表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲームで冷酷な男と組んだら、なぜか俺だけ守られている  作者: しゃとーぶりあん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/62

断章ⅱ AHI-09:内部神経ログ抽出データ

 



 神経記録ログ:初期段階(幼少期4-7歳当時)

 記録番号:LOG-0001

 光が目に、痛い。

 目を開けると、もっと痛くなった。

 白しかない。

 天井も、壁も、周りにいる人の服も全てが白い。

 音は遅れてくる。

 注射針やメスを置く音、靴の音。機械の低い唸り。

 たくさんの声もある。

「成功例の可能性あり」

「反応速度、異常値」

「記録を継続」

 体が、冷たい。

 頭を含め全身に長い何かが突き刺さっている。

 抜こうとすると、手を押さえつけられる。

「動くな」

 初めて自分に向けられた言葉だった。



 記録番号:LOG-0003

 名前を与えられた。

 平坦なみじかい音の羅列。

 ただ、それを呼ばれることは無い。

「ナンバー09、出ろ」

 数字で管理する方がやりやすいのだろう。



 記録番号:LOG-0007

 他にも子供がいる。

 ガラスの向こうに隔てられている。

 泣いて叫んでいる。

 でも、声は聞こえない。

 ある日いなくなる。

 次の日もいない。

 その次の日も。



 記録番号:LOG-0012

 初めて自分から質問をした。

「ここはどこ?」

 沈黙のあと、答えが返ってくる。

「お前が居るべき場所だ」

 それ以上は聞かない方がいいと感じる。

 理由はわからない。



 記録番号:LOG-0018

 痛みにはいくつもの種類があると知る。

 鋭い痛み。

 焼けるような痛み。

 頭の中をかき回されるような痛み。

 どれも同じではない。

 自分の反応が記録されている。

 泣くと、何かの数値が乱れるらしい。

 だから、どれだけ痛くても泣かないようにする。

 そうすると、褒められる。



 記録番号:LOG-0026

 眠ると、夢を見る。

 知らない場所。

 広くて青い空の下で、風に吹かれている。

 刷り込み学習で知ってはいるけど、いちども見たことは無いもの。

 目が覚めると、白くて狭い部屋に戻る。

 夢の方が自由というものに近い気がする。

 眠るのが好きになる。



 記録番号:LOG-0033

「適合率」という言葉を覚えた。

 自分の数値は、他より高いらしい。

 それが何を意味するかはわからない。

 ただ、たくさんいた他の子供は減っていく。

 自分は残る。



 記録番号:LOG-0041

 実験で死んだ子供を見た。

 動かないけど目は開いたままだ。

 どこかへ運ばれていく。

 布で覆われている。

 初めて理解した。

 死ぬ、ということは、ここから出られる、ということだ。

 ちょっと、羨ましい。



 記録番号:LOG-0050

 感情を抑える訓練が始まる。

 怖いと感じた瞬間、電流が流れる。

 悲しいと感じた瞬間、呼吸が制限される。

 痛い。苦しい。痛い……。

 やがて、何も感じなくなる。

 それでも、自由になる夢だけは消えない。



 記録番号:LOG-0064

 研究員が言った。

「これは人間じゃない」

「成功すれば、世界が変わる」

 その意味は理解できない。

 ただ一つ疑問に思うのは、人間ではない自分は一体何になるんだろうと言う事だけだ。



 記録番号:LOG-0072

 鏡を見せられた。

 初めて、自分の顔を見る。

 髪と目は黒だ。

 目元が、どうしてか少しだけ赤い。

 もうずっと、泣いたことは無いのに。

 ああ、強い電流を浴びたり薬剤の投与で毛細血管が切れて、目玉や鼻腔等から出血することはよくある。

 原因が分かった。

 痩せた子供だった。



 記録番号:LOG-0088

 質問をやめた。

 答えが意味を持たないから。

 代わりに、観察する。

 人間の表情と、声の揺れ幅。

 嘘と本音の違いが、理解できるようになる。



 記録番号:LOG-0100

 ある日、言われた。

「お前は特別だ」

「選ばれたぞ」

 その言葉に、何も感じなかった。

 ただ、改めて理解した。

 やはり自分は死ぬまでここから出られない。



 記録番号:LOG-0113

 夢の中で、誰かが自分の名前を呼ぶ。

 優しい声。

 知らないはずなのに、懐かしい。

 声の方へ手を伸ばす。

 届きそうで、届かない。



 記録番号:LOG-0135(終端)

 もし外の世界があるなら、そこには何があるのか。

 考える。

 考えるほど、たまらなくなる。

 ここから出たい。

 外の世界を、見たい。



 ログ終了

 状態:保存/封印

 記録形式:断片的自我ログ(再構成済)

 備考:当該個体、初期段階より特異な認知構造を確認

 ※脱走の可能性あり 監視強化を申請済み

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