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第10話 「変化」

 扉の奥から聴こえるレインの声。


「ライくん、朝わよ」


 透き通るように響くのが特徴的だ。

 返事を返そうとするも、躊躇なく開けられ、その機会を無くす。


「……おはよう」


 申し訳なさが残る中、オレは朝の挨拶をした。

 頬を紅潮させるレインは、口をパクパクさせながら、分かりやすく狼狽する。

 オレの恰好がいけなかった。


「着替えてるのならさきに言って! ライくんの変態!」


 扉を早急に閉め、上擦った声で叫ぶ。


「いや、レインがすぐに開けるから……」

「寝てるのかなと思ったの、今日はゆっくりしてられないじゃない?」


 吐息を吐き切る音が聞こえてくる。


「修行、頑張りましょうね」


 冷静さを取り戻した彼女は、先にリビングへ向かってるわ、と言葉を置いて、廊下を進んでいった。

 ふと、視線を巡らす。

 白のカーテンが風に靡く、どこかジアーツ家を思い出す一人部屋。

 ベッドに机、クローゼット。その中には服――レインが選んでくれたらしい――が入っている。今、アザー副団長に部屋を貸してもらっている、ここはアザー邸。

 幾度の危機を誰かに助けてもらうオレは強運の持ち主なのかもしれない。

 いや、幾度の危機を自分で乗り越えられない弱者に過ぎないか。

 しかし、それを払拭するためにここへいるんだ。

 今日から、オレはムシャドーさんと修行をする。

 聞きたいこと、知りたいことが山ほどある。

 光翼団に入るために、この機会は無駄にしない。




 アザー邸の庭にて。


「まず、修行を始める前にTRを測っても良いかのう」


 右手を差し出し、レインからTR計を受け取るムシャドー。


「もちろんです」


 師匠から渡された時、灰色に変化した水が指し示していた数字を雑にだが見てしまう。


「TR五十九……⁉」


 驚愕した。

 高すぎる。

 これが師匠のTR……。

 確かに、オーラグレイさんやモナさん、カルガよりも強い事は分かっていた。

 逆算して、オーラグレイさん五十七、モナさん五十三、カルガ五十二という所だろうか。

 TRもとい天術が強さの全てに直結するとは思っていないが、これも立派な指標。

 これに技術や経験などが加えられれば、もう勝てぬ相手などそうそういないのではないか。


「ムシャドーさんは、イスタルクで三番目に強いとされているのよ。数少ない零世代の生き残りであり、今はなき最強部隊の特別作戦部隊、通称『村雨(むらさめ)』の三代目隊長でもあったの」

