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断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


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第34話 王国の再接触

 南部とグランヴィルの再編は、もはや噂ではなかった。


 数字が、変わっている。


 物流量の回復。

 税収の安定。

 治安の改善。


 それは王宮にも、明確な形で届いていた。


「……二地域とも、持ち直しています」


 補佐官の報告に、王太子レオンハルト・アルヴェインは何も言わなかった。


 報告書を閉じ、しばらく目を伏せる。


 救われたのは、選んだ町だけ。


 王都は、何もしていない。


 会議室には、再び貴族たちが集まっていた。


 だが空気は以前と違う。


「ヴァレンシュタインの手法は、効果がある」


 老貴族グスタフ・ヘルマンが、低く言う。


「だが、あれは強権だ」


「強権でも、結果が出ている」


 若い貴族が反論する。


 議論は続く。


 だが、以前のような“様子見”はない。


 誰もが理解している。


 ――選ばなければ、切られる。


 レオンハルトは、静かに立ち上がった。


「……正式に、交渉を申し込む」


 その一言で、空気が止まる。


「殿下、それは……」


「条件を提示する」


 彼は、はっきりと言った。


「こちらから」


 誰かが息を呑む。


 それは、王国が初めて

 **対等な交渉者として立つ**という意味だ。


「王権の一部を、委譲する」


 ざわめき。


「再編権限を、限定的に譲渡する」


 それは、かつては考えられなかった提案だ。


 だが今は。


「……それで、国は守れるのか」


 国王が、静かに問う。


 レオンハルトは、正面から答えた。


「守れるかは、分かりません」


 率直だった。


「ですが、何もしなければ、確実に失います」


 沈黙。


 やがて、国王はゆっくりと頷いた。


「行け」


 その許可は、重い。


 一方、地方都市の宿。


 マティアスは、王都からの正式な書簡を差し出した。


「……来ました」


 アリシアは、封を切る。


 文面は簡潔だ。


 正式な交渉の申し入れ。

 再編権限の一部譲渡。

 条件提示の用意あり。


 彼女は、最後まで読み終え、静かに目を閉じた。


「……ようやく」


 その声には、わずかな安堵が混じる。


「王国が、選んだ」


 マティアスは、慎重に問う。


「お受けになりますか」


 アリシアは、窓の外を見る。


 南部は、まだ完全ではない。

 だが、動いている。


「受けるわ」


 短い返答。


「ただし――」


 その先の言葉は、冷たい。


「条件は、私が決める」


 王国は、初めて

 “助けてほしい”とは言わなかった。


 代わりに、

 “何を差し出せるか”を提示してきた。


 それが、分岐点だ。


 王都と地方。

 どちらも、ようやく理解した。


 政治とは、

 責任を引き受ける者だけが、

 席に着けるということを。


 交渉の席が、整えられる。


 そこには、もはや空席はない。


 ――次に座るのは、

 悪役令嬢だった。

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