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翼のない俺達に幸せの粉を!!  作者: まろ爺
3章 あなたがいる理由
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16 約束

16話です。遂に3章突入!!






「ここ……か。 近くで見るとやっぱり凄いな。東京なんちゃらツリーぐらいあるんじゃねえか?」


「とうきょ……? まあいいのです。ここに、星域のじっちゃんとやらがいるのですね?」


楓とエルシオ。ふたりがたどり着いたのは、想像していたよりもずっと高い巨大な木。

大きく広がる枝と葉の影は、学校一つ分あるのではないかと感じるほど大きい。

その木の周りを一周するのにどれほどの時間がかかるか分からないほどだ。



「それで、じっちゃんはどこにいるのですか?」


「まあ、おそらくあそこだろうな」


そう言って楓が指を指した先。そこには、枝葉に紛れて見えにくいが、小さなツリーハウスが見えていた。

小さいといっても、この大樹に対してだ。きっと錯覚し小さく見えてしまっているのだろう。


「どうやってあそこまで?」


「そりゃあ……」


「登るとか言わないですよね?」


「そ、それは……」


眉を寄せ強めに問うエルシオから目をそらし、別の案を考える。


「誰か出てきましたよ。 なんかこっちを見ているのです」


「ホントだな」


こちらを見て目を細める年老いた男。


「なんか言っているのです。 でも聞こえませんね」


「そうだな。って、なんか落ちてきてねえかあの人」


「こっちに落ちてくるのです! 危ないって叫んでますよあのひっ……」



「あ、」




轟音と共に落ちてきたそれは、地面を捲りあげ、草木を蹴散らした。

小さなクレーターを作ったそれは、数十メートルあるであろう高さから落ちたのにも関わらず2本の足で着地し、バランスを崩さない強靭的な脚力を兼ね備えている。


「あんたが……星域のじっちゃん……」


返事はない。


小さなクレーターの中心で、ひとりの天使は頭を抱えて横たわりながら、涙目で怒っている。


「いたいのです!! なんてことしてくれるんですか!? なんで上から落ちてくるんですか!?」


「すまんのう、嬢ちゃん。 あいつは生かして置く訳にはいかんのや」


「んなっ……!」



「待つのです! 楓くんに危害を加えるつもりなら、私はそれを許すわけにはいかないのです」



頭を抱えながら立ち上がったエルシオは、楓を庇うように、星域のじっちゃんと思われる人物の前に立ち塞がる。



「そいつは…人間やろ? なぜそいつを庇うんじゃ。おまいらハーフは、人間を恨んどるんじゃないのか? まあいいわい。わしが狙っとるんはお前らじゃあない。後ろの死神さんや」


