雷流乱舞
更新遅くなりました。
周平たちの生徒会への入会が(非公式に)決まってから5日が過ぎた。
相変わらず秘都美は毎朝、家まで周平を迎えに行ってから登校している。ここ2日は、涼稀も一緒だ。もちろん、痛い視線は秘都美にべたべた張り付かれている周平が避雷針になり、涼稀に刺さる事は無かった。
周平は、今日も無駄と知りつつ警戒しながら家を出た。
「おはよう、周平」
「おはよう涼稀」
いつも通りのそっけないあいさつのはずだが、心なしか涼稀の顔は淋しそうだった。
「周平、残念だね。今日はひと姉、迎えに来れなかったんだって」
「マ、マジ?やった......じゃなくて、ザンネンダナー先輩と一緒に行けなくてー」
口ではそう言いつつも、大変幸せそうにしている周平にむかって、涼稀が面白いほど爽やかな笑顔で声をかける。
「今日はイベントの準備があるから一緒に学校にいけなんだって。けど、そろそろ山場は越えただろうから、頼めば来てくれるはずなんだけど、どうする? 」
「いや、いいです。先輩にそんなことはさせれません」
「瞬間移動すればすぐだよ?」
「い、いや......とにかく、今日は先輩なしで行きたい気分だから~」
おかしな態度をとる周平を笑い、涼稀さらに茶々を入れようとしたが、もう周平は歩き始めていた。
「そ、それじゃ行くか......どっちにしろ、今日は俺の晴れ舞台なわけだし」
「周平、『俺』じゃなくて『俺たち』しにてくれよ。一応おれたちもいるんだからさ」
「分かってるって。ほらさっさと行こうぜ」
「はいはい」
さて、大会初日はどのようにして幕を開けるのか......。
◆◇ ◆◇ ◆◇
『さて、ついに始まりました徳帝学院全校バトルマッチ。1年生の司会は放送部副部長、草枕智慧が務めさせて頂きます」
第一練習場――――1年試合会場。で歓声が巻き起こる。
練習場は、陸上競技上の約半分の大きさ。そこに5人×20チームの総勢100人が入場している。彼らの周りには、動きを制限する結界が張ってあり、試合開始とともにそれが解かれる前に無理矢理破ろうとすると、失格になるようになっている。
使用される予定だった第四から第七練習場までは、なぜか諸事情で使えなくなったらしいく、試合は第一から第三練習場に会場を変更して行われることになった。
周平たちは、一試合目が行われる第一練習場に入場していた。
スタンドには、その試合には出場しない選手たちが座り、雑談に興じながら試合が始まるのを待っている。
だがそのざわめきも、アナウンスが入るとなくなった。
「それでは、試合を開始します。選手の方々、準備はよろしいですか!」
完全な静寂に包まれる練習場。舞台の上では、すでに選手同士のにらみ合いが始まっている。
「それでは......レディ、ゴウ! 」
司会者の宣言とともに、出場者を囲む結界が外された。一斉に、魔法を発動しようと詠唱を始める選手たち。だが、その中にいて桁違いの速さで魔法を完成させたものがいた。
「我導くところに雷鳴轟かん......雷流乱舞」
やはり、周平だった。彼をを中心として雷が放たれた。
繊細かつ力強い、爆音と閃光の乱舞は、ある者を貫通し、ある者を同時に発生した爆風で舞い上げる。圧倒的な威力の前に、選手は次々となぎ倒されてゆく。すべては、一瞬のことであった。
「............えっ? あっ、し、失礼しました。
なんと、勝負は一瞬でついてしまいました! 勝利したのは、灰桜選手率いるthe・ライト! 」
一瞬の静寂が司会者に破られ、ついさっき自分の前で起こったことに呆気にとられていた観客から、歓声が巻き起こった。
◆◇ ◆◇ ◆◇
同時刻、会場の上に残った五人のなかでは、周平が少し怒っていた。
「おい涼稀、もっとまともなチーム名は無かったのか」
「まあ、そう言うなよ周平。昨日のチーム登録の時にいきなりチーム名考えろって言われたから即きょうで考えたんだよ。おれにネーミングセンスがないのは知ってるだろ」
「それにしても、the・ライトはないだろ?」
「まあまあ、周平。そう怒るなって」
「風切君の言う通りよ。あんまり怒ったら、寿命が縮んじゃうよ?」
「分かってるよ菖蒲」
「とりあえず、ここから出ないか? 」
入口から次の選手たちが入場してくるのを見て、空峰が言う。
「そうだね。ここから出よう」
涼稀が言った。周平は少し物調ずらだが異論は無いようだ。それを確認して、空峰は出口へ向かう。残り四人もそれに続いた。
「周平、今度は俺たちにも活躍の場をくれよ? 」
「そうそう、周平くんばかり目立ってちゃ面白く無いよ」
「分かったよ。これからはあんま無理出来ないしな」
周平が心配するのは、自分が無茶をして暴走しないかと言うこと。この国でもトップクラスの魔術師がいる徳帝学院では、もし暴走しても、速急に対処してくれるはずだが。それでも周平に不安は残っていた。
◆◇ ◆◇ ◆◇
今日は予選だけなので、本線である決勝トーナメントは明日。そして、学年のトップが集まって戦い学校No.1を決めるのは、明々後日。ということで試合の無い周平たちは、今日は解散して思い思いと場所に行っている。
周平は屋上でボーッと現在行われている試合を見ていた。
「周平」
後ろから声がして周平は振り返る。
「ああ、涼稀か」
涼稀は、いつもと変わらない笑顔でそこに立っていた。そして、持ってきた2つのジュースのうち片方を周平に渡す。
「サンキュウ」
「周平、自分が暴走しないか不安なんでしょ? 」
「......まあな」
周平は、いきなりボーッと考えていたことを言われて、少し怯んだ。
「大丈夫だよ周平。万が一にも近くにはテンがいる。彼は結界魔法のスペシャリストだよ。少なくともここの教師が魔法を発動するくらいまでは、周平の暴走を止めてくれる」
「でも、俺が暴走するのは、おれの精神力が尽きかけた時だ! あいつがそれまで持つとは......」
「周平」
周平の心の叫びは、涼稀に遮られる。
「大丈夫さ。おれでもあのときより成長したんだ。周平はおれなんかよりずっと強くなっているはずさ。もっと自信を持ちなよ」
「............ああ」
長い沈黙の後に、周平のか細い声が漏れる。
「まったく、周平は心配しすぎなんだよ」
涼稀はカラカラと笑う。周平も「そうだよな」と自分に言い聞かせるようにつぶやき、涼稀と笑った。
「周平、そろそろ時間だ。おれはちょっと用事があるから先に帰るよ」
「了解」
周平は屋上を出て行く親友に感謝しながら、まだ試合が行われている会場に目を移した。




