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第六話 ~白猫~

第六話、これで今回の話は終わりです。


さて、鏡は魚と白猫をどうするのか。そして夕食は?


では、どうぞ。

「いや、スマン。ちょっとした出来心だったんだ」


「まあ、いい。や、良くはないけどさ」


「お詫びに、魚全部タダでやるからさ」


そう言って銀司は四匹の魚が入った袋を差し出した。


「いいのか。タダっていうなら本当に貰うぞ?」


「ああ。ただ店長には内緒な」


「・・・はあ、じゃ、ありがたく貰っとく」


「おう」


「しかし、お前までテレビを見ていたとはね・・・」


何ていうことはない。事の真相はつまりはそういうことだった。

魚が売り切れというのは、銀司の嘘。残りは確かに少なかったが、残りの四匹の魚は銀司が隠し持っていたのだ。というのも、銀司も真雪が見ていた魚の特集の番組を見て、魚料理が食べたくなった、ということらしい。それで店長の目を盗み、こっそりと魚を隠したというわけだ。猫に盗まれたが。


「マジでうまそうだったんだって、アレ。鏡も見てみれば分かる」


「ほう。そうか」


と言ったところで、ニュース番組の特集コーナーに過ぎず、もう見ることは叶わないだろう。別に見たいとは思わないからいいのだが。


「そんなに魚が食べたいんだったら、今夜家に来いよ。夕飯くらいご馳走するぞ。無論魚料理をな」


「マジで。いいのか!?」


「あ、ああ。ってか近い近い」


銀司が俺の手を握り、異様に体を近づけて迫ってきた。顔など、鼻と鼻がくっつきそうなほどだ。金色の瞳が爛々と輝いていて、若干怖い。まるで得物を前にした狼のようだ。


「あー、でも貸し借りが。またお前に借りを作っちまう」


うーん、と本気で悩んでいる様子の銀司を、俺はあきれた目で見ていた。


「あのな、別にこんなことで、貸しも借りもないだろう」


「しかしな」


「だいたい、俺は魚さえあればそれで良かったんだよ。隠してたってのはいただけないが、タダでくれるっていうなら、まさに渡りに船。それにお前に夕食をご馳走したって、もともとお前がくれたものなんだから、それで貸し借りはなしだろ。オーケー?」


「お、オーケー。分かった、ご馳走になる」


色々と理屈を並べては見たが、本当の所、別にどうでもいいのだ。いちいちこんなことで貸し借りもあったものではない。いつも世話になっているし、気持ちみたいなものだ。あ、これ言えばそれで済んだのか?


「そういや、その猫ってお前の猫じゃないだろうな」


「え?」


銀司が俺の足元に視線を落として言った。俺も足元を覗くと、魚を盗み出した白猫がそこにいた。


「お前、まだいたのか。つーか、本気で言ってるかソレ?」


銀司が本気ではないことは口調から分かったが、気分は良くないので半分本気で睨みながら言った。

確かに、手を広げたら普通に飛び込んでくるし、まだ俺の傍にいるしで、そう思っても仕方ないかもしれない。だが、実際この猫を見たのはこれが初めてだった。


「いや、冗談だ。ちょっと懐いているように見えたから、言ってみただけだ」


「ああ。それは俺も気になっているんだけど・・・」


この猫、一向に俺から離れようとしない。俺と銀司の会話の間も、じっと俺の傍に座っていた。魚が欲しいのかと思えば、興味はないようで、袋には見向きもしないで俺のことを見上げていた。

なら何故、魚など盗み出したのか。単純に気まぐれなのか、それとも俺に魚を届けるため?いやいや、それはないだろう。


「おい、鏡。多分そいつ、普通の猫じゃないぜ」


「というと?」


「化け猫ってところか。普通の猫なら、俺が追いつけないはずがない」


その通りなのだ。銀司は人狼。その身体能力に定評がある妖怪だ。その銀司が追いつけないというなら、それが普通の猫のはずがない。妖怪の類であることは明らかだ。


「どうするんだ、その猫?」


「ん?協会に報告するかってことか?」


少なくとも俺は、この里に来てから一カ月、この猫を見掛けたことはない。ならば、外から来た可能性がある。一応、協会に報告した方がいいのかとも思ったのだが。


「いや、そんな面倒くさいことするはずないだろう。飼うのかってことだ。なんか懐いてるみたいだし」


「誰が?」


「お前が」


「何故に?」


「だから、懐いているから」


「そうか?」


「そうだろ」


「そうか?」


「そうだろ」


「そうか?」


「そうだろ」


「そうか?」


「そうだろ」


「何やってるんだ?」


「一度やってみたかったんだ」


「・・・で、飼うのか?」


「どうしようか?」


「俺に聞くなよ」


ごもっとも。しかし、この猫が化け猫だとしたら、本当に飼っても大丈夫なのだろうか。普通の猫なら飼っても構わないのだが、そこが問題だ。大丈夫だというなら、飼ってもいいと思う。真雪が猫アレルギーということもないだろうし。


