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第十九話 ~膝枕~

まず、最初にいっておきます。今回のサブタイトルは今まで以上に意味はありません。


また今回も短めです。


では、どうぞ。

「ホント・・・驚いたわね」


「ああ・・・そうだな」


「何が?」


いや、貴女のことですよ桜花さん。

今の桜花の姿は、年齢はだいたい16歳前後くらい。髪は腰辺りまで伸び、顔はまだ少女のようなあどけなさを残すなか、どこか凛々しさを感じさせる表情をしている。その体型も少女から女性の体型へと変わっている。本人には言えないが、真雪よりも年上に見えるくらいに。

それはまさに絶世の美少女。多分、驚いていなければ見惚れて動けなくなっていただろう。


「むー、だってこれが私の本当の姿だよ?・・・・・・多分」


多分!?


「・・・まあ、なんとなく想像は出来るけどね」


「本当か、哭月?」


「ええ。なんとなく、だけど」


哭月によると、確かに今の桜花の姿が本来の桜花の姿らしい。もっとも、今よりも成長する可能性はあるそうでその辺はよくわからない。

今の桜花は、かつて存在した大妖狐が転生した姿。その際、別に桜花は赤ん坊になったわけではなく、最初から10歳前後の姿だった。

これは妖狐だけではなく、強大な力を持つ妖怪、あるいは魔術師の転生であれば同様のことが起きる。この場合、知識は引き継がれ、身体の成長は普通よりも当然早くなる。この転生は生まれ変わるというよりも、身体の再構成といったほうがしっくりくるかもしれない。ただ知識や記憶はともかく、人格は完全にリセットされるのでそういう意味では生まれ変わりということになる。

つまり子供の姿は仮の姿で、ある程度人格が形成されるまでの間を子供の姿で過ごし、人格が出来てきたら自分が想定していた姿まで一気に成長する。それこそ、それは数日の出来事らしい。

恐らくは、今回の桜花もそれだろうということだ。


「おお、なるほど」


何故か、当の本人が一番納得していた。


「てことは、桜花はある程度人格が形成された、てことか?」


「多分ね、はっきりとは断言できかねるわ」


まあ、その辺は後で本人に確かめてみれば分かるだろう。いつ会えるかは分からないが。


「それより、鏡、その手提げの中身は・・・」


瞳をキラキラと輝かせながらにじり寄る桜花に、俺は自分の身体のことよりそっちか、と苦笑しながら中身を取り出す。


「ほら、稲荷ずしだ」


「わーい、食べてもいい?」


「ああ、そのために作ってきたからな」


「ちょっと待って。私も一つ貰ってもいいかしら」


「んー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいよ」


今の間はいったいなんだったのだろうか。

ともかく、桜花の許可を貰った哭月は、人間の姿へと変身した。最近はこの姿で食事をすることが多い。基本的に元は人間だったのでこちらのほうが食べやすいらしいし、俺たちと同じ食事がしたいとか。


「哭月、変身できたんだ」


桜花は思ったよりも驚いていない。これが成長の証、知識が桜花に馴染んできたということか。


「そうよ、元魔女だからね」


「おお、凄い」


そんな会話を二言三言交わした後、哭月は、いただきますと言ってから稲荷ずしを一口頬張った。


「・・・おいしい」


「そりゃよかった」


「これは、たとえ狐じゃなくても食べたくなるわね。桜花の気持ちも分かるわ」


そう言って桜花を見ると、両手に稲荷ずしを持ち、口一杯に頬張っていた。稲荷ずしの入っていた箱を見てみると、既に半分以上が空になっていた。


「はむ?」


桜花は、何?という視線を向けてくる。


「・・・いえ、なんでもないわ。後は全部食べて」


それを聞くと桜花はまた、がつがつと驚異的な速度で稲荷ずしを減らしていく。


「・・・ねえご主人、今度稲荷ずしを作るときは私の分も用意しておいてね、家で食べるから」


「わかった」


やはり、大きくなっても桜花は桜花だった。





それから暫くして、稲荷ずしを全て平らげて満腹になったのか、桜花は俺の膝を枕にして寝てしまった。


「可愛いわね」


「そうだな」


そう言って、優しく頭を撫でる。嫌がるかとも思ったが、心地よさそうに寝息をたてていたので、そのまま撫で続けた。


「そうしてると、まるで恋人みたいね。前は兄妹って感じだったけど」


「こ、っ恋人!?、な、なに言ってるんだ」


「別にからかってるわけじゃないわよ。本当にそう思ったの」


「だとしてもだな・・・」


桜花は今まで妹みたいなものだと思っていた。実際、そういう風に接してきたつもりだ。確かに、急に成長して驚いたし、今までと同じように接してもいいものかとも思ったが、大きくなったからといって急に恋人などと。


「あら、結構まんざらでもないみたいね」


やっぱりからかっているじゃないかと思いつつ、桜花のことについて考える。

正直、俺は桜花のことは好きだ。ただ、それは恋人という対象に向ける好意ではなく、家族などに向ける好意と同じ、はずだ。だが、どこかそれとも少し違う気がする。確かなのは、俺は桜花のことが気になっている、ということだけだ。多分だが、前と今で俺の桜花に対する気持ちは変わっていない。

俺は、桜花のことをどう思っているのだろうか。桜花は、俺のことをどう思っているのだろうか。


「恋人か、それもいいの」


「桜花?」


その声は、俺の膝元から聞こえた。

桜花が、俺の膝に頭を預けながら、視線を俺に向けていた。俺はその瞳を見て、嬉しさがこみ上げてくるのを感じていた。


「久しぶりだな、桜花」


「そうじゃな、キョウ」


それは、以前と変わらずに俺をキョウと呼ぶ、もう一人の桜花だった。

なんか、続いてしまいました。まだ森から出てないですね。

ですが今回の話は次回で終わりです。終わりったら終わりです。で、その後、つまり二十一話は戦闘パートになります。といっても、ほとんど鏡は戦いません。他のヒロイン?二人の戦闘になります。多分鏡はちょっと別行動になるかと思います。恐らく前編後編に分けると思います。下手したら三部になるかも。

話は変わりますが、桜花の口調なのですが、成長するにあたって少し大人びたものに変えました。というか、少女の口調ですかね。鏡の呼び方も、キョウから鏡へと変えました。ただ、もう一人の桜花は口調に変化はなく、呼び方もキョウのままにしました。一応、間違いとかではないので、意図的にやったことです。本当は統一しようかとも思ったのですが、こっちのほうがいいかなと。

では、また次回。

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