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英霊が来る 〜記憶無き青年の冒険譚〜  作者: 大和あゆむ
第2章  『成長』

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第11話 「共通点」


 自身の身体能力だけでは師匠の攻撃を防御しきれなかった。

 重い上に、太刀が見えなかったのだ。

 (じゅん)(がい)(てん)を完璧なるものにするしか方法はない。

 そう思っていたのだが、結果は違っていた。


「確かに巡鎧纏は上手く出来ている。しかし、それが最低条件なだけで簡単に防御させてもらえる訳なかろう」


 巡鎧纏をものにしても、師匠の攻撃を往なす事が敵わなかった。


「天術なしの老人の一発も止められぬようじゃ、首席など程遠いぞ」


 初動が視界に捉えられない。腹に衝撃が走り、飛ばされた事で突きを受けた事が分かる。

 確かに、巡鎧纏によって身体能力は向上した。その前の修行も合わせて、比べ物にならないほど動けるようになったと自負している。

 だがしかし、遠い。

 身体能力だけでは防御など不可能。

 防御を成功するには、攻撃の先読みが大事だ。

 立ち上がった瞬間、師匠は目の前で構えていた。

 瞳に映る、上げられた木刀とその手。

 予測される動きとしては、左上からの振り下ろし。

 だったらと、半身にする。

 咄嗟の読みにより、木刀は空を切った。その後、途端に止めた木刀を横へ再度振り抜く荒業を見せられ、吹き飛ばされるのだが。

 一手先の読みでは意味がない。二手、三手先の読みを。

 物陰からの急襲は簡単に弾かれた。これも読んでいる。

 上からの太刀。これも読んでいる。

 途中で止めて横に振り抜く。

 ――これも読んでいる。


 カーン。


 両者の木刀が響き渡る音を聞いたのは、初めてだと。そう思う程に長く、辛い道のりだった。

 師匠の攻撃を防御した。

 ようやく次にいける。もっと強くなれる。

 そう思っていたのに……。


「ライくん! 聞いてるの?」


 ――オレは今、座学を受けていた。


「聞いてるよ」


 なんだって勉強しなきゃならないんだよ、そう独り言を呟く。

 アザー邸の一室。そこには、不思議なことに黒板と椅子があった。昔、大人数の誰かを教えていたかのように。

 勉学に無関心なオレを見て、レインは分かりやすくため息をついた。


「第一次試験、落ちてもいいのかしら」


 座るオレの目線と彼女の胸が同じになる。それ程に前のめりとなったレインは、言葉を浴びせた後、人差し指で己の鼻をつついた。

 こうも教師のような態度を取るのは、筆記試験の受験対策をレインが担当する事になったからだ。これが教師の姿なのかどうか、オレには定かではないが。


「真面目にやるよ、真面目に」

「不貞腐れが抜けてないわよ」


 肩をすくめた彼女は、耳を引っ張ってくる。

 痛い、痛いのやめて。


「や、やります! やらせてください!」

「うん、よろしい」


 数回頷いたレインは、満足した様子で黒板へ戻った。

 背を向ける彼女の肩が少し揺れ、笑う声が漏れる。

 レイン、コワい。


「気を取り直して、やっていくわよ」


 何処かで拾ってきた木の棒を使って、説明してくれる。


「零世代、この言葉に聞き覚えはあるかしら」

「ある、シルで何度も聞いたよ」

「先に言っておきましょ、零世代とは、初代光翼団(こうよくだん)と並ぶ強さを持った世代。ゲレン・ジークリアが光翼団団長へ就任し戦死までに入団した者が零世代に該当するわ」

「意外と長いんだな」

「ええ、それくらい長い間に強者が集結したの世代なのよ」

「強かったんだな」

「強いってものじゃないわ。例えるならば……」


 外の景色を除いてレインは、口にする。


堕天軍(だてんぐん)を除く現代全員の天術者と、零世代の光翼団が戦えば零世代が勝つ。それ程によ。兵力にどれだけの差があろうと、個々の力には及ばない。実際、当時のイスタルクは、今よりも二倍以上の国力を持っていたわ」

