第28話 門出を祝う2
シュウたちが出発して数十分。
早くも不安が真下家に訪れている。争いに巻き込まれていないか、向こうでいじめられていないか亘の心配は尽きない。
「大丈夫かな・・・息子が戦地に赴くってすごい不安なんだけど」
『そげん焦らんでもよかがね。シュウちゃんは強かで無事じゃが』
「そうなんだけどさぁ、でも向こうは魔族だからめっちゃ強い奴ばっかりだったらどうしよう・・・魔王とかどんなレベルなんだろ。シュウの実の兄なんだけど、昔シュウを倒しに来たことあるっていうし仲はかなり悪いみたい」
『男兄弟なんてそんなもんよ。あんたの父ちゃんも昔は喧嘩ばっかじゃったが』
「いや、ばぁちゃん喧嘩なんて可愛いもんじゃないからね」
『元気があってよかが』
「いや、だからねばぁちゃん、やんちゃとかワンパクで済ませられないから。世界規模だから」
『世界!男ならそれくらいでかくないといかん!』
「うん、そうだね。ありがとう。冷静になれたよ」
祖母との電話を終え平静を取り戻す亘。
「母様、ばぁちゃんはなんて言ってた??」
「シュウなら無事だろうって。まぁ、戦争を経験したばぁちゃんが言うんだから間違いない!・・・と思わないと、どんどん悪い方に考えるよ。よしっ!シュウが疲れて帰ってくるかもしれないから今日は豪勢に行こう!」
「やった!俺ハンバーグ!!兄さんもハンバーグ好きだし」
「よし!頑張ってこねるか!」
「目玉焼きとチーズも!」
「はいはい。じゃあ、セイはコウさんと一緒に肉確保お願いね」
「え・・・コウさんと?」
「お願い。連れていってあげて」
「えぇー・・・」
上手く不安を切り替えた真下家と違い、敬愛する師匠に置いていかれた(自称)愛弟子のコウは今だ立ち直れず虚ろな目で庭の草むしりをしている。
「あのねコウさん、さっきも言ったけどシュウはコウさんを危ない目に合わせたくなかったんだよきっと」
「それは、私の力が不足しているという事なのでしょう。一人前と認識していたのは私だけだったなんてなんとおこがましい事を私は思っていたのでしょうか。きっとシュウ様もそんな私に嫌気が差して・・・」
「あ、あれだ!俺が弱いから『母様を頼む!』みたいな感じで残したんだよ。ほら、あの子マザコンだしさ」
「セイ様もいるのに?私なんて足元にも及ばないのに?必要なのでしょうか?」
「ぶっちゃけいらないね」
「うあぁぁぁぁぁ!!!」
「セイ!大丈夫!少なくとも俺はコウさんいてくれてすごい心強いから!ね?それでね、強いコウさんにはお肉を獲ってきて欲しいな。お願い!」
「・・・分かりました。少しでも力になれるよう尽力してきます」
「いってらっしゃい」
セイとコウが夕飯用の食材確保に行っている間、亘は掃除や洗濯、畑の水やりを終わらせる。2人が帰ってきた後は全員で解体&ミンチ肉作りからのこねてこねて成形しての作業を繰り返す。
そうして下ごしらえが出来た頃、シュウだけが帰ってきた。
呑気に『ただいま~お腹空いたよー晩御飯なに??』と話すシュウはいつも通りの様子で、数時間前にセ戦地に赴いたとは思えない。
亘たちはシュウの体を隅々まで傷がないか確認して、無傷だと理解出来てやっと安心した3人は泣きながら抱き着いた。
その夜、皆でハンバーグを食べながら聞く話によれば、魔族領について早々、魔王城を目指したシュウたち。1階から攻めるのではなく、最初から最上階窓を突き破る先制攻撃で制圧に成功した。
「わりとあっさり片は付いたんだけど、その後こちら側の要望を受け入れてもらうのに無駄に時間取っちゃってこの時間になっちゃった」
「拒否られる要望ってどんな無茶ぶりしたんだよ」
「そんな難しい事言ってないよ。『新魔王になって!』って言うから『無理。魔王って終身雇用じゃないし、最高責任者を経験していると転職もしづらいし嫌』って。納得してもらうのと就職先を斡旋してもらうのに時間取られた」
「ファンタジーな世界観をぶち壊すなよ。まさか向こうもそんな理由で断られるとは思わないだろうね」
「『はろーわーくって何?』って言われた」
「だろうね」
「それでね、色々そこで話したんだけど、まず僕が向こうを知らなさすぎるから就職は厳しいって言われて」
「まぁ、確かにね。向こうの流通貨幣すら分からないしね」
「それでね、母様。ニルギルとも話したんだけど僕、学校に通いたいんだ」
そう言うと、朝と同様真剣な眼差しで願書を差し出すシュウ。
「特待生を狙うから学費はそんなにかからないと思うけど、それでもお金はかかると思う。ごめんなさい」
「そっか」
「無知のままじゃ、起業しても成功しないと思うんだ。だから、お願いします」
「シュウが決めた道なら俺応援するよ。お金は、まぁなんとかするから気にしないの!だから、頑張れ」
「ありがとう!」
進学希望のシュウを反対する理由が亘にはない。亘自身、親から身の振り方を反対された事がない。そんな子供のやりたいことは応援する方針を亘も取りたかったのだ。
編入生として通う事となったシュウ。
森に引きこもっていた世界から大きく羽ばたく。
「ところで、尊君たちはどうしたの?」
「あっ、忘れてた」
「敵地ど真ん中に!?早く連れて帰っておいで!!」
セイもそのうち学校に通わせたい。けど、進学先がなかなか決められないです。




