第12話 忠告
ころしあいの、覚悟――。
「そんなこと────」
出来るわけが、ない。
過酷な事態に流されるしかない状況だが、進んで誰かを殺すような真似は出来そうにない。
それでも。
「――――わかってるよ」
蒼真は声を絞り出した。
じっと見ていた神崎は、軽く嘆息した。
「────元からお前にそれは期待してない」
「無理だからな」
「――――え?」
訝しがる蒼真を後目に、神崎は続ける。
「俺が言いたいのは、
何を見てもいちいち腰抜かすなって事だ」
「な……っ、…………わかった」
反論しかけたが、死体を見るたびに全身の力が抜けていく、あの感覚を思い出す。
足手まといにならないよう気を付けるしかない。
そう結論した蒼真は大人しく頷いた。
三方向の分岐。
どれも同じコンクリートの通路。
奥がどうなっているかはまるで見えない。
ふと蒼真の目は床のある場所に止まった。
「神崎」
「なんだ」
「左はやめよう」
神崎が視線だけ向ける。
「理由は?」
蒼真は足元を指差した。
コンクリートの継ぎ目。
ほんのわずかに沈んでいる。
「踏み板」
神崎の目が細くなる。
「……よく見つけたな」
蒼真は肩をすくめた。
「隠してるつもりのところほど目立つんだよ」
言いながら一歩真ん中の通路に進んだ。
その瞬間。
――カチ
小さな音。
蒼真の足元だった。
「……あ」
神崎の目が一瞬で変わる。
次の瞬間。
ガッ
蒼真の体が宙に浮いた。
「え?」
神崎が蒼真の体を抱え、そのまま後ろへ跳ぶ。
ガァン!!
さっきまで蒼真が立っていた場所の、床。
無数の鉄の槍が突き出す。
一瞬遅れていたら、体は串刺しだった。
蒼真の背中に冷たい汗が流れる。
「……ごめん」
「別にいい」
神崎は平然と答えた。
まだ蒼真を抱えたまま。
「……降ろして」
「軽いから問題ない」
「俺は問題ある!」
神崎がため息をつき、蒼真を床に下ろす。
蒼真は深く息を吐いた。
「助かった」
「……もっと慎重に動け」
神崎は前を見る。
「進むぞ」
2人は右の通路を選んだ。
迷路はさらに複雑になっていく。
曲がり角。
分岐。
同じような壁。
同じような通路。
方向感覚が狂いそうになる。
その途中。
何かがキラリと光る。
蒼真の視線が壁で止まった。
「……ちょっと待って」
神崎が止まる。
蒼真は壁のひび割れに近づいた。
その中に、小さな金属のスイッチ。
蒼真は隙間に指を差し込み、そこを押した。
――ピピッ
電子音。
すると、
ゴゴ……
壁の一部が横にスライドし、
中には黒いケースが入っていた。
神崎が取り出す。
中にあったのは────、拳銃だった。
黒い半自動拳銃。
マガジンがふたつ。
蒼真が静かに息を吐く。
「……銃か」
神崎が言う。
「当たりを引いたな」
蒼真は銃を手に取った。
重い。
冷たい金属。
手にしっくりくる。
だが、蒼真は少し眉を寄せた。
「正直、あんまり嬉しくない」
「なぜだ」
「これ使うってことは、本気で殺し合いになるってことだろ。……できれば撃ちたくない」
神崎が淡々と言う。
「だから甘いと言ってる。銃などなくても人は人を殺せる」
蒼真は苦笑する。
「知ってるよ」
「…………」
その時だった。
静まり返っていた辺りに、男の悲鳴がこだます。
「――――!!」
2人は身構えて息を吞んだ。
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めっちゃ励みになります( *´艸`)
出口はまだもーちょっと先ですが
なんとかスキマにBのLらしいパヤパヤは
はさんでいきたい所存であります