「嘘だろ……」

「ムシャドーさんに色々聞くと良いわよ。あの人すら同年代で一番じゃなかったんだから」

「零世代の顔となる人物は?」

「三英傑ね。団長ゲレン・ジークリア。副団長エイス・ファースト。そして開発者イヴィレータ・ノロジー。この三人の残した功績は計り知れないわ。ライくんのネックレス」

「ん?」


 目線を落とす。きらりと光るその菱形の水晶。これを手に持ってレインの話を聞いた。


「それは、文明の英雄イヴィレータと一番弟子の共同で作り上げた物。名称は『声鳴(せいめい)』。なぜ君が持っているのか分からない程に高価で貴重よ」


 驚愕して、即座に離してしまう。落下する水晶が、繋がれた鎖を経由して首に小さな衝撃を与える。

 反動で呑気に回る、このネックレスが……。

 貸して、と言いつつ彼女は水晶に触れた。白き揺らぎ【揺灯(ようとう)】を纏いながら、優しく撫でる様に。

 ゴロロロロロロロ。

 すると、レインの内ポケットから同じ水晶『声鳴』が現れた。

 音は件から。水晶の中で鳴りを潜めた光が微小ながら点滅している。

 再び、彼女は自身の物に【揺灯】を灯した。


「『もしもし?』」

「え?」


 声が二重に聴こえる。

 一つは、レインの口から。

 もう一つは、己が持つ水晶から。


「これはね、音声を他の『声鳴』に伝達する機能があるの。便利でしょ?」

「ああ、凄い!」

「これには、三英傑全員が関与してるのわ」


 非常にわかりやすい例え。

 開発者のイヴィレータと、一番弟子は只ならぬ者だったのだろう。それに加えて、三英傑が関与しているとは、どの分野にも精通しているという事か。


「レインはなんで持っているんだ?」

「それは……副団長に貰ったのよ。あの人がアザー部隊の全員に配ってあるんだから」


 副団長となれば、相当な財力の持ち主なのだろう。

 零世代の代物でも、簡単に手に入れられるのか。


「脱線したわね。どこまで言ったかしら?」

「三英傑」


 視線を教科書に移し、レインは文章を読み上げる。


「そうね、三英傑。そんな三英傑を含めた零世代最強の七人を人々はこう呼んだ。七景惨しちけいざんと」

「七景惨……」

「七景惨は、今も使われているわね。でも現代では、光翼団だけではなく他国も合わせた最強の七人の事。まあ堕天軍は入れられていないのだけれど」


 この情報は、公平新聞が出すために、潜入できない堕天軍は強さが測れないらしい。幹部の光断者が七景惨に入るのなら上位だろうというのは、レインの見解だった。

 しかし、これだけで零世代の異質さが分かる。

 初代七景惨は、零世代の光翼団七人から選出。他国と圧倒的な差を開いていたという証拠に十分成り得る。

 では今のイスタルク、光翼団はどうなのだろう。

 期待と不安の狭間で問う。


「今の光翼団は……?」

「五位と七位がいるわ、一人は光翼団団長サルビア・ビテン」


 流石団長を務めるだけはある。


「そして、もう一人は光翼団副団長アザー」


 まあ、そうだろうと思っていた。


「驚かないのね」

「まあ強いと思っていたしな」


 アザーさんが世界で見ても強い事に安心した。これ以上の強者がうようよ居るとなると堪ったもんじゃないからな。

 あと、何気に今気付いたのだが。師匠にアザーさん、街の本部にサルビア団長がいるサフェンスは、イスタルクで最も安全な場所なのではないか。


「あの人は、他の七景惨と比べて特段TRが低いわ」

「それでも、七位は凄いよ」


 数回の瞬きを終え、レインは苦笑する。


「――いや」

「クッ――」


 頭痛が走った。

 頭に違和感が生じ、街の方から殺気の気配を感じる。

 これは確実だ。今までよりも明白に。

 体幹が上手く取れず、椅子から崩れ落ちる。抱えてくれたレインが苦悶の表情を浮かべていた事で、自身の状態が最悪であると間接的に気づいた。


「誰かが来る……!」


 少し残る痛みを振り払いながら、立ち上がった。


「ほんと⁉」

「ああ」

「レインです。北方に敵を確認しました」


 握り締めた水晶に白き揺らぎを加えて、レインは叫んだ。迅速な対応を見て、場違いにもレインは光翼団に入ったのだなと痛感した。

 痛みで再度顔をしかめる。

 シルではこれ程の痛みを伴わなかった。

 天術を鍛えていく分、頭痛と人の気配に敏感になっているのか?

