は短い呪の1つだと、昔ある人からエルミアは教わった。
何かを求めて名付けられたようなニュアンスに聞こえたが、ラウルが言う妖怪を見には行くが、現状で深く関わらない方がいいと思った。
「町って、大きいの?」
『そうだな、一応はかなりデカイ。』
「何でかなりと言いながら、一応なんてつけるのさ。」
『こう言ったらアイツ等に悪いけど、ボロいんだよな。後、町のデカさと住民の割合が合わない。』
「割合が合わないか……」
何処の世界でも、そういった町があるのかと、エルミアは思った。
それが、過疎によるものなのか、跡地に移住してきたのかは別にして、町と人口が合わないのは、なんとも寂しい話しだ。
つい、軍人だからか争い事の方を考えてしまう。
人間以外の移住で、町に住むなんて聞いた事がない。
相いれない事が常識なため、どうしても想像が出来ない。
まさか、人間がいない世界じゃないかと、一瞬思ってしまった。
「この世界、人間いませんとか言わないよね?」
『ちゃんといるぞ。ただ、ここら辺は魔物の集落が多いから、滅多に見ないな。』
「…………私、人間なんだけど大丈夫か?」
『今向かってる場所は、まだ好戦的ではない。』
「…………オトナシクシヨウ、ウン」
ラウルの言葉に、エルミアは心に誓った。
戦闘にならないように大人しくしようと。
行って直ぐに攻撃されたくはない。
ましてや、何もわからない世界で、1人で集落1つ分の魔物を相手にしたくはない。
負けない精神はあれど、それを強行した後の保険が無い。
そもそも、世界が違うために、エルミアが体を張る理由も無いのだ。
正直な話し、一番の理由はやらかした時にバレたら怖い人が数人いるからだが、そこはあまり考えない事にした。
既に怒られない道は存在しなく、少しでもフラグは減らしたい。