第二十一話 ~相棒(前編)~
今回は戦闘の前段階、任務内容の説明です。
では、どうぞ。
「へ~、こんな所があるなんて知らなかったね、お兄ちゃん」
「そうだな。子供の頃もこっちまで来なかったからな」
今いるのは、里の外の鬱蒼と生い茂る森の中。俺と零が人間だったときに住んでいた街の郊外の森である。何故こんなところにいるのかというと、協会からの依頼だったりするわけで。
今回の任務は、この森に妖怪たちが集まっており、一般人に被害が出たということで、妖怪たちに対処すべく近くにいる俺たちが刈り出されたのだ。巻き込まれた一般人は怪我を負っただけで命に別状はなく、記憶処理を行ったらしい。
何故妖怪たちが集まっているのかというと、この森の奥に忘れ去られた神社があり、そこにとある大妖怪と『何か』が封印されているらしく、それを狙って集まってきているのではないか、というのが協会の見解だ。
封印されている妖怪の魂は既に消滅しているそうだが、その強大な力と念だけがこの世に残留し、それを吸収するべく妖怪たちは狙っている。共に封印されているという『何か』とは、妖怪を封印するときに使ったものというのは分かっているが、それが何であるのかは伝わっていないそうだ。
つまり、俺たちの役目は集まってきた妖怪の殲滅と、大妖怪の力の再封印か完全消滅、『何か』の確保である。
「どうでもいいのだけれど、何で貴方達は腕を組んでいるわけ?」
俺と腕を組んでいる零を見て、後ろを歩いていた真雪が言う。
「諦めなさい、真雪。気にするだけ無駄よ」
俺の肩に乗っている哭月が言う。
「そうそう。嫉妬は見苦しいよ」
何が嬉しいのか上機嫌に言う零。頼むから火に油を注ぐようなことを言うのはやめてほしい。
「む・・・・・・」
「なっ・・・」
真雪が無言で俺の空いている腕を組んだ。
「ちょっと、お兄ちゃんから離れてよ、真雪さん」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ」
この状態は、世間一般で言う両手に花というやつなのだろう。が、実際は俺の両隣で睨み合いをしている。それもかなり険悪なムードで。
というかお前ら、一応ここ敵地だって分かってるか?
「あらあら、モテモテねご主人」
「・・・はあ」
からかうようにいう哭月に、思わず溜息が漏れる。
別に好き好んでこの状態になっているわけではないし、なにより昨日の今日でこの任務に就いているのだ。溜息の一つくらい吐きたくもなる。
そう、この任務を依頼されたのは、昨日なのである。霊樹の森から帰ってくると九凰さんがおり、ちょうど家にいた真雪と零と共に今回の以来の話をされた。
おかげで、桜花のことを話す暇もなかった。そちらも早くしなければならないというのに、こんなことをしている暇はない。早くこの任務を終わらせてしまおう。
ちなみに、この任務に俺たちが選ばれたのは一対多の戦闘に適しているからだ。真雪の氷、零の雷、俺は以前の実績があるし、小回りが利くので森の中での戦闘には適任だ。哭月はおもしろそうだからという理由でついてきただけである。
「「なに溜息ついているのよ」」
「いや・・・ははははは、はあ」
何でこんな時だけ仲いいのだろうねこいつらは。まあ、確かに失礼だとは思うけどさ。
「それくらいにしたら?ここ、既に敵地だって分かっているの?」
「「う・・・はい」」
哭月の指摘に同時に頷く二人。
ナイス哭月。という視線を哭月に向けると、貸し一つね、という視線が返ってきた。それに首肯で答え、森の奥へと入っていった。
このとき、二人はまだ俺と腕を組んでいたりする。
さて、情報によると、封印が解かれるまでそう時間はないとのことだ。なのでここは二手の分かれる。妖怪たちが屯っている場所と神社は若干距離がある。神社にはある種の結界が張ってるらしく、弱小妖怪では、中に入るのを嫌がるのだ。無論俺たちは問題ない。
妖怪たちは神社から離れているとはいえ、そう遠い場所にいるわけではない。せいぜい、数十メートルしか離れていないのだ。誰かが妖怪たちの気を引いているうちに、神社を攻略したほうがいい。封印にしろ消滅にしろ、簡単にはいかず多少時間がかかる。
そこで、妖怪たちの掃討を真雪と零に任せ、俺と哭月は神社に向かう。
第一の目的は、大妖怪の力の封印か消滅である。その為、一番速い俺が担当することになった。恐らく、神社には封印の解除を試みているリーダー格の妖怪がいるだろうし、素早く討たなければならない。
「じゃあ、気をつけてね、お兄ちゃん、哭月」
「鏡を頼むわよ、哭月」
「任せて、二人も気をつけて」
「・・・どういう意味・・・まあいい。くれぐれも怪我はするなよ。油断せずにとっとと片付けて、早く里に帰ろう。じゃ、行くぞ」
「「「了解」」」
さあ、任務開始だ。
多分、三部構成になります。次回は、真雪と零の戦闘です。かなーり、一方的になる予感。普段とは違う二人が見られるかも!?ということであとがきは短めにします。
では、また次回。