第023話
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「ガノン様、ただいま入った情報によりますと、無事実行されたとの事です」
「それは真か!?…よろしい、では第2段階へと移行するように伝えろ」
「ハッ!」
闇が支配する部屋にて、ガノンと呼ばれた男は静かに笑う。
「…よし、成功したとなれば後の準備もしなければならないな。となると…早くて3ヶ月後か。……忙しくなるな」
ニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、闇に溶け込むように静かに笑うのであった。
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「それじゃーまたなー!」
子供達と思う存分遊んだ俺達は、遅めの昼食を取る為宿へと戻る事にした。子供達は残念がったが、また来ると約束をし、孤児院を出た。
「とーってもみんな可愛かったですねっ!」
「みんな良い子だった」
「すっごく楽しかったー!」
チカ達は子供から大人気でずっと囲まれていた。おままごとしたり、本を読んであげたりと本人達も楽しそうにしてたので連れてきて良かったと思う。
「お前ら大人気だったもんなー。少し羨ましかったよ」
俺は男の子とばっかり遊んでいた。ボール遊びも楽しかったけど、ヒーローバトルなる遊びは物凄く楽しかった。
「アルス様は魔物役ばっかりしてましたね」
「そうなんだよ。アイツら勇者ばっかりでさー、俺本気で叩かれてたよ」
「でもダメージ受けて無かった」
「そりゃ何人も相手するからさ、一々やられてたら身が持たないよ」
「最終的にはご主人様が勝ってたね!」
「そりゃ、簡単には負けないさ。次もあるって思わせとかなきゃね」
「あの四天王とやらの件は素晴らしかったです!アルス様は博識ですね!」
…お決まりの『アイツは四天王でも最弱のー』って奴をやっただけだよ。そんな褒めないでくれ。
「あの話術は勉強になった。ボクも今度やってみたい」
「あたしもやりたーい!」
「ほ、程々にね?変な事教えないでね?」
これが後の面倒くさい事に繋がるとはこの時の俺は思いもよらないのであった。
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「ご馳走さまっ!…さて、ドーンとの約束まで時間あるけど何する?」
昼食を食べ終わった俺達は、夕方まで何をするかを相談していた。
「んー、ゴロゴロしたい気分ー!」
「木の下で昼寝したい」
「私もゆっくりしたいわ」
…3人とも何もしたくないって事ね。まぁ、気持ちはわかるけれども。
宿屋の裏側にある庭でゴロゴロしようかと考えていると、受付の方から大声が聞こえてきた。
「じゃから!!アルスがここにいるとコンラッドから聞いたんじゃ!あやつらは今どこにいるんじゃ!」
「ガンテツさん落ち着いてくださいよ…。いくらガンテツさんでも、お客様の情報は教えれないんですって!」
「ええい!融通の効かない奴め!ちったぁ、年寄りに優しくせんか!」
大声を上げているのはどうやらガンテツみたいだ。自分の事を年寄りとか言ってるけど、そんな元気なジジイは年寄りにでは無いと思うよ?
