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断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


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第62話 三年の約束

 王宮大広間。


 再び、長卓が並べられた。


 だが今回は断罪でも審問でもない。


 調印式。


 帝国と王国、三年協定の正式締結。


 文官が協定書を読み上げる。


「鉄および穀物の三年固定供給契約」

「供給停止時の違約条項明記」

「帝国商会二港常設拠点設置」

「港湾主権は王国が保持」


 一文一文が、均衡の証。


 レオンハルトは、署名欄に目を落とす。


 その横に、カイゼルの名。


 ペンを取る。


 迷いはない。


 署名。


 次に、カイゼルが署名する。


 インクが乾く音さえ、重く響く。


 調印が終わると、形式的な拍手が起きた。


 華やかではない。


 だが確かな合意。


 ――


 式が終わり、人が散る。


 広間の隅で、カイゼルが静かに言った。


「三年だ」


「ええ」


 レオンハルトが答える。


「三年後、どうなるか」


「その時の我々次第だ」


 カイゼルは、わずかに笑う。


「合理的な答えだ」


 そして視線を、アリシアへ向ける。


「あなたは、この三年をどう使う」


 直接の問い。


 アリシアは、迷わず答えた。


「依存を減らす」


「具体的に」


「国内資源開発。農地再編。

 商会育成。輸送路分散」


 即答。


 カイゼルは、満足げに頷く。


「やはり面白い」


「帝国も同じでは」


「当然だ」


 隠さない。


「我々は、この三年で利益を最大化する」


 正直すぎる。


 だがそれが彼だ。


 沈黙。


 カイゼルは、一歩近づく。


「あなたの国は、美しい」


 低い声。


「だが脆い」


 以前と同じ言葉。


 だが今回は、挑発ではない。


 確認。


 アリシアは、静かに言う。


「脆さを知っている国は、強くなる」


 視線がぶつかる。


 カイゼルは、ほんの一瞬だけ目を細めた。


「三年後」


「ええ」


「同じ均衡でいられると思うな」


「思っていない」


 即答。


 そこに恐れはない。


 ただ計算。


 カイゼルは、軽く頷いた。


「では、また」


 それは敵意でも、友誼でもない。


 対等な相手への言葉。


 ――


 帝国使節団が王都を去る日。


 黒と銀の旗が、ゆっくりと門を抜ける。


 民は、安堵の視線を向ける。


 戦はなかった。


 血も流れなかった。


 だが確かに、戦場はあった。


 理と理の戦場。


 王宮の回廊で、レオンハルトが立ち止まる。


「終わったな」


「いいえ」


 アリシアは即答する。


「始まった」


 短い沈黙。


「三年で変える」


 レオンハルトが言う。


「変えられるか」


「変える」


 その声に、迷いはない。


 彼は、もう揺れていない。


 選んだ。


 そして選び続ける。


 アリシアは、静かに王都を見下ろす。


 整えられた街並み。


 だがまだ足りない。


 内政は整った。


 外交は均衡を保った。


 次は――


 思想。


 王国の中で、何を優先するのか。


 三年の約束は、猶予であり試練。


 合理の帝国は去った。


 だがその影は残る。


 悪役令嬢は、立ち続ける。


 王もまた、選び続ける。


 第五章 外圧 ― 理の帝国 ―


 終。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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