「ただの老いぼれじゃ、若者の方が勢いはあろう」


 感嘆の息を吐くと同時に、謙遜する師匠をまじまじと観察した。

 鍛え上げられた体に、狼のような鋭い眼光、そして常時刀から離さない左手。

 いつでも臨戦態勢にいる師匠は、アザー副団長が傍に置きたくなるのも無理はない。

 それ程に安心感があった。


「どう?」


 耳に髪をかけながら、顔を近づかせるレイン。その問いに、何をと聞きかけ、自身の手に目線が向いてる事で、TRの値を訊いているのだと気付く。

 視線を落とすと、測りはもう結果を現わしていた。


「TR……八!」


 シル滞在時、オレは確かTR二だった。

 そこから、一か月で約六近く上がったのか。確実に強くなってる、その実感だけで心は満たされた。

 しかし、二人は懐疑的様子で己と測りを交互に見るようだった。


「八? 嘘ではなかろうな」

「そんな訳ないわ」


 ムシャドーとレインは、真実か疑う。


「なんで?」

「どういうことかしら……」


 自身の疑問にも答えず、独り言を呟くレインと、顎に手を当てて思慮する師匠。

 己の計測ミスを危惧して、TR計を渡し確認してもらった。片眼を閉じて、平行に数字を見定めるレインだったが、師匠に向けて頷いたという事は八で間違いなかったのだろう。


「あれ程の実力を持っていながら、TRが八なんて……」

「あれ程の実力?」

「ライくん、【巡鎧纏(じゅんがいてん)】は出来るわよね」

「まあな」


 レインの意図する事が分かり、淀みなく自身の知識を明かした。


「でも、TRは目安だろ? 確実に十を超えるという事はないんじゃないのか」


 カルガが言っていた。TRが十を超えると巡鎧纏を習得または使用できると。でもあくまで目安であると。


「そうだのう。だがな、それではレインと戦闘時の実力と乖離が生じるのだ。お主が強すぎる事になろう」


 理解不能に陥る。TRが実力相応よりも下回っていて、なぜ強さの評価が上がるのか。


「君は、天術に頼らず、大部分を己の力で戦っていたという事になるのよ」

「なるほど……」

「確かに、ライくんの巡鎧纏は荒かったわ。しかし、天術の練度がここまで低い状態で、あそこまでの実力を誇るのなら……」

「凄まじい才能だろうのう」


 少しの戸惑いと感心を見せるレインを前に、オレは苦笑した。

 凄まじい才能だのと言われても、驕れる要素は何もなかったからだ。

 少ない時間の中で、オレは多くの強者に出会ってきた。

 ジアーツ家の皆々、アザー副団長に師匠、そして眼前のレインもその一人。

 なぜ、そこまで動悸を崩すのか、自身の頭は簡単に理解を示さなかった。


「要するに伸びしろがあるという事ですか?」

「まあそういう事じゃな」


 軽く頷いたムシャドーは、背を向ける。


「ライよ、存分に強くなれ。わしがお主を力の限り叩き込んでやろうぞ」

「ありがとうございます」


 熱意に満ちた振る舞い、今までそうではなかったとは言わないが、これまで以上に師匠は積極的となった。


「では、ついてこい。修行を始める」


 こうして、オレの新しい生活は始まった。




 オレの言い渡された課題は三つ。

 巡鎧纏の練度が低い事。

 防御が疎かな事。

 決め手にかける事。

 解決するために師匠は、こう言った。

 素の身体能力を上げろ、と。

 しかし、オレの身体能力は元から非常に高かった。

 レインと互角程度に。

 天術抜きの戦闘に限りだが、レインとの今の実力差は経験と知識ですぐに埋められる程度だと。身体能力だけで見れば、レインとオレは互角に近いと師匠は語った。

 だが、重要なのはやはり天術。天術抜きで戦ってくれる物好きなど、どこにもいない。

 そのくせして、天術に関して問題点は多かった。

 まず、オレの巡鎧纏はほぼ機能していなかった。風式を上手く体全体に巡回できていなかったらしい。身体の硬度は上昇していたが、身体能力は何ら変わりなかった。

 これによりTR計は、【巡鎧纏】未習得の八を現わしたのだ。

 そして、レインとの戦闘にも辻褄が合う。

 オレのアドバンテージは、風式が使える事と体が硬くなる事しかなかった訳であり、その他を全て自分自身で補っていた。だが、巡鎧纏が使えたとて、天術無しのレインに勝てるとは到底思えないが。

 加えて思う事もある。オレは、最初の巡鎧纏だけは成功していたのではないかと。でなければ、ハンスの攻撃を素で避けた事になる。それは幾ら何でも己が異質な対象となってしまう。

