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とらいあんぐる おあ へきさごん  作者: 高槻
さわがしい なつ
27/51

21.じんりきたくしー

「めっちゃハズい……」


 派手にすっ転んだせいで、結構注目されちゃってるよ……。情けなーい! ドジっ子属性なんか私に付けても全然美味しくない!


「立てないって、ヤバくない?」


「えー、冷やせば大丈夫だよ。ってことで喜成、肩貸してくれる?」


 おろおろとする琴美に、笑って答える。とりあえず保健室に行こうと喜成に頼むと、かがんでくれた。よしよし、これでこの場から脱却できる!

 と、思ったら。


「ちょっ、えっ、えっ、きゃあッ!」


 脇と膝裏に腕を回され、ぐんっ、という浮遊感と共に視界が高くなった。怖くて喜成の首に抱きついてから気付く。これっていわゆるお姫様だっこ……ッ!!


「このまま保健室連れてくわ」


「よしくん、落とさないでよ! 私、先生たちに一応連絡してくるね!」


 ちょっ、琴美このまま私を置いて行かないでー!!

 転んで恥ずかしかったけど、大衆の面前でこの状態ってどんな羞恥プレイ!? 恥ずかしすぎて顔から火を噴きそう……!


「よ、喜成、お、おろして……」


「歩けないだろ? しっかり捕まってろよ」


 ちょっと速足で移動されて、確かにちょっと怖い。周りの視線も気になって、私は喜成の肩に顔を埋めた。皆の記憶から消えて! そして早く保健室ついて!


 一秒が一分にも思える時間を過ごし、やっと着いた保健室では、目を丸くした先生に出迎えられた。こんな状態で来る生徒って珍しいよね絶対。

 それでも、先生は私の足を見るとテキパキと氷を用意して、近くの病院に連絡を取ってくれている。あー、氷が気持ち良い。


「樹っ、怪我したってっ」


「あ、兄ちゃん」


 保健室だと言うのに思い切り扉が開いたと思ったら、入ってきたのは焦った顔をした兄ちゃんだった。私の足を見た途端、顔が青ざめた。部活でこういった怪我は見慣れているだろうに、意外と繊細らしい。


「おい健、保健室なんだから静かにしろよ」


「お、おう……。樹が、けが……」


 入り口で固まっている兄ちゃんを押しのけて入ってきたのは、正悟先輩だった。さらにその後ろから琴美が入ってきたから、二人に伝えたのは琴美だろう。


「正悟先輩まで来て下さったんですか」


「樹ー、口調。戻ってる。しょう兄ちゃんって呼んで?」


「う…うん。でも、ここ来てて大丈夫なの? クラスの応援とか」


「樹が怪我したとあっちゃな。結構腫れてるんじゃねえ?」


 うへえ、考えないようにしてたのに。やっぱり腫れてきてる、かな……。


「こら、正悟うるさい。健も出入口で立ち止まってるんじゃないよ、邪魔。樹、今病院に電話したから、すぐにタクシー呼ぶね」


 保健室の先生がずっぱりさっぱり切って行く。サバサバした性格が、結構評判良いみたい。名乗って無いのに名前で呼んでくれるところも凄い。生徒全員覚えているのかな?


「学校から紹介するのって、すぐそこの整形外科ですよね。俺背負って連れて行きます」


「えっ」


「まあ、タクシー待つより早いよねえ。樹、そうしてもらったら?」


「ええっ!?」


 真面目な顔で言う喜成に驚いたら、それを後押しするような先生に更に驚いた。学外でもあの辱めを受けろと!? そう思ったのだが、追撃してきた兄ちゃんたちに脱力してしまった。


「なら俺が!」


「いや、ここは兄である俺の役目だろう!」


「いえ私が!」


「いやいや、二人ともまだ試合があるでしょう……ってか、琴美は流石に頼めないよ……」


 頭も痛いわ……。




 結局、距離もすぐそこと言うことで、喜成に背負われて向かうことにしました。部活柄、近場の病院は頭の中に入っているけど実際に行くのは初めてだ。


「ごめんね、喜成。重いよね」


「全然軽いから、安心しとけ」


「うーだって、この前体脂肪測ったの。そしたら前とそんなに体重変わってないのに体脂肪率上がってたんだよー!」


「男と女じゃ違うって」


「そうだけどさー」


「それより、大丈夫か? 足随分腫れたな。もう着くから」


「うー……、ありがと……」


 痛みから目を反らしたくて話すことに集中していたけれど、それでは誤魔化せない程に酷くなってきた。喜成の肩口に頭を乗せ、背中にべったり張り付いて体重を預けた。



 ■ ■ ■



 レントゲンの結果、骨に異常はありませんでした。


「重い捻挫だねー。しばらく体育の授業は控えてね。今晩熱が出るかもしれないから、そのお薬も出しておくから」


「はい、ありがとうございます」


 借りた松葉杖で、ひょこひょこ診察室から出る。うー、慣れない。こういう怪我、今までしたことなかったからなー。


「どうだった?」


「ん、重い捻挫だって。骨に異常は無かったよ」


 待合室で待っていた喜成が、あからさまにほっとした顔つきになった。


「良かった……」


 うん、私も良かったと思ってる。まあ、痛いんだが。

 お大事にどうぞー、という看護師さんから大量の湿布薬と錠剤を受け取り、さて戻るかとなったところで、目の前で喜成がかがんだ。


「どうかした?」


「いや、学校まで背負ってくし」


「えっ」


 いやいやいや、松葉杖お借りしましたし! 大丈夫ですし! と何度言っても喜成は聞き入れてくれなくて、私は仕方なくまた背負われた。うー、病院に入ってきた時も看護師さんに微笑ましい顔で見られたのに、絶対後ろで同じ顔されてるよー。




 次の日、恵美子さんに「お姫様だっこされたんだって?」と聞かれて撃沈しました。ついでに島根さんに凄い形相で「羨ましい!」と罵られ?ました。不可抗力だったのー! 忘れてえええ!

これにて球技大会編終了です。長かったね!

とか言いながら、これの別視点ver書きたいと思ってます。

誰を/誰から書こうか…

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