五師八弟家
周平の思った通り、目の前にいる二人の先輩は、この国の頂点といっても過言ではない五師八弟家の人間であった。しかも本筋の家系さらに二人してその直系。
周平はすました顔をしているが、今後の学校生活を考えると悲しいばかりだと心の中で落ち込んでいた。
彼は平安な高校生ライフを楽しもうとしていたのだ。新入生総代の挨拶をした時点で、否。彼に性格からしてすでに、その幻想は打ち捨てられて当然のものであるのだけれど。
◆◇◆◇◆◇
今から80年ほど昔、魔法は科学的に認められたものとなった。
しかし、残念ながら、魔法はその価値をすぐに認められはしなかった。長年憧れては来たものの、それが決して存在しない事を知っていた人々のなかに、魔法が実在すると信じるものはほとんどいなかったのだ。
しかしその中で、その存在を重く見た者達がいた。彼らは莫大な資産を投じ、時代の先駆者として魔法を取り入れた。結果、彼らは、自らが取り入れた「魔法」によって、国内の勢力を爆発的に拡大していった。
それはわが国でも同様であり、こうして、初めに我が国魔法界の重鎮となったのが「五師家」と呼ばれる五つの一族である。
さらに、彼ら五師家に教えを請い、弟子として実力を養い、自立し新たな勢力となった者がうまれ、その数は数十を超えた。
それだけの勢力があれば、自然と勢力争いが始まる。魔法の科学的証明から20年後、国内の魔法的戦力の統率の強化を名目に、国は条件付きで勢力間での闘争を許可した。内容は、
・闘争は15日間
・決められた地区に限定して行う
・5日以上連続で同じ勢力間で闘争を行った場合、五師家による会議により勝敗を決定する。
・五師家は戦うことを認めない。
・上記の条件を無視した場合、国及び五師家による制裁を加える。
と言ったかんじだ。もちろんこの他にも条件はあった。
国内にあった数々の勢力(流派)の、あるところは消え、あるところは他の勢力の一部となり、次第にその数を減らしていった。これにより、全国に数十を超えていた新興の魔法一族は8つになり、「八弟家」となった。
この戦いを生き抜いてきた「八弟家」の中には、「五師家」と変わらぬまでの実力をつけた一族も現れた。例えば奈良に本家を置く「山城家」は防御系魔法の中枢として駿太郎の家「緑谷家」に続く力を持ち、仙台の「氷川」は「奈良の覇王」の異名を取る「朝日」家と同等の攻撃系魔法の使い手として名を売っている。
元々、五師家の教えを受けていた八弟家のほとんどは、五師家のどこかの家との繋がりが存在する。また、伝統があるが故の力の差もあり、基本的には五師家の方が立場的にも実力的にも、上位にある。
そして今、【五師八弟家】の十三の家によって、我が国の魔法界は成り立っているのである。
その五師八弟家の五師家の本家が2人(五師家にも分家がある)、周平の目の前に座っている。しかも、そのうち一人は、次期当主候補だ。
すんごい人たちと関係持っちゃたんだな。と周平は改めて思う。そして、結局関わることになったんだろうけどなと追加した。
◆◇◆◇◆◇
その頃生徒会技室では......
「あ~。やっぱこの鍵壊されてるな~。外部から無理やりウイルスをねじ込まれてる。」
(こんなことができるのは、あの子ぐらいよね)
真利奈の脳裏に、濃紺の髪に黒い瞳をした細身の男が浮かぶ。
金糸雀 周平。
鍵の壊され方は外部からのウイルスの侵入。しかも学校にある回線を使われた痕跡はまったくない。電流を別の場所で生み出して、電子信号に置き換え、それを鍵に流し込んだのだろう。
と言うか、普通ならこんな考えは到底思いつかないのだが、周平がいるとなれば、話は別だった。
元々、他と比べても膨大な量の情報処理能力を持ち、そのほぼすべてを電気系統の魔法へつぎ込んでいるのだ。しかも、彼の使っている石も、MMOも電系統の特化したものだった。
学校にあるこの程度のロックシステムは、彼にとっては簡単に解除できるのだろう。
「さて、先輩の私を困らせるとは、彼にはもっと困ってもらわなくちゃね。」
真利奈は細く微笑む。
カタカタカタカタ........................
最終下校時刻はとうにすぎ、暗くなった教室。
無機質な音は、それから数時間の間響いていた。
ここまでが序章となります。
指摘、感想などなど頂けるとモチベーションの維持に繋がりますので、どうかよろしくお願いします。