 皆を救えなかったオレが、そんな訳はないのだから。




 修行が始まって五日目。

 今まで身体能力を上げるため、走り、登り、泳ぎ、跳び、と様々な事を行ってきた。微々たるものだが、成長を感じている。

 その結果、ついに次の段階を踏める事となった。


「ライ、今お主は二つの課題を一気にクリアできる状態にある」

「二つ……」

「そうだ、巡鎧纏と防御の荒さ。これらをな」

「どうやってですか」


 師匠は、手に持つ木の棒を投げてきた。

 少し反り返る形状、木とは思えぬ程の滑らかな表面。

 木刀か。


「その木刀と巡鎧纏を駆使して、わしの攻撃を止めてみよ」


 師匠の木刀による攻撃を往なすために、巡鎧纏で身体能力を向上させ、結果的に防御の欠点を無くすという事か。

 一石二鳥。


「分かりました。いつでもどうぞ」


 両手で木刀を構える。

 粛然と見据える師匠が翳り、ハンスの面影が映りゆく。

 震える手を抑え、足を広げた。


「恐怖に負けているようじゃ、わしの攻撃は防げんぞ」


 木と木が弾く音。

 ではなく打撃とえずく音が寂寥にも響き渡った。




 夏。

 暑さを与える太陽は、ゆらりと己の活力を奪っていく。

 地面が揺らいで見えるのは、陽炎の所為か、はたまた眩暈であるか分かり果てぬ。

 木にもたれ掛かり、陰で涼む時間は、昼の休憩しか取る事は許されていない。

 未だ、攻撃を受け切れないオレは痣だらけになりながらも、アザー部隊の隊員グラン・ジオという男に【戦復】で回復させてもらい、毎日修行に勤しんでいる。


「師匠、昼ご飯なんですか?」

「わしも知らぬ。いつも通りキジが持ってくれるだろうのう」


 お腹すいた。暑い。


「ほら、来たぞ」


 視線を上げて、アザー邸の方向を注視する。

 小走りで駆け寄る……銀髪の少女。

 あれはレインだ。

 今は八月。

 天術学校筆記試験の結果はもう出ており、彼女は堂々の一位。

 残るは実技だけだったが、ここ最近に行われた。イスタルク天術学校本学での受験によりレインは、一週間前から留守にしていたのだ。寂しく思っていた所だったが、予想よりも速い帰宅に胸を躍らせる。


