新世界連合軍参戦篇 第3章 軍事介入の決定
みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れ様です。
マリアナ諸島グアム島アンダーセン空軍基地に設置されている、ニューワールド連合軍総司令部庁舎にある連合軍合同会議室に、ニューワールド連合軍連合軍合同会議の構成員たちが顔を揃えている。
連合軍合同会議議長は、ニューワールド連合軍総司令官、ハワード・クロフォード元帥(昨日の最高評議会の決議で、第2次世界大戦に軍事介入が決定された事により、アメリカ海兵隊大将からアメリカ海軍元帥に昇進した)。
連合軍合同会議副議長は、ニューワールド連合軍副司令官、リアム・シネイド・デービス・グリフィス元帥(クロフォードと同じく、大戦介入前は、イギリス陸軍大将であったが、大戦への軍事介入が決定した翌日にイギリス陸軍元帥に昇進した)。
ニューワールド連合軍連合陸軍参謀総長、ヨーゼフ・フォン・レーゲラー大将(ドイツ陸軍大将)。
ニューワールド連合軍連合海軍作戦総長、ブルース・ロジャー・フィールド大将(イギリス海軍大将)。
ニューワールド連合軍連合空軍参謀総長、ホイト・ネーサン・ライアン大将(アメリカ空軍大将)。
ニューワールド連合軍連合海兵隊総司令官、アレクサンダー・ウォード・マッコーリー大将(アメリカ海兵隊大将)。
ニューワールド連合軍連合戦略軍総司令官、ジュール・ルイ・ポンピドゥー大将(フランス空軍大将)。
ニューワールド連合軍連合防空軍総司令官、デリック・ポール・キャンベル大将(カナダ空軍大将)。
ニューワールド連合軍多国籍特殊作戦軍総司令官、ベンジャミン・タイラー・ヤング・リー大将(イギリス陸軍大将)。
ニューワールド連合軍連合兵站軍総司令官、ダミアーノ・エリオ・セヴェリーニ(イタリア陸軍大将)。
ニューワールド連合軍連合戦略輸送軍総司令官、リー・クアン(シンガポール空軍大将)。
ニューワールド連合軍連合支援軍総司令官、謝博文上将(中国人民解放軍陸軍上将)。
ニューワールド連合軍NATO軍作戦連合軍司令官、カーチス・バンカー・ジョーンズ大将(アメリカ陸軍大将)。
ニューワールド連合軍連合予備軍総局長、カミーユ・プロスト(フランス海軍大将)。
14人の元帥と、陸海空軍大将の高級士官たちが、会議室に顔を揃えていると、かなり異様な光景だ。
今回、彼らが顔を揃えているのは、昨日、ニューワールド連合最高評議会で議決された第2次世界大戦に軍事介入について、軍部としての大戦略を決定、調整するのが目的だ。
軍の行動には、大きく分けて3つある。
大戦略、戦略、戦術。
大戦略は、軍の合同会議で決定され、戦略は各軍の戦略会議で決定される。
戦術は、各軍傘下の軍司令部が決定する、という風に分けられる。
これらは、軍事行動を決定するために、必要なものだ。
例え話で説明するなら、旅行がわかりやすいだろう。
まず大戦略は、どこを目的地とするかである。
次に戦略は、どの交通機関を使って、目的地まで行くかである。
戦術は、何を目的にするかである。
どの会議も重要であるが、特に重要なのは大戦略である。
目的地も決まっていないのに、使用する交通機関を、決めるような事はしない。
まずは、目的地を決めてからだ。
目的地を決めて、移動する交通機関を選ぶ場合でも、移動手段は複数ある。
例えば、自家用車等で行くか、鉄道や長距離バスを利用するか、航空機にするか、船舶にするかである。
そのうちの1つを選ぶのだ。
移動手段が決まれば、目的地で、何を目的として行動するかを考える。
例えば、観光名所を巡るのか、ご当地グルメの食べ歩きをするのか、ショッピングをするのかである。
もっとも、これは大雑把な説明となるが、大体こんな感じである。
「連合国は、和平交渉に応じる気配を見せない。このため、最高評議会は、この大戦に軍事介入する事を決定した。しかし、評議会で決定されたのは、大戦に介入する事だけである。今日の会議は、大戦に介入するために、どのように連合軍を派遣するか、それを決定するものだ。細かい部分に関しては、各連合軍の戦略会議で決定される。各員、思いのままに発言してくれたまえ」
連合軍合同会議議長であるハワード・クロフォード元帥が、出席者たちの顔を見回しながら、口を開いた。
「まず、これまでの統合省防衛局自衛隊及び朱蒙軍、大日本帝国陸海軍の軍事行動を見て行きましょう」
副議長のリアム・シネイド・デービス・グリフィス元帥が、口を開いた。
