プロローグ〜第一章 ゴールデンウィークのすれ違い
プロローグ
「や、やった!女王に勝った!これで帰れる!」
「貴様!女王に勝つとは何事か!この者の首をはねよ!」
「え~⁉そんな、約束が違う!」
そう言って女王の対戦者は逃げ出した。
しかし沢山のトランプ兵に取り囲まれ捕まってしまう。
「…気が変わった。仮にもこのわたくしに勝ったのだ…褒美として生かしてやろう」
「わ?わーーーーー!」
「フフフ…このデジタルワンダーランドの住人としてね」
そう言って女王は対戦者を何処かへと連れて行ったのでした。
………
……
…
第一章 ゴールデンウイークのすれ違い
放課後の喫茶店「樹」は、いつもより少しだけ賑やかだった。
ゴールデンウイークが近いせいか、常連客たちの会話もどこか浮き立っている。
カウンターの奥では、青い髪の店長シャロンがコーヒー豆を挽きながら、柔らかな香りを店内に満たしていた。
その香りに包まれながら、リサはカウンターに身を乗り出す。
「ねぇシャロンさん! ゴールデンウイーク、どこか行こうよ!
ほら、前に言ってた新作スイーツの店、行きたいって言ってたじゃん!」
金髪のロングヘアが、期待に揺れている。
リサの声は明るく、弾んでいた。
シャロンは手を止め、申し訳なさそうに微笑む。
「ごめんね、リサちゃん。ゴールデンウイークも店は開けるから…
それに、定休日は仕入れがあるから動けないのよ」
「えぇ〜〜……」
リサの肩がしゅんと落ちる。
その様子を見ていた翔子が、そっと声をかけた。
「リサ……私はね、定休日に図書館に行って、本を返さないといけないの」
「えっ、翔子もダメなの?」
リサは思わず身を乗り出す。
翔子は少し困ったように目を伏せた。
シャロンが二人の間に柔らかく言葉を挟む。
「返したあとに遊べばいいじゃない。午後なら時間はあるでしょ?」
その言葉に、リサはすぐさま反応した。
「やだ!翔子は返した本の倍ぐらい借りてくるんだもん。
重くて遊びになんか行けないじゃん!」
店内の空気が、ぴたりと止まった。
翔子は驚いたように目を瞬かせ、そして困った顔で小さくつぶやく。
「……返す言葉もないわね」
その表情は、怒っているわけでも、反論したいわけでもない。
ただ、どうしていいかわからず、戸惑っているだけだった。
「もう〜っヽ(`Д´)ノプンプン」
けれど、今のリサにはその微妙なニュアンスを受け取る余裕がなかった。
「あらら〜(笑)」
怒っているリサを、どうにかなだめようとするシャロン
リサの胸の奥が、ぎゅっと痛む。
自分でも理由がわからないまま、感情が溢れ出す。
「もういいよ!」
リサは叫ぶように言い放ち、勢いよく店の扉を押し開けた。
カラン、とベルが乾いた音を立てる。
夕方の風が金髪を揺らし、リサの背中を押すように吹き抜けた。
「あ、リサちゃん!」
シャロンは追いかけようと一歩踏み出したが、翔子がそっと袖をつかんだ。
「……少し、時間を置いたほうがいいと思う」
翔子の声は静かで、どこか自分を責めるように震えていた。
シャロンはその手に軽く触れ、うなずく。
「そうね…大丈夫、リサちゃん、きっと戻ってくるわよ」
店内には、コーヒーの香りだけが静かに漂っていた。
あとがき…のようなもの
「シャロンの喫茶店」GW特別編です。
リサのデジタルワンダーランドでの冒険を描いていきます。