 一体どうなってる……。


『丁度僕が向かってる』


 副団長の声が途切れたと同時に、何人かの悲鳴が間に入ってくる。

 現場に副団長が向かった事への安心と、少し声に怒りが含まれていた事への不安がレインと目を合わせるに至る。

 彼女が頷いたと同時に、二人は駆けた。




 アザー邸の庭を抜ける時には、薄氷が地面を覆っていた。

 滑る足取りに気を付けながら、更に進む。

 街へと続く一本道。それが、随分開けた場所へと変わり果てていた。

 耐寒があるオレですら少し凍える。

 一言で表すなら、氷の世界。

 鋭利な氷が地面から厳然と屹立し、その中で人が凍結している。

 一つの景色に戦慄して、視線を彷徨わせる。

 倒れる人々、ざっと百人。

 立つ人、たった一人。

 金に染まる髪へ氷を張らせ、背を向ける男。

 手には刀を、隣には氷の矢があった。

 あれは……。


「さっきの続き、七景惨しちけいざん五位は……」


 レインは何食わぬ顔で授業を再開した。


「アザー副団長よ」


 まあ、そうだろうと思った。

 戦闘によって景観すらも変えてしまう程のいい加減な力。

 強さが隠しきれていない。


「景色が何とも凄惨だな」

「それが由来だもの。七景惨しちけいざんの」


 振り返ったアザーのその眼に、憤慨が潜んでいる事は誰から見ても明らかだった。




 一人を連れてオレ達三人は、アザー邸へと帰宅した。

 扉を開けるや否や、投げ入れて詰め寄るアザー。

 それは、いつもの様子と乖離していて、止める訳にもいかなかった。


「何のためにここを襲った⁉ 吐け‼」

「ひぃいい」


 眼前の恐怖に怯える奴は、手を震わせて情けない男だった。

 それがまたオレを懐疑的にさせる。

 嫌疑するのも分かるが、ここまで戦闘意志のない者が襲いに来るのかと、そう思った。何か事情があったんじゃないかと甘い言葉が頭を過る。


「やらされたんです……」

「誰にかって聞いてるんだよ!」


 胸倉を掴んで問い詰めた。


「アザー、落ち着いて」


 敬称を捨てたレインを一瞥し、悩んだ末に手を離した。

 アザーは嘆息を零して、冷静さを取り戻そうと懸命する。


「誰か分かるか?」

「わ、わかりません……紫のマントを羽織った赤髪の男でした。ただ、『社長』と言えば相手は分かると、それだけ」


 舌打ちした彼は、背を向けた。


「そうかよ」


 表情を隠そうとするその素振り。十中八九、赤髪の男について心当たりがあるのだろう。

 腕を組んだアザーは、俯き黙然とした。


「殺すんですか?」


 しかし、それも破られる。

 奴は、煽るように口の端を吊り上げた。


「ああ?」

「俺を殺すんですよね」

「そんなこと……」

「殺すならもういいや」


 自ら火を付け直す奴の行動は、不可思議なもので到底理解に苦しんだ。

 だが、分かったのは死んだ目が生き返った事だけだった。


「確かにやらされたとも言えますが、決断したのは自分です。俺はこいつを殺すためにここに来た」


 憎悪を灯した声と目と指が己を襲う。


「ライくんを⁉」

「なぜこいつが生きてるんです。シルの唯一の生き残り? ふざけんじゃねえぞ‼」


 怒声は思った以上に鋭く、心が傷つくその瞬間は、やはり慣れるものではなかった。

 知らぬ内に後退りしていたらしく、レインの肩とぶつかる。


「我らの恩人オーラグレイ様が死んで、何故お前だけが生き残ったか説明しろよ! どうしてだ!」


 分かってるよ、もう何度も自分に説明した。


「一人で逃げたんだろ。逃げて良いとなぜ思った? お前が代わりに死ねよ、逃げる暇あったんなら盾にでもなれ! この役立たず!」