その言葉を聞き、すぐさま後ろを振り返ったふたりの視線の先には、死神の姿が見えた。その死神は見る限り知能が低い死神だ。

しかし、問題はそこではなく……


「な、なんて数だ……」


数十体の死神らが、楓達の方へ向かってくる。



「なんだかよく分かりませんが、楓くんを狙っていなのなら良いのです。 とりあえず、奴らを片付けるのです!」



なんだかよく分からない。それは楓も思ったことだ。その理由は星域のじっちゃんの発言の中にある。

ハーフ。その言葉を聞いた時、エルシオは何のことかと助けを求めるように楓の方を振り返った。

つまり、エルシオはハーフについて心当たりはないということになるはずだ。

それに、エルシオの両親は天使で、死神との戦いで亡くなっている。

ハーフ。ただ、何気なく星域のじっちゃんが放ったその単語は、どこか重く、冷たかった。




「楓くんは先に例の場所へ戻ってください! 後は私たちが何とかします!」


例の場所。それは、星域じっちゃんにバレないようにカモフラージュした、ローズベルクの事だろう。

エルシオによって開かれたゲートだったが、そのゲートに楓が飛び込むことはなかった。


「いや、俺はいざとなったらやる男だ。お前達に着いてくぜ。それに、エルシオを置いて逃げるなんて事出来ねーしな。あと、」


「そんな! 早く帰ってください! 危ないのです! でも、楓くんがそんな事を思ってくれているなんて……」


楓がローズベルクに帰ることを拒否した理由。それは、



「俺、狙われないらしいし」



「あ、確かにそう……ですね」



死神を睨みながらも少し頬を赤くしていたエルシオは、スッと真顔に戻り、スッとゲートを閉じた。楓の方を向き微笑みかけたあと、死神たちの方へ振り返りため息をつく。


「じゃあ、待っててくださいね。巻き込まれないようにだけ注意をしてくださいなのです」


ゲートを開き、ゲートを閉じるまでの間に、そのゲートへ侵入した者の事など気が付かなず、エルシオは双剣を両手に握り、戦闘態勢に入った。


「人間の兄ちゃん、これ持っとけやあ。 もしもんときのためや」


星域のじっちゃんから楓に渡されたのは、ボロボロの剣。エルシオの持っている剣と同じぐらいの大きさだが、精度がまるで違う事が、ひと目でわかる。


「あ、ありがとな」


「切れ味最悪だからのう、もういらんのや」


「ふざけるなよぉ!!?」


あったばかりの爺さんにツッコミをかましつつ、ほとんど需要のない剣を両手で握り、正座してエルシオにエールする。


「おーい、頑張れよ。 相手が多いからな」


「分かっているのです。 でも…こんな大規模な戦いは久しぶりなので……」


「構わねえぜ嬢ちゃん、最近は量が増えているがのう、わしひとりでもなんとかなる量やでぇ?いくで!」


ひとりの天使とじっちゃんは、死神達へ立ち向かって行った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おかえりー!! 鍋出来て……」


エフィルロが振り返ったそこにいたのは、楓でも、エルシオでもなかった。


「あなた…どうやってここに?」


そこにいたのは、白ベースの服装を身に纏う、まるで、白馬の王子様。


「あー、えっと、エルシオさんが開いてくれたんですよ。 まあ、僕のためじゃないけど…」


「この場所にはエルシオしかゲートを繋げることは出来ない。つまり、エルシオしか来ては行けない場所よ」


「へー。そうなんですか。じゃあ、かえちゃん…いや、楓くんもここに来ては行けない。と」


いたずらっぽい目でエフィルロを見つめるその男。


黙り込み、いつもは見せない鋭い目つきで、エフィルロはその男を睨む。


「どこまで知ってるの」


「まあ、なかなかディープなところまで。あ、申し遅れました、僕の名前はシルエト。

天界騎士団幹部やってます」



「天界騎士団幹部……とりあえず、楓のことを知っているならあなたをこのままここから返すわけにはいかないわ」


「分かってますよ、僕は話したいことがあってここに来ました。それが終わったら、あなたは僕の記憶を消せばいい。あなたは、それが出来るはずだから……その壺…そういう事ですよね?」


「物知りね。それで、話したいことって?」


「えーっと……かえちゃんは、人間です。あなたが何故かえちゃんここに連れてきて、何故かえちゃんが0ポイントなのか、僕には分からない。でも、かえちゃんはここに居るべきじゃない!今、かえちゃんの持っているポイントで、生まれ変わらせるべきだ」


後半、強い口調でそう言い切るシルエトは、エフィルロ同様、鋭い目つきでエフィルロを睨んだ。


「それは……出来ないわ。 楓は確かに、ここにいちゃいけない。 でも、あの人は、楓のために……楓はここに残す。絶対によ」


「天界に人間がいると知ったら、王も黙っていないはずです。 今は僕が独断で動き、かえちゃんを見つけることが出来たから良いものの……それに、人間に天界は過酷過ぎる……」




「大丈夫よ。 楓は強い。 この世界では……ね」






「魔力がない。 だからですかね?」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「大分……数が減ってきましたね」



