第48話 選ぶ王
公開審問から三日後。
王宮議会は、再び開かれた。
今回は、再編そのものではない。
――今後の統治方針について。
議場の空気は、前回よりも静かだ。
アルベルト・クラウスは、席に着いたまま動かない。
攻勢は止まった。
だが、完全に退いたわけではない。
レオンハルトが立つ。
「公開審問を経て、再編は継続する」
ざわめきは小さい。
「だが、補完策を加える」
視線が集まる。
「王女セレナを中心とした、
“民意調整局”を設置する」
意外な提案だった。
「再編で影響を受けた者の声を、直接拾う機関とする」
アリシアは、わずかに目を細める。
予想外ではない。
だが――巧い。
反動の不満を、制度内に取り込む。
アルベルトが、ゆっくりと口を開いた。
「殿下。それは再編への修正か」
「補強だ」
即答。
「再編は、契約だ」
その言葉に、議場が静まる。
「契約は、更新される」
王家が、契約を独占しない。
制度として回す。
「王家は、強権ではない」
レオンハルトは、はっきりと言う。
「選び続ける立場だ」
その目は、揺れていない。
アルベルトは、沈黙した。
正面からの攻撃は、もはや逆効果だ。
世論は、王太子の決断を評価し始めている。
教会も、直接対立は避けている。
「……承知した」
短い言葉。
完全な降伏ではない。
だが、後退だ。
議会は、散会する。
――
廊下で、アリシアが言った。
「上手ね」
「何がだ」
「反動を、制度に組み込んだ」
レオンハルトは、少しだけ笑う。
「お前のやり方を、真似した」
理屈で対立せず、吸収する。
「私は、王になる」
改めて言う。
「だが、独りではない」
その視線は、まっすぐだ。
アリシアは、わずかに頷く。
「王の条件は、満たしつつある」
「厳しいな」
「甘いよりは」
短いやり取り。
だが、以前とは違う。
対等だ。
――
王都の街。
新聞は、新しい見出しを掲げる。
『王太子、補完機関設立を発表』
『再編、第二段階へ』
悪役令嬢の名は、紙面の隅にある。
中心ではない。
それが、静かな変化だった。
ミレイア・ロウは、掲示板を見つめている。
「……王太子が、前に出た」
彼女の胸の中で、何かがほどける。
嫌悪は消えていない。
だが、単純な断罪はできない。
国が、動いている。
――
夜。
王宮の回廊。
「これで、反動は終わりか」
レオンハルトが問う。
「いいえ」
アリシアは、即答する。
「終わらない」
「だが、今は退いた」
「ええ」
彼女は、静かに空を見る。
「でも、次は外から来る」
レオンハルトは、眉をひそめる。
「外?」
「整った国は、目立つ」
その言葉は、重い。
「隣国は、必ず見る」
王都の灯りは、安定している。
だがその安定は、
他国にとっては脅威だ。
王太子は、静かに息を吐いた。
「ならば」
「ええ」
アリシアは、視線を戻す。
「次は、外交」
反動は、内側からは退いた。
だが物語は終わらない。
王は、選んだ。
悪役令嬢は、立ち続ける。
そして国は、次の試練へ向かう。
静かに。
確実に。
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