「ライくん! ムシャドーさん!」

「無事かのう」


 師匠が歩み寄ったのが視界に入り、慌てて立ち上がる。


「はい!」


 彼女の服装を見て、言葉を無くした。

 結果を知りたいという欲は、鳴りを潜める。

 白シャツに赤のネクタイを結び、その上に黒のブレザー。盛り上がる胸に勲章を付け、下は黒のスカートとタイツ。極めつけは、光沢のある革ブーツ。


「その服を着ているという事は、祝っても良いのかのう」

「はい、首席合格しました」

「おお、それは良かった」


 これは、アザー部隊の服装。首席合格の特権により、希望の部隊に配属される事となるが、レインがアザー部隊を希望するのは考えなくても分かる。

 しっかり着こなす彼女に見惚れてしまった。

 異常なほど似合っている。

 身近な感覚が遠ざかり、逆に憧憬と寂しさが押し寄せてきた。

 もう同じではないのだ。


「どうかしたかしら?」

「いや……」


 憂慮した様子で覗き込んだレインに目を逸らしてしまう。


「ほれ、何か言わんか」

「……おめでとう。レイン、隊員」

「ありがとう、ライくん」


 レインは、抑揚のある口調で感謝を述べられた。

 すると、小声で『よっし』と一言。気合いを入れて、師匠と向き合った。


「それでお願いがあるんですけど……」

「ほう、何でも言え」


 体を縮こませ、恥ずかしむ態度でレインは口を開いた。


「ライくんを今日だけ貸してくれませんか」


 手を擦りながら上目遣いをしている。

 何とも首席合格した者とは思えない。そんな様子に拍子抜けた師匠は、豪快に笑い、腹を押さえて許可を取った。


「うむ、よかろう。二人で好きに遊ぶとよい」

「やったわ!」


 綺麗に整わせた髪へ気遣いもせず、勢いよく振り返って自分を見た。

 満面の笑顔に戸惑いが残る。


「何するの?」

「街へ出ましょ。私に付き合って」


 手を取り合って。


「デートよ!」


 無理半ば連れられて。

 体は正直者だというが、心は天邪鬼だと言うべきではないだろうか。

 そうではないと理解出来ないのだ。面倒くさいと思う自分が笑っている今の状態に。




 整地された道を馬が駆ける。

 手綱を引くオレの後ろに、横向きで足を揃えたレインが乗っていた。


「乗馬できるようになったのね」

「ああ、師匠に教わった」

「上手いわ」


 そんなお世辞かと疑わしい言葉に、会話を繋げ、風だけを切っていく。

 街までは、そう時間が掛からなかった。

 喧騒と活気に溢れる光景。

 埋もれるほどの人の数。

 流石、光翼団総本部を構えるサフェンス。

 シルも凄かったが、ここもまた栄えている。

 またシルと違うのは、地方の特産品や異国の文化が多く混在している所だろうか。

 これは楽しそうだなと思う反面、掻き分けて進むにも一苦労しそうなため、商店街を前に辟易とした部分もある。


「ライくん、そっちじゃないわよ」


 レインが迷いなく進んだ先は、町外れ。

 自分の安堵の気持ちを余所に、レインは弾む足取りで閑静に身を包んだ店へ入っていく。お洒落な外観は、いかにも女子が好きそうであった。


「ここ一度来てみたかったのよ」

「一人では?」

「誰かと行く方が楽しいでしょ」

「それもそうだな」


 メニュー表を広げて、何を頼むかと聞こうとした時、奥から聞き覚えのある声が届く。

 楽しさが一気に消え失せた。

 忌避してしまう言葉と声音の所為で過去が思い出される。


「お姉ちゃん、可愛いね」

「あ、ありがとうございます……」

「俺さ、兄がお偉いさんなんだけどさ。今日遊べるかな」


 レインに断りを入れて、立ち上がった。

 憎き顔に覚えがある。あいつは、ホルンに告白を振られて、腹いせに試験を落としてやるだの最悪な言葉を吐いていたのだ。

 ここでオレと出会うか。

 他の女性にも詰め寄って何するつもりだ。

 彼の目の前で立ち止まる。

 ようやくオレの存在に気付くも、払い除けるように手を動かした。


「誰だよ、あっちいけ!」

「前もそう言ったな」


 怒りで血が上るのを感じながら、思う限りの力で彼の腹を殴った。

 悲鳴を上げ、膝から崩れ落ちる奴。その横で拳を突き出している者がいた。

 この人も殴ったのか、しかも同時に。

 目が合い、自然と会釈した。


「あなたもこいつに恨みを?」


 返答は早かった。


「ああ、大嫌いだ」

「それは気が合う」


 短髪な彼は、緩く笑った。


「俺はジロックだ」

「ライです」

「よろしく」


 手を交わす。

 大人びたその姿は、教育の賜物だと感じ取れ、高貴な生まれなのは一目瞭然だった。どこかカルガと同じ雰囲気を醸し出している。

 別れを告げ、席へ戻ったオレにレインは食い気味に誰なの、と聞く。