息をあげながら、エルシオはそう呟く、



「いかん! 知能の高いのが紛れ込んどった!!」



素手で知能の低い死神を無双していた星域のじっちゃんは、奥に潜んでいた人の形をした死神を見つけた。


その死神はこちらに近づくことはなく、様子を見ているように思える。


「アイツをどうするかがこの戦いの鍵や…行くでえ嬢ちゃん!」


「はい!」


両手にもった双剣を輝かせながら、エルシオは数の少なくなった死神の群れに突っ込んでいく。


「俺、こんな所にいて何に……って、さっきの知能の高い死神があんな所に……」


その死神は、楓達に見つからないよう回り込むように猛スピードでかけていた。


後ろで傍観していた楓は一番にその異変に気づくことが出来た。

エルシオと星域のじっちゃんの後ろで隠れていた楓は、巨木を背中に座っている。

星域のじっちゃんやエルシオに見つからないよう、回り込んで巨木の裏側に隠れるつもりなのだろう。


「流石知能が高いだけあるってわけか」


「お前ら!知能が高い奴は後ろだ!後ろから奇襲をかけ、不意をつくつもりなんだ!!」


振り向いた2人は、楓の声を聞いたところで、知能の高い死神の行方が眩んだことに気がつく。


「後ろか……嬢ちゃん! こいつら雑魚は任せた! いけるか!?」


「了解なのです! 知能の低い死神は、私の敵じゃないのです!」


楓の前方ではエルシオが交戦を続け、星域のじっちゃんは巨木の裏に回り込み、1体1で知能が高い死神とやり合うつもりだろう。


「じっちゃんは強い……やれるはずだ。エルシオだって、もと天界騎士団。いくら知能の低い死神が束になったところで……」



ーーーーーーちょっと待て……


ーーーーーーわざわざ巨木を周り反対側に向かう意味はなんだ……


ーーーーーー巨木から、エルシオ達は俺を庇うために充分距離をとって戦っていた。

回り込むなら楓とエルシオ達の間まででもいいはずだ。

ならば、わざわざ相手の位置が確認出来なくなる巨木の裏側に回り込む必要はないはず……


ーーーーーーまさか……っ




「じっちゃん!! 違う! 奴は木の裏側じゃない!!