スタッフがパソコンに入力し、各テーブルに設置されている端末機に、世界地図が表示され、自衛隊、朱蒙軍、大日本帝国陸海軍の戦況が報告された。
「中央太平洋では、ハワイ諸島を占領下に置き、大日本帝国本土とハワイ諸島を繋ぐ海上輸送路及び航空輸送路を確保している状況だ。北太平洋は、連合国アメリカ及びソ連の支配下にある。南太平洋はソロモン諸島まで押さえ、海上輸送路及び航空輸送路を確保している段階だ」
グリフィスが説明し、スタッフがページを変える。
フィリピンの地図が出た。
「現在、フィリピンを拠点に、インド洋への侵攻を計画している段階だ。マレー半島及びボルネオ島、スマトラ島への侵攻である。これは史実と変わらないが、連合国は枢軸国とも接触し、南方での防衛態勢を、強化しようとしている」
グリフィスの説明が終わると、ページが変わり、連合国及び枢軸国の最新情報が、報告された。
「連合軍は、大日本帝国本土への反攻作戦を、準備中である。史実にある最初の東京空襲を越える反攻作戦と予想される」
グリフィスからある程度の情報が提供されてから、各総長及び総司令官たちが口を開いた。
「大日本帝国陸海軍首脳部は、連合軍からの反攻作戦が無いと、楽観視している」
フィールドが、口を開いた。
「ここまでの大勝利を経験しているのだ。楽観的感情に襲われるのは、仕方ない事だ」
レーゲラーが、告げる。
「だが、太平洋はハワイまで進出しているため、自衛隊、朱蒙軍、大日本帝国陸海軍の活動限界が見え始めている。連合軍の反攻作戦が、この時期に選ばれたのは、当然と言ってもよいだろう」
マッコーリーが、口を開く。
「最初の目的として、大日本帝国本土及び占領地域の防衛態勢を構築してから、南方作戦を実施してからでも、遅くはありません」
ゼヴェリーニが言った。
さすがに連合軍全軍の兵站作戦を一任されているため、守りを固めた攻勢を主張するのは当然である。
「これまでの戦闘データは、各連合軍が独自収集し、連合軍総司令部が、収集した情報を分析し、あらゆる事態に備えているが、我々の実戦データは無い。連合軍からの反攻作戦が行われるのなら、実戦データを収集するには、好都合だ」
プロストが言った。
連合陸海空軍の予備部隊を預かるプロストは、慎重な物言いで告げた。
連合予備軍であるが、予備役部隊を管理している訳では無い。
予備役兵を管理しているのは、ニューワールド連合軍最高委員会である。
連合予備軍は、実戦部隊に位置付けられている。
大日本帝国本土近空。
ニューワールド連合軍連合空軍イギリス空軍に所属するA400M[アトラス]に、同じくイギリス空軍に所属するEF-2000[タイフーン]が2機、護衛機として随行していた。
「まもなく大日本帝国防空識別圏」
機長から、機内放送がされる。
イギリス空軍が、C-130[ハーキュリーズ]の後継機種として開発、配備された新型の戦術輸送機である。
C-130の倍以上の37トンの貨物を積載する能力があり、イギリス陸軍の戦車を除く、歩兵戦闘車、装甲兵員輸送車、兵員輸送車両、戦闘ヘリコプター、多用途ヘリコプター等のほとんどの兵器を、空輸可能だ。
今回は、兵器や兵員の空輸では無く、破軍集団や菊水総隊自衛隊、大日本帝国陸海軍首脳部に派遣する連絡将校団を輸送するために、大日本帝国本土に向かっている。
「代将。破軍集団航空自衛隊の、F-22の出迎えです」
連絡将校団長であるニューワールド連合軍総司令部に所属する、アンガス・コーディ・フィールド代将(イギリス陸軍代将)が、窓に顔を向けた。
「アメリカ空軍のF-22[ラプター]の、スペックダウン型か」
2機編隊のF-22UJが、A400MとEF-2000の真横を通過する。
そのまま、旋回し、3機のイギリス空軍機の前に出る。
主翼を左右に振る。
「さすがに破軍集団は、手を抜かないな」
「それは、そうでしょう。破軍集団は、大日本帝国の政経都市防衛を任されている統合任務部隊ですから・・・」
副官の中尉が、言った。
「すでに、ニューワールド連合軍連合海軍は、艦隊総軍司令部の命令で、麾下の艦隊を出撃させた」
「連合陸軍と連合支援軍陸軍も公式に出動し、フィリピン・ルソン島、大日本帝国北海道等に部隊を出動させました」
連合戦略輸送軍の指揮下で、麾下の戦略輸送機が、その能力をフル活用し、部隊を空輸している。
「我々は、大日本帝国首脳部や菊水総隊自衛隊、破軍集団との作戦行動の調整をしなければならない。我々の仕事は忙しいぞ」
フィールドは、座席に深く腰掛けた。
「代将。着陸予定地のイルマ航空基地ですが、破軍集団司令部から、警備部隊を増強する報せが届きました」
「何か問題が、あるのですか?」
