第二十九話 ~決意~
一言でいうとお約束。熱血?です。
では、どうぞ。
「馬鹿じゃないの!!お兄ちゃん、それで桜花を行かせたの!?」
「・・・仕方ないだろう。他にどうしろって」
返ってきた零と真雪に桜花が連れて行かれた事を話すと、零は烈火の如く怒り出した。
俺には、返す言葉が無い。
「何言ってるの!?お兄ちゃんが護らなくて、誰が桜花を護るのよ!?」
その言葉が胸を抉る。どう取り繕っても、理屈を重ねても、護れなかったことに違いは無い。俺はただ、歯を食い縛り、拳を握り締めることしか出来ない。
「落ち着いて、零。鏡の選択は正しいわ」
「でも、真雪さん!!」
真雪は猛る零を鎮めようと言葉を紡ぐ。真雪の顔はここからでは見えないが、多分無表情なんだろうな。心は、零と同じ気持ちのはずだから。
「ねえ、ご主人」
これまで黙していた哭月が、まるで試すような視線を向けてくる。
「まさか、このまま引き下がるつもりではないんでしょう?」
「それは・・・」
「このまま桜花を奪われて、ご主人はそれでいいの?桜花が大切だったんじゃないの?好きだったんじゃないの?救ってあげるんじゃないの?それとも、ご主人の想いはその程度なの?・・・見損なったわ」
「違う!!俺は、桜花のことが好きだ!!何よりも、誰よりも愛してる!!」
想いが止まらない。挑発されていることは頭では分かっている。だが、それでも、分かっていても、ここまで言われて、黙っていることは出来ない。理解していようと、心は我慢できなかった。
「なら、どうするの?桜花を取り戻す?」
「当たり前だ!!俺は、桜花を・・・」
「だから、どうやって?私たちを犠牲にして?」
「っそ、れは」
「その程度の覚悟なの?ご主人は、私たちと桜花、どちらを取るの?・・・ねえ、どっち?」
哭月の瞳に感情は無く、ただ冷淡に選択を迫ってくる。
桜花か、それとも哭月たちか。
俺は、究極の選択を前に、俯き目を瞑る。
選べる筈が無い。桜花は大切な存在だ、切り捨てられるわけが無い。そんな選択肢が存在して言い訳が無い。けれど、桜花を選べば、哭月たちが犠牲になる。なら、俺はどうすればいい。桜花を選び、哭月たちを犠牲にすればいいのか?
出来ない。俺には、そんなこと。
桜花が他の何よりも大切だというのなら、他の何を犠牲にしてもいい。その筈なのに、俺は、切り捨てることが出来ない。
餓鬼なんだろう。欲しいものがあって、二つのうちどちらかを選択しなければいけないのに、選ぶことが出来ない。まるで、我儘な餓鬼だ。二つとも欲しくて、駄々をこねる滑稽な餓鬼。
しかし、それはいけないことなのか?二つとも選んで、何が悪い。どちらか一つで無ければならないなんて、誰が決めた?
だいたい、こんな不条理が許されてたまるか。
ああ、確かに世の中にはこれ以上の不条理なんて巨万とあるんだろう。だが、俺はこんな不条理は許さない。ただ言われるがままに従うなど、出来ない。
それが餓鬼だというなら、俺は餓鬼でいい。
俺は、両親に拒絶され、人間社会からも追い出されて、家族を失ってこの春園の里に来た。ここで、桜花や真雪、哭月に出会って、家族ができた。護りたい人たちが出来た。俺が一度失って本当に欲しかったものを手に入れた。
なのに、それを訳の分からん理由で一番傍にいて欲しい人が、家族の一員が奪われる?それでどちらかを選べだ?
巫山戯るな。俺が欲しかったものは、護りたいものはそのどちらもだというのに。
「ねえ、ご主人。ご主人の本音を聞かせて。ご主人は、本当はどうしたいの?」
俺の本音?本心・・・そんなもの、決まっている。
一度火がついた、熱くなった心は、答えは一つだと俺に告げている。
「俺は、桜花を取り戻す!哭月たちも犠牲になんかさせない!絶対、どっちも護る!!」
「・・・流石、私のご主人。それでいいのよ、ご主人は」
「・・・哭月」
哭月が、柔らかな笑みを浮かべる。何か一言余計だったような気もしたが、この時は、聖母のようにすら見えた。
・・・情けないな。一人じゃ、決心もつかなかったなんて。本当に、哭月には、いや皆には感謝してもし足りない。
けど、もう迷わない。どっちも助けると、決めたんだ。なら、やりきるだけだ。
まずは・・・
「でもどうするの?そんな理想論を振りかざしたところで、現実にどうにも出来なくちゃしょうが無いじゃない。手はあるの?フィクションのヒーローじゃあるまいし」
何で熱くなっている所に、そんな冷めたツッコミをくれますかね真雪さん。確かに貴女は冷やすのはお得意でしょうけど。だがまあ、実際問題それは事実なわけで。
ど、どうしよう。
「だ~いじょうぶ。こんなこともあろうかと!手は考えてあるわ!!」
妙に活き活きした様子で、ウキウキと擬音がつきそうな勢いの哭月。
もしかして、言いたかっただけか?あの台詞を。
「こ~んなこともあろうかと!!いっちど言ってみたかったのよね~」