……くそっ! もう死神を追って回り込んじまったか……!」



「よく気づいたねぇ……」



「てんめえ……やっぱりか……」



「おや、人間型の死神を見ても恐怖心に揺さぶられないとは…まあ、君からは魔力を感じないし、相手にならないと思うけど…あの子を先に殺しちゃうよ」



その声の主のいる場所は、巨木の裏側じゃない。



ーーーーーー巨木の上だったんだ。



猛スピードでかけていたのは、エルシオ達に見つからない為にだけでなく、巨木に登るための助走でもあったのだ。



そして、知能の高い死神は木から飛びたった。灰色の翼を広げ、エルシオに向かって上空から剣を向ける。


「駄目だ……ここからじゃエルシオに声は届かねえ。戦いの真っ最中だ。上からの奇襲に気づくとも思えねえ。じっちゃんは俺のせいで木の裏側でニート中……」



ーーーーーーこういう状況は、ゲームでもよくあった。

ボスを倒すために、4人でプレイしている時、俺は弱いからいつもボスから逃げ回るだけだった。

たまに攻撃をくらっても、仲間が回復してくれてた。

そして、仲間が1人、また1人と殺られていき、残ったのは俺ともう1人のみ。

ボスが強そうな攻撃をしようとしていた時、

狙われるのは決まって俺じゃない方。

強いやつが狙われるようになっているのか、まあ、俺が最後に残ったら、間違いなくゲームオーバーだ。その点を考えるあたり、ボスは頭がいいんだろう。


俺は……そんな時、決まって一人で走っていた。

逃げているのではない。ボスの方へ走るのだ。


仲間が狙われている時、ボスは俺からの攻撃は気にしていない。

だったら俺の攻撃は当たるだろう。

例えその攻撃が弱くても、少なくとも仲間からこちらに狙いが変更されるはずだ。

そうすれば、重い攻撃を仲間が受けることはなくなる。

勝率が高くなるのだ。




ーーーーーー俺は……悪足掻きが大好きなんだよ。



足が勝手に動いた。なんて、都合の良い言葉は使わない。自ら動いたのだ。勝率をあげるために。

走り出した楓は、上空から急降下する死神と、エルシオの間に立ちはだかった。


エルシオは雑魚との戦いで精一杯なのか、楓の行動には気が付かない。


「やっぱり……声出すよりも足動かした方が正解だな……」


死神は楓の行動に気づいたのか、少し眉を顰める。


「まあ、どっちから殺しても結果は同じだし、先に君にしようかなあ。君、武器持ってないみたいだし」


死神はそう呟くと、剣を楓の方に向け加速する。まるで槍のように身を構える死神は、弾丸のように楓に向かってくる。


「俺、コントロールは割といい方でさ、ゲームの中よりも攻撃は当たるはずなんだよね」


「その剣! いつの間に……」


背に隠していたボロボロの剣を、こちらへ向かってくる死神へ投げつける。

このまま剣と死神の衝突で、死神を倒せる考えだったが、甘かった。

スッと剣を交わした死神は、進行を止めることは無い。


「不意をつかれたが、そんな程度で……ん? ……どこだ?」


まもなく地面、楓にぶつかる瞬間、死神の目の前に楓の姿はなかった。






ーーーーーー悪足掻き……と言っても、全く策が無い訳ではない。


ーーーーーー最初の攻撃はフェイク。それは、ゲームで培った勝つための考え。

不意打ちと見せかけたその攻撃は、ボスに一瞬の油断を作る。






「不意をつくのはこれからだぜ」


剣を見た瞬間、その一瞬で死神が楓から目を離した隙に、楓は少し前方に走った。

すると、死神の体は、楓の頭上スレスレを通っていく。





ーーーーーー油断しているボスに放たれる一撃は、決まってボスにしっかりとダメージが入ったものだ。

そんな経験が、天界で役に立つことになるとは……






「1発…死神を殴ってみたかったんだよ」


拳を握り、思い切り死神の腹部にめがけて拳を振り上げる。

死神は空高く吹き飛ばされるとそのまま落下し、吐血したまま気を失った。


「あれ……? いくら思い切りとは言え、なんだこの威力……相手がこちらに向かってきていたことを考えても、この威力はおかしい。それに、なんだよ……さっきの黒いモヤモヤは……」


楓の握られた拳には、黒い靄がかかっていた。

少しの間で消えてしまったが、死神を殴る瞬間、拳に見えた黒い靄。

この威力は、確実にその靄によって出ていると見て間違いない。


「俺……なんか魔法使える感じ!??」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「えぇ。そういうことよ。楓には魔力が一切ない。それが、楓の強み」


エフィルロの言葉を聞き、シルエトは顎に手を当てながらうんうんと頷くと、説明を始める。


「つまり、こういう事ですよね。

基本、魔力を持つ、天使や死神と言う種族は、相手からの攻撃を受ける時に、魔力を放出しその攻撃から身を守ることが出来る。だから、天使や死神は防御力が高い。

その魔力放出は反射的なものであり、意識をしていたとしても放出されてしまうもの。

そして攻撃側は、自分の魔力でない限りその魔力を自分の攻撃に加算することは出来ない。よって、相手から防御のため放出された魔力が自分の力に加算されることは無い。という事です。

しかし、かえちゃんの場合、自分の魔力がないため自分の魔力で攻撃することは不可能。でも、防御のために放出された相手の魔力を、自分の攻撃に上乗せする事は可能であり、かえちゃんは相手の魔力を吸い取りながら、防御のなくなった相手に攻撃をする事が出来る。

正解ですかね?」



「えぇ。 百点満点ね。 だから、楓にはここに残ってほしい。 約束を……守るために」


そうですか。と、頷いたシルエトはニコリと笑った後、笑顔のままでこう続ける。



「あなたの言いたいことは分かりました。 かえちゃんはあなたに任せます。

かえちゃんは僕にとって英雄みたいなものです。 あれほど人間を嫌いになって……いや、 自分を嫌いになってしまっていたエルシオさんを、元に戻してくれた方だから……と言うことで、かえちゃんが傷つくような事になったら許しませんよ?」



ありがとう。そう呟いたエフィルロは、まあ座りなと手で合図をする。

今の天界の状況を話し合うために、







『純天使』と、『半天使』の雑談が始まる。










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