大尉の報告に、副官の中尉が聞いた。
「菊水総隊陽炎団警備部から、もたらされた情報では、帝国内の治安は、ある程度に安定していますが、経済体制の向上により、リストラされた者の不満が、高まっているとの事です」
「外国人が、うろうろするには危険がある・・・」
フィールドが、つぶやく。
「その通りです」
大日本帝国では経済拡張、生活水準の上昇等により、国民生活は大きく向上した。
しかし、それは、社会の競争が厳しくなった事になる。
倒産や合併する企業が続出し、職を失う者が多くなる。
特に、陽炎団刑事部捜査2課や、統合省法務局外局検察本部特捜部の活躍により、私腹を肥やしていた大企業や、財閥等の多くの幹部が摘発され、多くの大企業、中小企業が倒産、合併した。
このため、帝国政府に恨みを持つ者が、数多くいる。
大日本帝国は公安省を創設し、麾下に、思想犯や重大犯罪等の専門に捜査する特別高等警察局を置き、さらに専門機関を新設した。
陸軍憲兵隊を陸軍から分離させ、国家憲兵隊に改変。
内務省、公安省、陸軍省、海軍省の監督下に入り、司法警察活動も行っている。
しかし、完全に取り締まる等、不可能だ。
帝国内では、不満分子による破壊活動や暴動、凶悪犯罪が続出している。
破軍集団航空自衛隊入間航空基地の滑走路に、新世界連合軍総司令部から派遣された、連絡将校団を乗せたイギリス空軍の戦術輸送機A400Mが着陸した。
一足先に、大日本帝国に戻っていた破軍集団司令官付高級副官兼特別監察官の石垣達彦1等陸佐は、入間航空基地の駐機場にいた。
A400Mが滑走路から誘導路、そして、駐機場に到着すると連絡将校団が機内から現れた。
「お久しぶりです。代将」
「久しぶりだな。石垣1佐」
石垣とフィールドが、顔を合わせた。
2人は、それなりに面識がある。
「これまで暑いところにいたから、日本の寒さがこたえる」
フィールドが、冗談を言う。
「確かに、グアムやトラックと比べると、ここは、かなり寒いです」
フィールドは、石垣からの回答を聞きながら、ポケットから煙草を取り出した。
石垣もポケットから、煙草を取り出す。
2人は、煙草に火をつけた。
「連合陸軍参謀本部は、ソ連軍からの侵攻は、時間の問題だと判断した。緊急展開部隊と遊撃戦を得意とする遊撃部隊を、北海道に派兵させた」
「連合支援軍陸軍アフガニスタン陸軍の戦闘団ですね」
「そうだ。連合支援軍司令部も、なかなか皮肉な事を、考えるものだ。派兵されるアフガニスタン陸軍戦闘団は、ソ連軍によるアフガニスタン侵攻だけでは無く、アメリカ軍からの侵攻も経験した精鋭部隊だ」
「2つの大国からの攻撃を受け、どちらの攻撃にも耐えた部隊・・・さぞかし、ソ連軍と戦う事になれば、凄まじい働きを見せるでしょう」
石垣の言葉に、フィールドは吸い終わった煙草を、携帯灰皿に入れた。
「使うか?」
「ありがとうございます」
石垣も、フィールドの携帯灰皿に煙草を入れた。
「旅の疲れもあるでしょう。食堂に案内します」
「紅茶は、用意しているか?」
「もちろん用意しています。スコーン等の用意は出来ていませんが、紅茶だけなら、用意しています」
「それでいい。ティータイムには、まだ早い」
石垣に案内され、フィールドは食堂に向かうのであった。
基地内に関しては、基地警備隊の隊員を増員して、基地内警備態勢を強化している。
「ずいぶんと厳重に、警備しているな」
「あくまでも、テロ警戒と情報漏洩を防ぐためです」
基地内は航空自衛隊基地警備隊が担当し、基地外に関しては陽炎団警備部第6機動隊銃器対策部隊から1個小隊が派遣され、警備に従事している。
むろん、協定により、内務省警保局埼玉県国家地方警察本部警備隊から、1個中隊が派遣され、周辺警備に従事している。
食堂に到着すると、テーブルの上にティーカップとクッキーやビスケットが用意されていた。
フィールドは、石垣の向かいの席に腰掛けた。
「紅茶をどうぞ」
石垣がフィールドのティーカップに、熱い紅茶を注ぐ。
フィールドは、スプーンでジャムをすくい、紅茶に淹れる。
石垣も、自分の紅茶を注ぎ、砂糖を淹れる。
「簡単な物しか、用意できませんでしたが・・・」
「かまわん、かまわん。どうせ、首都東京に行けば、嫌という程の歓迎を受ける。このぐらいで、かまわん」
フィールドは、イギリス人らしく、紅茶の香りを楽しみながら飲む。
連絡将校団の他の将校たちも、紅茶やコーヒーを、それぞれ楽しむのであった。
新世界連合軍参戦篇 第3章をお読みいただきありがとうございます。
誤字脱字があったと思いますが、ご了承ください。