 欲を我慢しきれなかったオレは、その後全てを話す事となった。




 片手に持つ頼りのない松明だけで、暗然な夜道を歩いていく。

 馬は、街の前で止めてある。そこまで行けばすぐに帰れるはずだ。

 肌寒さが残る風が、二人の少し空いた間を抜けていく。

 微妙な距離感を気にする二人の想いを感じ取ったかのように。


「ありがと、楽しかったわ」

「そう、ならオレも付き合った甲斐があるよ」

「ねえ」


 後ろで手を組む彼女は、自身の足先を見て言葉を発した。


「デートだけじゃ少し物足りないわ」


 一瞥した玲瓏な瞳に、負けを認める己はその他諸々に対して嘆息を零す。

 首席合格の祝いとしては少ないのだと言いたいのだろう。


「また、二人でどこか行こうよ」


 そうとしか思いつかなく。


「そうね」


 とだけ返されて。

 僅かな沈黙。野良猫の鳴き声が、静謐さをより搔き立てる。


「願い事ある?」


 どことなく空を仰いで訊いた。

 会話が続かない、そんな気まずさを脱却しようと雑に話題を振ってしまう。

 もう止まれないと思い、自分が先に口を開けた。


「オレは、戦争のない平和な世が広がってほしい」


 私はね、と一拍待って。


「君を煩わせるのが私だけになってほしい」

「え?」


 呆気に取られ、その場で凝然としてしまう。


「いや、やっぱり忘れて。少しお酒入っていたのかもしれないわ」


 頬に手を当てた彼女は、顔を隠すように急遽前を向いた。

 言葉が繰り返される。

 ――君を煩わせるのが私だけになってほしい。

 刹那、茶髪の少女が横切った。ホルンに酷似した少女が。

 目線を追いかけようとする思考を排除するため、頭を横に振った。

 もう居ないのだ。

 幻覚なんだよ。

『何が起こっても二人を助けるよ』

 そう口にした約束は、果たせなかった。

 彼女をもう一度見る。転がる石を蹴って、とぼとぼ歩いていた。

 約束したってオレは守れない。

 それでも。そうだとしても。

 誰かに縋りたい気持ちは、未だ残っていた。


「なら、一生傍にいてくれ。もう嫌なんだ。誰かが居なくなるのが」


 さらりと横目で見据えた彼女は、仄かに微笑み、右に一歩距離を詰める。

 肩が当たる程度、服が掠る程度。


「居るわ、ずっと居るわ」


 空いた心の穴埋めになったとは言わない。

 だけれど、無くすことが出来るのだと知る事で救われた自分も、あの時は居たのだ。




 草原を踏む音が近づいた。

 座っていた私が振り返ると、真っ直ぐした眼差しで副団長は、木刀を振り合う二人を眺めていた。瞳に誰かの面影を重ねながらも。


「やってるな」

「ええ」


 仕事に区切りをつけて来たぞという雰囲気を出しているが、顔は仕事を疎かにした背徳感で一杯だ。この人は分かりやすい。

 ライが吹き飛ばされる。

 痛々しい様子に目を眇めながらも、彼の勇姿を毎日のように眺めていた。

 倒れても立ち上がって。木刀を構えて、また倒れて。

 無数の打撲の痕が残すも、努力を怠らないその強さ。

 彼の真っ直ぐさに、私共々皆が惹かれた。


「やれやれ、面構えが随分と変わった」


 腰に手を当てるアザー副団長は、納得の笑みで幾度も頷いている。


「逞しくなられましたね」


 未だ成功しない完全なる防御。

 ムシャドーさんが、右に振り下げる木刀を、半身にして避けたライくん。しかし、途中で止めた木刀を横に再度振り抜く荒業を見せられ、彼は為す術なく吹き飛ばされた。

 転がる中でも、しっかり受け身を取り、木影に隠れつつ体勢を整える。

 上手く障害物を利用して、ムシャドーさんに近づいた。

 防御か攻撃かのどちらかを成功すれば良いというルールが追加され、ライくんは動きや戦略の幅も高めていく事になった。

 しかし、不意打ちも届くわけがなく、木刀が弾かれる。

 その勢いを利用して、ムシャドーさんは下へ振り抜いた。

 何とか半身で避けた彼に、ムシャドーさんは愉悦を見せる。

 途中で止めた木刀。

 そのまま、彼が居る方向に振った。

 ムシャドーさんは、先と同じ戦法を駆使する。

 その直後だった。


 カーン。


 耳へ心地良く響いた音は、防御成功の合図には相応しかった。

 二度目は食らわない、彼の読みと執念が連れて来た結果だった。

 ようやく修行が終わった事に、最大限の喜びを表すライくん。

 そんな彼を見て思う。


「変化って尊い」


 と。

 彼は更に次のステップを踏む。

 私も進まなきゃとそう思わせてくれる存在。

 心に生まれ始めるは私の――、

 変化。


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