さいですか。いつ考えたんだ、こんなこととやらは。って、ああ、そういや真雪と零の帰りを待っている間、ずっと黙りこくってたけどもしかしてあの時か。
だが、それは本当にありがたい。渡りに船とはこのことか。本当に、哭月には今後頭が上がらないな。
「よし、じゃあ、作戦会議と行きますか。絶対、桜花を取り戻すわよ。準備はいいわね鏡」
「ああ、すまないが。皆力を貸してくれ。必ず、皆でここに戻ってこよう!」
「もちろんよ、ご主人」
「任せなさい、鏡」
絶対、絶対取り戻す。待ってろ桜花、すぐに迎えに行くからな。
「・・・・・・・・・何なのこの熱血展開・・・・・・・・・・・・ってか、私だけ乗り遅れた・・・」
*本編とはあんまり関係の無いIFですので、気にせず読み飛ばして結構です。というより九割くらいネタで構成されています。一部不適切な発言がありますが、ご了承ください。ついでにキャラも崩壊しています。
あ、ちなみに会話だけで構成されていますので、あしからず。
おまけ
「そういえば、哭月。さっき、秘密道具でも出すかと思ったのに。何よアレ。こんなこともーって。アンタは青狸か、ってツッコミ用意してたのに」
「どこの電波を受信したのよ!それに私は猫よ!ついでに白!あとあのロボも最初は黄色かったのよ!」
「関係なくないか?」
「そこはほっといて、ご主人」
「・・・はい」
「何で知ってるのよそんな豆知識・・・でもないか」
「アニメとか見てたのか?」
「暇だったから」
「あぁ、そう」
「っていうか、私が言いたいのは、こんなこともあろうかと!っていうのはロマンよ!漢の美学よ!それを否定する権利は誰にも無いわ!!」
「いや、お前は男じゃないだろ」
「Shut up!」
「イ、イエッサー」
「とにかく!こんなこともあろうかとは正義なの!魂なの!私は技術屋って言うか、整備士とかじゃなく魔女だけど、心は同じよ!!」
「ちなみに、何の影響を受けたんだ?」
「え~と・・・確かこの辺に・・・・・・・・・・・・あ、あったよお兄ちゃん多分これじゃないかな。とレイはおまけを含めて出番がこれで五回目です、と不遇な扱いをささやかに主張します」
「・・・どこの妹ネタよ。色々危ないならやめなさい。似てないし。あと私も出番少ないわよ」
「あ~、ッオホン。えーと、なになに・・・機動戦艦ナっぐえ」
「それ以上はまずいわ、鏡・・・・・・何故かしら、最近ツッコミばかりしてるような」
「だからって首絞めるなよ。ったく、けど、俺もこれ好きだったな。結構昔のだけど」
「そうでしょ!劇場版は少し雰囲気違ったけど、アレがまたいい!!」
「そうだな~。でもアレ、テレビ版のヒロインがな。妖精の方が良かったような気がするんだよな。年齢とか問題多いけど。純愛っぽいし。あ、これ俺の主観ですよ。他意はありませんよ。単に妖精好きなだけですから。あの子だって劇場版の髪型はちょっとな~とかは思うし。!正ヒロインに否定的なわけじゃないですよ!テレビ版の方の艦長も色々頑張ってたし!」
「誰に言ってるの、お兄ちゃん?」
「い、いや、言っておかないと駄目な気がして・・・」
「そうね、それには私も同感。劇場版見るとどうしてもね。そっちに情が移っちゃうわよね。っていうか主役だしね」
「話し蒸し返すなよ!もういいよ!!」
「いいえ、よくないわ!忘れてならないのが、次回予告!あの声あの言い回し、いいわよね。特にあの、刻の涙をっ」
「だ、駄目だよ!それ以上は駄目だったら!!」
「ああ、あの声優の。確かにああいうのは楽しいよな。って、そうかあの人の台詞か」
「そうよ!分かってくれたご主人。でもそれだけじゃないの。まだまだ猛者はたくさんいる」
「まあ、哭月が最初に見たのがソレってだけだろうしな・・・」
「ええ、でも同作品内の説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「はあ、何で盛り上がってるんだか。桜花はどうしたのよ全く」
「・・・・・・・・・・・・・」
「何か、あっちはまだ盛り上がってるみたいだけど。いい加減終わらせたいのよね。ちょうど、このグダグダをしめる、あいつらに相応しい台詞があることだし」
「!・・・っ・・・・・・!!」
「いい、行くわよ?」
「っ・・・・・・ぁ!!・・・!!!」
「バカばっか」
「「「言うなっ!!!」」」
おわり。
あんまり話は進んでないですね。連れ去られて、取り戻す決心をするまでの流れ・・・なんですが、強引ですねえ~。ええ、分かってます。すみません。すべては作者の実力不足です。え~、おまけはスルーしてください。何か、唐突に書きたくなりまして。
とまあ、すんでしまったことは置いといて、今後ですが、次が一応最終話?的な話になる予定です。とはいえ、前中後の三部構成になるのでまだ続きますけど。ただまあ、あと一話ほど増える可能性はありますけど。あ、最後にエピローグはあります。
ってな感じでいきますので、最後までお付き合いください。
では、また次回。