 そうしたかった。出来るならしたかったさ。でも、出来る力も勇気も本当はなかったんだ。


「お前、なんて言われてるか知ってるか? 堕天軍の回し者だよ」


 オレが来て実際堕天軍の襲撃は増した。そう捉えられてもおかしくない。


「お前が殺したんだ、ジアーツ家全員をな」


 オレがジアーツ家を殺した、か。

 そう何度も思ったな。

 刹那、轟音が鳴り響き、レインの足が上がっている事だけに気付く。

 男は、壁に衝突し頭から血を流していた。


「私ダメみたい、このままだとこいつを殺してしまいそう」


 震える声を施す彼女は、オレのために激昂した。

 今日は、様々な人の見知らぬ顔を見る。

 ここで何かが変わるのだとしたら、オレしかいない。

 死を想起させる、そんな一歩を踏み込むレインに追いつき、頭へ自身の手を置いた。


「レイン、大丈夫。オレは大丈夫だから」

「……ライくん」


 奴はオレの視線を真正面から受け止める。

 反省の色も、怯える様子もない。

 殺すなら殺せと口にはしないが、態度から指し示していた。

 尻餅をつく奴と目線を合わせるため、オレは屈んだ。


「あなたの言う事は間違っていない」

「そうか、なら死ね」

「すまない、家族に生きる証になってと言われたものだから死ぬ訳にもいかない」

「じゃあ、どうするつもりだ?」

「背負うよ。ジアーツ家も、シルに居た人達も。全部」


 淀みなく想いを言葉にしていく。

 これまで悩んで考えた、その答えを。


「命と責任を背負って生きていくよ」


 膝に手をつき、立ち上がる。

 ごめんなさい。あなたも辛いのでしょう。

 瞳が滲むほどの存在を亡くしてしまって。


「当然、あなたの分も」


 背負って戦いますから。

 扉を開けて、外へ向かう。

 誰も止める者も、声を掛ける者もいなかった。

 ただ、


「僕はどうすれば良いですか……エイスさん」


 アザーの独り言が耳に届いただけ。




 鳥のさえずりが聴こえる森の中で、オレは一人歩いていた。

 背負うなりの強さを早く手に入れないと。

 そんな焦燥感にかられつつも、思考に蔓延(はびこ)るはあの景色。

 刀を持つアザー副団長と地面に刺さった氷の矢。

 見覚えがある。

 あれは、ホルンに起こされ日の出を見に行く時。玄関前でこの矢は何なんだと訊いた、あの矢と瓜二つ。

 これから考えうるは、アザーがシルへ赴いていたという事。

 そして、繋がるはキジさんがジアーツ家に潜入していたという事実。

 それが何かの証明には成り得ないが、事実を繋げると見えてくるモノもある。

 キジさんは、オレが滞在する二年前から従者として働いていた。であるのなら、今からちょうど二年前の冬に何かがあったと考えるのは普通ではないか。

 アザー副団長を動かす程の何かが。

 だが、分からない。未だ掴めない。

 やはりハンスと会うしかないのか……。

 のうのうと生きる雑草を踏み潰す。

 すっかり思考に耽けていた。

 草が剥げて、赤裸々に地面を見せるこの場所。

 いつも自主的な訓練を行う場合には、ここへ赴いている。

 鬱蒼と木が生い茂る森の中で、一際目立つ断崖を見据えた。断層が灰から茶色に諧調している。

 胸を叩いた。

 逆手に持った木刀を、もう片方の手で掴む。

 手の先に風式を溜めて、構える。

 師匠の真似事だが、これを成功すれば奥義となるだろう。

 息を吐き切り、一拍。

 風を纏う木刀が、横に振られた。

 結果は火を見るよりも明らか。

 彼には景色を変えるほどの力は持っていなかった――。




