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断罪されたので、裏から王国を乗っ取ります  作者: 早乙女リク


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第31話 選ばれた町

 南部の町が痩せ細っていく一方で、

 王国北西の小さな町、グランヴィルは、静かに動いていた。


 人口は少ない。

 産業も限られている。

 だが、その町は一つだけ、他と違っていた。


 ――選んだのだ。


「すべて、差し出す」


 町長は、震える声でそう言った。


「自治権も、徴税権も。

 我々は、彼女の管理下に入る」


 反対の声はあった。

 当然だ。


「独立を失うぞ」

「失敗すれば、俺たちの責任だ」


 それでも、町長は退かなかった。


「今は、すでに独立などない」


 静かな言葉だった。


「王都は助けない。

 ならば、選ぶしかない」


 最終的に、手は挙がった。


 全会一致ではない。

 だが、過半数は越えた。


 ――責任を引き受ける、と。


 数日後。


 地方都市の宿に、正式な使者が訪れた。


「グランヴィル町より、

 条件をすべて受け入れるとの申し出です」


 マティアスの報告に、

 アリシアはゆっくりと頷いた。


「署名は?」


「あります」


 差し出された書面には、町長と主要代表者の名が並んでいる。


 逃げ道のない、連名。


「……覚悟は、本物ね」


 アリシアは、立ち上がった。


「準備を」


 それだけで、動きが始まる。


 王都ではなく、

 アリシアの私的な資金と人脈が動く。


 倉庫の再編。

 物流の再構築。

 債務の一本化。


 無駄はない。

 情もない。


 数週間後。


 グランヴィルの市場には、再び品が並び始めた。


「……戻ってきた」


 人々は、信じられないという顔をする。


 完全ではない。

 だが、明らかに違う。


 兵の巡回も整い、

 税は減り、代わりに管理は厳しくなった。


「前より、自由はないな」


 商人が呟く。


「でも、店は開いてる」


 それが、答えだった。


 一方、南部の町。


 ラウル・ヴェストは、グランヴィルの噂を聞いていた。


「……本当に、持ち直したのか」


「らしい」


 短い返答。


 羨望が、静かに広がる。


「俺たちも、飲むべきだったか」


 誰かが言う。


 だが、それはもう過去だ。


 ラウルは、拳を握る。


 あの時、責任を背負う覚悟を持てなかった。

 それが、今の差だ。


 一方、王都。


 噂は二つに分かれた。


「やはり、悪役令嬢だ。

 従った町だけを救う」


「いや……

 選んだ町を救ったんだ」


 評価が、揺らぎ始める。


 地方都市の宿。


 マティアスは、静かに言った。


「……恨まれています」


「当然よ」


 アリシアは、書類から目を上げない。


「救われなかった町にとって、

 私は敵」


 そして、続ける。


「でも、救われた町にとっては、

 契約相手よ」


 敵か、契約相手か。


 その差は、

 **責任を引き受けたかどうか**だけだ。


「これで、王国は理解する」


 アリシアは、静かに言う。


「“選べば変わる”と」


 グランヴィルは、選ばれたのではない。


 ――**自らを差し出した**のだ。


 その違いが、

 やがて王都を動かすことになる。


 まだ、時間はかかる。


 だが、

 止まっていた歯車が、

 初めて、わずかに回り始めていた。


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