「ガンテツさん、俺ならここに居るよ」
食堂から声をかけると、ガンテツはこちらを荒々しく睨む。しかし、目的の人物が声をかけたと認識すると目付きは柔らかくなり、こちらへと向かってくる。
「なんじゃ。ここに居たんなら、あいつも教えてくれてもいーのにのぅ」
「守秘義務ってもんがあるんだよ。ここの宿は高級宿屋だからね」
「じゃがのぅ、ワシの事知っておるんじゃから教えてくれてもいいじゃろうに」
「それでもさ。ま、たまたま近くに居たから良かったものの、次からはさっきみたいな真似をしないでくれよ?」
「…仕方ない。ちゃんとすると約束しよう」
……絶対しないな。この言い方は完全に納得していない返事だ。
「はぁー。……んで?何の用?」
「ああ、あの剣について聞きたい事があるのじゃが……これから暇か?」
「んー……ゴロゴロする予定なんだよ。すまんね」
「つまりは暇という事じゃな?ならば、工房へと向かおうぞ」
話を聞かないガンテツに無理矢理連れられ、俺達はガンテツの工房へと向かう事となった。チカ達も俺が連れられて行くのを見て、心配そうに後を付いて来てくれる。ガンテツを攻撃しないのは、敵意が無いのと俺達と知り合いだからだろうな。
襟首を掴まれながら、俺達は工房へと到着する。今回は裏から回って来たので、他の職人には出会わなかった。
「さて、アルスよ。まず、お主に確認しておきたい事があるんじゃ」
俺の剣を持ちながら、ガンテツが尋ねる。
「分かる範囲でなら答えるよ?」
武器の設定とかでいいなら答えられる。作り方とかは無理だけどね。
「まず聞きたいんじゃが、この武器は戦士用ではないじゃろう?」
「いや?それは戦士用の武器だよ」
戦士職最強の武器だし、他のジョブじゃ装備出来ないからね。
「…ふむ。お主の格好を見る限りワシは戦士用の武器じゃと思っておった。じゃが、試しに知り合いの戦士に鉱石を切ってもらおうとこの剣を渡すと何故か持つ事が出来なかったのじゃ」
俺に柄の部分を向け、取るように促す。
「………しかし、お主が持つ事は出来るのじゃ。不思議な事だとは思わんか?」
「んー……その人が弱かったとか?」
思いついた事を言うと、ガンテツは苦笑する。
「…そやつはな、Bランクの冒険者なんじゃ。弱いはずがないのじゃ」
「あー…もしかしたら女性だったとか」
「お主よりも年上で男じゃ」
…んー、なんで装備出来なかったんだろ?剣の説明に書いてあるかな?
剣の説明画面を開き、スクロールしていく。ゲームの世界観を大事にしていたのか、前半部分は殆ど設定が書いてある。目的の部分は下の方に書いてあった。
「あ、これだ。…えーっと?『戦士職及び剣士職のLvが850以上無ければ装備出来ない。また、魔法剣士職も装備出来るがこの剣の持つ特性は相殺される』。……ははーん、なるほどなぁ」
「ん?何か分かったのか!?」
「この剣を持つには、純粋に強過ぎないと装備出来ないって事だ」
『Destiny』ではジョブ変更出来るし、クラスなんかもあったけど、この剣の場合は純粋に強くないと装備出来ないって事だな。極端に言えば、俺と同じ強さが無いと使えないって事か。
1人納得しているとガンテツが理解出来ないという態度で話し出す。
「は!?Bランクじゃぞ?…まぁ、お主の装備品を見る限りはアイツが下かも知れんが、それでもBランクじゃぞ!?」
「…正直Bランクの強さが分からんから、何とも言えないんだよね…」
ゲームだったら、あのモンスターをソロで狩れるとかで大体の強さがわかるんだけど、この世界では全く分かんないからなぁ。
「はぁ?お主、冒険者なんじゃろ?だったらどれくらい強いか知っておるじゃろ!?」
「俺達駆け出しだし、そこらへん全然わからんのよ」
呆れたように深い溜息を吐くと、俺達に教えてくれる。
「良いか?Bランクの冒険者とは1人で『ドラゴン』と戦う事が出来る強さじゃ。兵士団で考えると、3人組のBランクパーティで、およそ10師団分の強さじゃ」
んーーーーーーっ!!わかんねぇ!!そのドラゴンとやらも10師団分とかも分かりづらい!!
