依頼
自身の仕える主が、私の力を確認したいという。そこで鑑定を依頼しに来たと、ドンは告げた。そして彼は、自身が抱えるように持っていた木箱を、私の方へ差し出す。綺麗なブラウンの木目の箱には、ゴールドの飾りもついている。カチッと金具を外し、蓋を開けると……。
中は四つに仕切られており、指輪、イヤリング、ペンダント、ブレスレットが沢山入っている。どれもゴールドやシルバー、さらにはルビー、サファイア、ダイヤモンド、エメラルドなどの宝石が使われていた。
「これは僕の主のリジェクターです。解呪師であれば、呪いをきちんと跳ね返す宝石が使われているか、鑑定ができますよね? それをお願いしたいのです」
「なるほど。分かりました。では中へ入ってください」
ドンはジュエリーボックスの蓋を閉じ、店内へと入って来た。私はソファへ彼を案内しながら、驚いていた。あれがすべて一人のリジェクターなんて。きっとドレスにあわせ、つけるリジェクターを毎回変えているのだろう。
そういう貴族を知らないわけではないが、それにしても数が多かった。さすが高貴な身分と言っているだけある。でもそこまでの貴族が、ドンに教えてもらった街のあたりにいたかしら? これだけの財力があれば、噂になっていそうなのに。
聞いた記憶はなかった。
でもとにかく、お茶をいれたところだったので、ソファへ案内し、紅茶を出した。一緒に手作りしたローズの砂糖漬けをローテーブルに出すと「これは、ローズ祭りの時のものでは?」とドンが尋ねる。「はい、その通りです。摘んだローズで、私が手作りしました」と答える。
「シャーリーさんの手作り! これをいただけるのは光栄ですね。それにローズの砂糖漬けなんて……。僕たち使用人のティータイムでも、滅多に出ませんよ」
ドンが朗らかに笑った。しかも早速、口へ運び「美味しいですね。ローズの香りと甘さがたまらない」と喜んでくれた。
一方の私は、ジュエリーボックスを開け、中身を確認し、預かり証を作成した。点数も多い上に、高価そうなので、なくさないように注意しなければいけない。間違いがないよう、真剣に羽根ペンを羊皮紙の上で走らせる。
私が作業している間、ドンは私に会えたことが嬉しかったという言葉から始まり、いろいろなことを私に尋ねた。お店は何時から何時まで営業しているのか、とか、客はどんな人が多いのか。混雑する時間帯はいつかなど。
沢山の質問を終えたドンは「これでシャーリーさんをいつデートに誘えばいいかが分かりました」と、朗らかに笑う。なんだか快活で明るく、自然と私も笑顔になる。
「こちらが預かり証です」
「ありがとうございます。今日はこの後、来客があるのですね。夕食でもと思ったのですが、残念です。鑑定はいつ頃、終わりそうですか?」
「そうですね。念のため明日一日、お時間をいただき、明後日には返却できます」
「分かりました。では明後日以降、主とも相談し、取りに伺います」
ドンは笑顔で預かり証を上着の胸ポケットにしまうと、ソファから立ち上がった。
翌日。
ドンから預かったリジェクターの鑑定を、朝から始めることになった。私は店内の文机に向かい、リジェクターを取り出しては鑑定し、その結果を羊皮紙に書き留めていた。一方の父親は今日、外出の予定はなかった。ソファに座り、帳簿管理をしていたが……。
どこぞやかの屋敷の下男が尋ねてきた。聞くとその下男の主は、貴族ではないが、金融業で財を成している。爵位を手に入れようと動いていたところ、生意気な奴と見なされたようで、呪いをかけられてしまったという。
いわゆる成金と言われるこの下男の主は、平民として生きた時間が長く、呪いのことなどあまり考えていなかった。つまりリジェクターをつけていなかったため、あっさり呪いをかけられてしまったようなのだ。ただ、呪いをかけた相手の見当はついているので、「呪詛返し」をお願いしたいということだった。
「ではシャーリー、行ってくるよ」
「はい、お父さん。気を付けて、いってらっしゃい」
父親を見送り、リジェクターの鑑定作業を再開した。
カチ、カチ、カチと時計の針の音が聞こえるぐらい、店内も外も静かだった。時折、鳥の鳴き声が聞こえるぐらいだ。
リジェクターは、呪いを対策としてお墨付きにできるものもあれば、ただの宝飾品に過ぎないものもあった。つまりリジェクターではないものも含まれている。こんなものをリジェクターとして信じ、つけていたならば、呪いを簡単にかけられてしまう。
「宝石としては高価なものそうだし、デザインも素敵だけど……」
思わずそう独り言を口にした時。
ドアが激しくノックされる。
いきなりだったので、かなり驚き、椅子から立ち上がることになった。
どうしたのかしら?
慌ててドアに向かうと……。























