 あれから一年が経った。

 第一次試験の筆記を終えたオレは、今実技に向けて最終調整を入れている。

 結果から言うと成績は二位だった。記憶のない無知な状態から始まったオレの受験勉強は、レインのおかげで曲がりなりにも順調さを極めた。十位に入れば、万々歳と思っていたが蓋を開けてみれば好成績。一問ミスでの二位を納めたのだ。

 しかし、結果を再度見ると余計に悔しさは残った。

 零世代での次期団長候補は誰だったか。この答えはルークであるが、オレは正解を導く事が出来なかった。頭から抜けたように、思い出せずに。

 こういう事が偶にある。

 だが、切り替えて今は目の前に集中しよう。


「ライくん、行くわよ」

「ああ」


 刀を鞘に仕舞う。

 手には白き揺らぎが微かに灯している。それを握り潰して消した。

 眼前の景色に愉悦を浮かべながら、踵を返す。


 ――断崖が切り裂かれた、その景色に。


 まさしくそれは、景色が凄惨だというに等しいものだ。

 共通点だともいえようか。

 勝利を心に掲げ、レインと共にサフェンスを出た。




「付き添わなくても良かったのに」


 引き綱を持ったオレは、後方で横に座るレインと言葉を交わす。

 街を抜け、次見えるのは目的地という所まで来ているはずだった。

 馬の体力も考えて、歩く程度に収めた今は雑談に花を咲かせている。


「いや、ライくんがいつ襲われるか分からないでしょ」

「いつの話をしてんだよ」


 正当なる返しをレインは無視して、前を指差した。


「あれ」


 目を細めて、先を眺める。森から抜け出して最初に姿を現したのは、巨大な湖だった。

 馬を使って、サフェンスから西へ一週間。長旅も終焉を迎えようとしている。

 大きな橋を目の前に、自身の鞄を漁った。

 並々ならぬ人の列の下、ようやく橋を取り締まる者達へ辿り着く。

 受験資格証明書――アザー邸に届いた物――を差し出して、入場の許可をもらう。

 木造で出来た橋を馬にゆっくりと歩かせた。


「凄いわね」

「ああ」


 巨大な湖の上に形成された石造建築物。いや城と言った方がいい。城壁が内と外を厳しく断絶し、突き出して見える塔には、見張り兵が何十人も控えていた。


「難攻不落の城って感じね」


 橋を渡り切ったオレ達は、門を潜り中へ入った。

 首が痛くなるほど高く造られた塔には、何故か睨まれているような感覚に陥る。

 広大に広がる建造物、ここが第二次試験の会場。イスタルク天術学校。

 若き者を大いに歓迎しようと、教員生徒共々が窓から顔と手を出している。

 そんな風景を義務的に流す自身の視線が、一人の少年を捉えてようやく止まった。

 あちらも気付いた様子。

 馬から降りて、歩み寄った。


「久しぶり」

「覚えていたのか」


 周りの視線を搔っ攫う。


「オレは記憶が良くてね。調子はどうかな」


 人への憶測が蔓延し、ざわつき出した。

 それは、


「ボチボチだな。筆記試験はどうだった、ライ」

「二位だよ、君の所為でね」


 それは、第一次試験の結果が配られたからだろう。

 鼻で笑う彼の挑発的な行為に、オレは応えるつもりだ。


「第一次試験首席であり光翼団団長サルビアの息子ジロックよ」


 彼には似ている所が幾つかある。

 それを今更に気付いた。


「勝負だ!」


 彼らは互いに笑う。

 鳴りを潜める過去が垣間見えたからだろうか。

 苦しく()()いた闇の、その――、

 共通点。


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