「…ごめん、全然分かんない」
「はぁ……。お主はよく冒険者に慣れたもんじゃな。……あ、そうじゃ。簡単に分かる物があったわ」
思い出したかのように声を上げると、近くにあった棚から拳大の鉱石を持ってきた。
「これは『金剛石』という物なんじゃが、これを切断するには技量が必要でな。安物の剣で2つに切る事が出来るのが、Bランクとしての1つの指標じゃな」
「なるほど。そっちの方が分かりやすい例えだわ。これを切れたら、強いって事なんだろ?」
「安物の剣で、じゃ。他にもアダマンタイトやオリハルコンでも分かるのじゃが、それを切るには金と覚悟が必要じゃからなぁ」
アダマンタイト…か。鉱石系は持ってた様な気がするなぁ。
「ふーん。それじゃこの金剛石とやらを切ればいいの?」
「何じゃ?切ってみたいのか?」
「うん。俺が切れたらその人と同じくらいの実力があるってわかるし、装備出来ない理由のヒントにもなるかも知れないしね」
「なるほどのぅ。確かにお主が切れなかったら、別の要因があるかも知れんし、切れたら切れたで実力が分かるからな。……よし、試してみるか」
そういうと、ガンテツは近くにあった剣を俺に渡す。
「ちょっ……これ錆びてんだけど?」
「あやつより強いかも知れんのじゃろ?それくらいはハンデじゃ」
錆びた剣を装備すると、ステータスが少し下がった。しかし、面白い事に下がったのは攻撃力のみで防御力と回避がほんのり上昇していた。
(なんでだ?たかが錆びた剣なのに何故ステータスが上がるんだ?)
疑問に思い、この剣に対して興味が湧いたが後回しにしておく。まずは机の上に置いてある金剛石を切断してみよう。
「んじゃ、切るよ。不正しないかちゃんと見ておいてね」
「不正などお主はせんじゃろうが…。ああ、特技も禁止じゃぞ?純粋にお主自身の力で切ってくれ」
錆びた剣先を金剛石に当てる。ほんのちょっと当てて押すつもりだったのだが、それだけで金剛石がサクッとお菓子の様に切れてしまった。
「あっ」
動揺してか、切れたのを見ながら押してしまう。そのまま剣は机を半分に裂き地面へと到達してしまった。
「あわわわ。ご、ごめん!机まで切るつもりは無かったんだ!べべ弁償するよ!」
慌てて剣から手を離しガンテツに謝罪する。しかし、ガンテツは目の前の事に驚愕していた。
「…は?いやいやいや……はああああ!?アルス!お主いま何をやったんじゃ!?」
「金剛石を切ろうとしただけだよ!机までは切るつもり無かったんだ!本当だよ!!」
「ええい!そんな事はどうでもいいわ!どうやって金剛石を切ったんじゃ!!」
「え?そりゃ剣で切ったんだけど?」
「錆びた剣で金剛石がバターみたいに切れるものか!!!」
「本当だって!……ほら、切れただろ?」
先程裂かれた金剛石の残りにもう一度剣を当てる。力加減もしたし、今度は金剛石だけ切ることができた。
「うぬぅ……。特技などは使っておらぬのじゃな?」
「使ってねーよ!本当に疑り深いなぁ」
「………わかった。お主を信じるとしよう。…それにしてもこんな簡単に切るとは…」
複雑な表情を浮かべながらガンテツはブツブツと独り言を言う。そのガンテツの様子は気にも留めずに、俺はこの錆びた剣を調べていた。
(…鑑定の結果、これは多種に渡る鉱石が使われているみたいだ。それに、龍の鱗とやらも。…この武器はガンテツさんが作成したのか?)
「ガンテツさん、この錆びた剣は自分で作成したの?」
「ん?…ああ、その剣は流れ物じゃ。前に大量の素材を購入した時、その中に入っておったんじゃ。研いでもそこまで使えるものでも無かったしな、そのまま放置しているんじゃ」
「ふーん……。ならさ、これ貰ってもいい?」
「ああ?別に構わんが、なんでじゃ?」
「んー、この剣に興味が湧いたからさ。それに、自分で剣を研ぐ練習にもなるかと思って」
「??……よくわからんが、要らんものじゃし構わんぞ」
「ありがたく貰うよ。……他に何か用事はある?」