「・・・とりあえず、この魚を家に置いてくる。もしそれまで付いて来ていたら、神社に行って、飼っても大丈夫かどうか聞いてみるよ」


「そうだな。それがいい。あと、神社行くなら九凰の姉さんによろしく言っといてくれ」


「何が、よろしくかは分からないが、了解した。と言っておこう」


「ああ、頼むぜ」


この二人ってどういう関係なのだろうか。銀司に聞いても、あることないこと話しそうだから九凰さんに聞いた方がいいか。


「んじゃ、また今夜」


「おう、楽しみにしてるぜ!」


銀司と別れてから、帰宅すると、真雪はまだ帰ってきていなかった。

白猫は結局ずっと家まで付いてきたので、予定通り九凰神社に向かうことにした。


長い階段を登り終え、辺りを見渡すが目的の人物は見当たらなかった。中の方に入っていくと、何やら物音が聞こえたので、音のする方に歩いて行った。

そこにいたのは、九凰さんではなかった。その人物は、巫女福を身につけ箒を手にして、境内を掃いていた。


「円香(まどか)」


「あら、鏡じゃない。珍しい。なんか用?」


そう言うのは、九凰円香。九凰茜さんの妹である。

九凰さんと同じような長い黒髪を束ねてポニーテールにしている。その顔だちは綺麗だが、同時に可愛らしい印象も受ける。年齢も俺と同じか少し上くらいらしい。

結構フランクな性格をしており、九凰さんよりも話しやすく、また名前で呼ぶように言われているため、そうしている。


「まあ、ちょってね。九凰さんいる?」


「姉さんなら、ちょっと出掛けているけど・・・なに、姉さんにようなの?」


そう言うと、途端に不機嫌そうな表情になる。さっきまでどこか楽しそうな顔してたのに。なんなんだいったい。


「いや、そういうわけでもないんだけど」


「ふーん・・・じゃあ、なんの・・・なに、その猫?」


円香は、俺の後ろに隠れるように座っている白猫を見て言った。


「ああ、実は」


白猫のこと等、事情を諸々説明した。すると帰ってきた答えは、あっさりしたものだった。


「いいんじゃない、飼っても」


「そんな、あっさり!?」


「だって、そんなに強い力は感じないし。邪な気もない。だいたい、決まりなんでないのだから、飼いたければ飼えばいいのよ」


「そんなもの?」


「そんなものよ」


ふむ、ならばこの猫を飼ってみることにしますか。これで家族が増えるわけだ。猫だから、いついなくなるか分からないが。


「そういえば、姉さんに何か用だったの?」


「用っていうか・・・九凰さんと銀司ってどういう関係?」


「は?」


「いや、ここに来るなら九凰さんによろしく言っといてくれ、と銀司にと言われたもので」


「ああ、そういうこと」


円香はどこか安堵したように、胸を撫で下ろした。

何か心配ごとでもあったのか?


「関係、ね。特になかったと思うけど。強いて言うなら、アレが姉さんにしつこく言い寄ってるってことくらいかな」


「ああ、何だ。やっぱりそういうことか」


「フフ・・・」


「ククク・・・」


「「アハハハハハハ」」


二人して一頻り笑い、雑談を交わした後、礼を言って白猫といっしょに帰宅した。


今日から、俺に新しい家族が増えた。

あ、なんか名前考えないとな。

やっちゃいました。

今回、少しパロネタが入っています。古いですね。分かる人は分かるでしょうけど・・・。どうしてそんなことをしたのかというと、理由は鏡が言ったとおりです。もしかしたら、こんなネタが今後もあるかも。


それはさておき、あと3話くらいはほのぼのが続きます。戦闘パートはその後かな。それくらいに用語集も作りますので。


ではまた次回。

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