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断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


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第9話 崩れ始めた王都

 王都に広がったのは、混乱ではなかった。


 ――不安だ。


 市場では怒号が飛び交っているわけでもなく、暴動が起きているわけでもない。

 人々は整然と列を作り、商人は淡々と品を並べ、役人はいつも通りに書類を運ぶ。


 それでも、空気が違った。


「……今日は、これだけです」


 穀物商の男が、申し訳なさそうに言う。


「明日は?」


「分かりません」


 その一言が、客の表情を曇らせる。


 分からない。

 それは「ない」よりも、人を不安にさせる言葉だった。


 同じ頃、王都南区の兵站倉庫。


「補給予定が、また遅れています」


 軍需管理官が報告書を差し出す。


「理由は?」


「……商会側の手続きが、まだ」


 まだ。

 それは昨日も聞いた言葉だ。


 倉庫に積まれた箱は、目に見えて減っている。

 今すぐ困るわけではない。

 だが、“今後”が見えない。


「演習は中止だ」


 指揮官がそう判断する。


「実戦でもないのに、消耗するわけにはいかん」


 その決定が、軍全体に伝わる。


 ――軍が、動かなくなる。


 王都中央の教会でも、異変は起きていた。


「寄付箱が、空です」


 若い修道士の声が、礼拝堂に響く。


「昨日も、同じでした」


 司祭たちは顔を見合わせる。


 信仰が失われたわけではない。

 だが、人々は“備え”を始めている。


 祈るよりも、蓄える。

 信じるよりも、確保する。


 それは、社会が防御姿勢に入った証だった。


 王宮では、報告が積み上がっていた。


「市場が鈍っています」

「軍の演習が止まりました」

「教会の寄付が落ちています」


 王太子レオンハルトは、机に両手をついた。


「……なぜ、ここまで」


 誰も答えない。


 答えが分かっている者ほど、口を閉ざしている。


「商会は?」


 沈黙が、少し長く続いた。


「……条件付きで、融資の再開を検討すると」


「条件?」


 その瞬間、レオンハルトの胸がざわついた。


「王宮は、金の使途に口を出さないこと」


 言葉が、重く落ちる。


 それは、援助ではない。

 統治権の一部を、差し出せという要求だ。


「……ふざけている」


 誰かが呟いた。


 だが、反論は続かない。


 拒否すれば、金は来ない。

 受け入れれば、王宮は弱体化する。


 選択肢は二つあるようで、実際には一つ。


 王太子は、唇を噛みしめた。


「……協議する」


 その言葉が出た瞬間、

 王都は“次の段階”に入った。


 一方、地方都市の宿。


 アリシア・フォン・ヴァレンシュタインは、マティアスから届いた報告を静かに読んでいた。


 市場。

 軍。

 教会。


 すべてが、想定通りに“鈍っている”。


「……もう、戻れないわね」


 彼女は紙を畳み、机に置く。


 この段階で王都ができることは、ただ一つ。

 **条件を飲むこと**。


 だが、それは解決ではない。

 延命だ。


 アリシアは窓の外を見た。


 王都は見えない。

 それでも、その鼓動が弱まりつつあるのは分かる。


「崩壊は、音を立てて起きるものじゃない」


 静かに、そう呟く。


「気づいた時には、もう立ち上がれない」


 王国は今、

 自分で選んだ条件に、首を締められ始めていた。


 そして、それを“誰が用意したのか”を、

 まだ誰も理解していない。


 ――悪役令嬢は、ただいないだけだというのに。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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