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夕暮れのリヴァセリア。
金色の陽が石畳を染める中、 リヴァセリアの王墓区画を、 イジュールとドミナンスは並んで歩いていた。
静かな風が吹く。
古い墓石群の奥へ進みながら、 ドミナンスは首を傾げる。
「今日はどこにいくの?」
イジュールは前を見たまま答えた。
「先代王の墓参りだ」
やがて二人は、 巨大な白石の墓碑の前で立ち止まる。
長い年月を経ても、 そこだけは神聖な空気が漂っていた。
ドミナンスは刻まれた名を読み上げる。
「ユリウス、アーヴェレッヘ……」
イジュールが静かに頷いた。
「それは初代リヴァセリア王と王妃だ」
「へぇ……」
さらに視線を下へ落としたドミナンスが、 ふと眉を上げる。
「これは……アルヴェイン……カルヴェス……」
「二代目王と王弟だ」
ドミナンスは瞬きをした。
「王弟? 王妃じゃなくて?」
「ああ」
イジュールは淡々と答える。
「アルヴェイン王は感情に乏しいお方だったと聞いている」
その言葉に、 ドミナンスがくすりと笑った。
「ふふっ、まるでイジュね!」
「……そう言ってくれるな」
僅かに眉を寄せるイジュールを見て、 ドミナンスはさらに楽しそうに笑う。
イジュールは墓石へ視線を戻した。
「王弟のカルヴェス殿は、優秀な大魔術師だったと伝えられている――だが、詳しくは語られていない」
まるで歴史から、 意図的に抜け落ちているようだった。
ドミナンスは墓石を撫でる。
「ふぅん。それでも墓石に刻まれる程だから、相当信頼されてたのね」
イジュールは少しだけ目を細めた。
「そうだな。少なくとも、王妃よりは大切に思っていたのだろう」
風が吹き抜ける。
墓前の白い花が、 静かに揺れた。
ドミナンスはふとイジュールを見上げる。
「ところで、私が死んだらイジュは私と一緒に名を刻むの?」
イジュールは即答した。
「もちろんだ」
迷いのない声だった。
ドミナンスは目を丸くしたあと、 ふっと笑う。
「……ふふっ、神は死なないけどね!」
「まったく……」
呆れたように息を吐きながらも、 イジュールの口元は僅かに緩んでいた。
沈む夕陽が、 並ぶ二人の影を長く伸ばしていく。
その背後で――アルヴェインとカルヴェスの名は、 数千年経った今も、 静かに隣り合っていた。




