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おハーブおじさん 栽培チートでおハーブ大好きお嬢様を助けたら、真の仲間と認められました。合法おハーブで彩る異世界村おこし  作者: うえき蜂


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ゼニンド

 オープンしてから数日が経った。

 冒険者の口コミ曰く、コスパの良いポーションが売っていると専らの評判。


女性のお客さんにはキャンドルやバスソルトが、美肌効果、疲労回復、貧血改善、めまいが楽になったとお褒めの声。

 ローレルさんにハーブティーの価格を相談したところ。


「ポーション屋では、上級ポーションが1つ3980イェンと調査済みですわ。ならば、こちらの最安おハーブティーは1980イェンといたしましょう。ほぼ同じ効能でサンキュッパとイチキュッパ。どちらがお得か、この機会におハーブティーを味わってくださいまし」

「ポーション屋の看板娘と知り合いじゃないの?」

「ただ今、おハーブティー促進フェア開催中でしてよ。同時に3つ購入で、3980イェン!とってもお得ですのぉ~」

「完全にケンカ売ってる!」


 その後、おハーブ大好きお嬢様とポーション娘の看板をかけた戦いに発展するのだが、それはまた別の話である。

 閑話休題。


 ローレルさんとカミツレさんが所用で店を外したタイミング。

 おじさんは、ランチタイムにハンバーガーセットを食べていた。

 毎度のことだが、日本産転生チーターが<デリバリー>や<ウーバーフード>なるスキルを使って、日本のファーストフードを配達しているのだ。


 ――な、なんだこの味は!?

 ――信じられない、どこの名店シェフが作ったのだ!?

 ――こんなぜいたく品がお手頃価格!? し、信じられんっ!

 ……俺、また何か運んじゃいました?


 運んだだけだね。飲食店に支払うべき対価、ちょろまかさないでよ。

 配達料だけじゃ、異世界で無双できないはず。あまり深く考えるのはやめとこ。


「昼時ほど、ハーブを忘れてゆっくりすごしたい」


 おハーブマイスター、とくに失言を撤回せず。思わず本音がポロリした。

 逆にむしろ、頭おハーブではおハーブマイスターになれないのだ、逆に。

 チリンチリンとドアの鈴が鳴った。


「ひえっ」


 刹那、ローレルさんが全力カムバックしたと恐れおののいてしまう。


「入りますぞ」


 現れたのは、知らない男だった。

 ファンタジーモノで既視感を覚えさせる商人風の衣装。ポマードで長い髪をオールバックにベタベタと固めた、小太りの中年。


「ほほう、ここが巷で評判のハーブショップですな。なるほど、実によろしい」


 店内を値踏みするかのごとく、ニチャアと不敵な笑みを漏らした。

 要警戒対象。10番対応お願いします!

 コンビニバイトの癖が咄嗟に蘇った。インカム入ってますか?

 おじさんは、真の中年男を横目で監視していく。


「フヒ、それがしが店主とお見受けしましたぞ」

「オーナーも店長も別にいますよ。おじさんは、販売アイテムの仕込み係」

「謙遜せずとも、小生は一目見れば分かりますぞ。それがしこそ、この店の中核であると」


 中年の左目が不気味に光った。

解析系のスキルで、何か掴んだのかもしれない。


「申し遅れましたぞ。小生の名は、ゼニンド。しがない商人ですな」

「はあ。遠藤匠です」


 オールバックおじさん改め、ゼニンドが名刺を取り出した。

 ピカピカな金色の名刺。ゴールドなメッキ加工にデカデカと記された情報とは。

 ――万能トランスポーター、なる肩書きだった。


「万能トランスポーター?」

「小生は、流通業を主にビジネス展開しておりますぞ。主要な町に拠点を設け、文字通り太いパイプがありますな」

「すごーい。憧れちゃうなー」


 乾いた感情で称賛すれば、ゼニンドは気を良くしたようで。


「それほどでもありますな! エンドー殿、人を見る目がありますぞ」

「ゼニンドさんが只者じゃないのは、誰が見ても感じます」


 悪い意味で。


「デュフ、小生を持ち上げるとはなかなかのやり手ですなあ」


 それは無理さ。重そうだし。

 もう一度、ゼニンドのシルエットを嫌々チェック。

 不審スマイルを携えれば、くすんだ金歯がお出迎え。ゴールドネックレス、金の指輪、キンピカなトゥーシューズ。成金の本質を体現した存在である。


「ここだけの話……違いの分かるエンドー殿にだけ! 良い話がありますぞ」

「それは気になります」

「将来的に大ヒット間違いなしのハーブショップ。全国展開を目指しませぬか?」

「いや。チェーン店を出すほど、本店がまだまだ栄えてないですよ」


 取らぬ狸のドラざえもん。


「甘いですな、甘いですぞ! エンドー殿、運営が忙しくなってからでは遅いのですな。商いは先手、先手を取り合うゲーム。新興産業の利点はフットワークの軽さ! そうでしょうとも!」


 間違ってはない。けれど、正しくもない。嘘を言わなきゃ、詐欺じゃない?


「小生は、フランチャイズ化と呼んでおりまする。その支援を、我々の商会にぜひ委託してみませぬか? ハーブを使った全く新しい品々、さりとて効能はかなり抑え気味ですな」

「……っ!」

「ほむん。小生とて、一流商人の末席を汚す者。目の前に商機がぶら下がっていれば、意地でも食いつく所存ですぞ」


 胡散臭いだけではなかった、ゼニンド。

 おじさんのハーブが実はぶっ壊れ……までは看破してないと思う。しかし、オープンして間もないよく分からん草の店に可能性を見出すとは、先見の明かもしれない。


 プレオープン時に下見をしたのか、好調な噂が悪い意味で伝聞したのか。

 金儲けが目的なら、全国チェーン展開の話に飛びつくところだ。流通のプロに任せて、新商品を各地へ卸してもらう。なんと、うまい話だ。

 否――


「フランチャイズ、ね。おじさんは昔、コンビニでバイトリーダーを務めてたんだけど」

「コンビニ? 商店の名前ですかな? それが一体」

「御社は、利益の何割をピンハネする予定だ?」

「……」


 ゼニンドが口を真一文字に結んだ。


「初見の印象だと、粗利5割がロイヤリティになる契約か?」

「……フヒッ。弊社は、7割ですぞ」


 守銭奴もといゼニンドが、愉快そうに口を歪めた。

 ハーブショップを下請けに使う気満々じゃん。


「まぐれ当たりの店主かと思えば、ただの世間知らずではありませぬな。小生が見誤るとは、エンドー殿も実に面白いですぞ。ますます興味が湧きまする」

「おじさんはつまらない人間さ。だから、オーナー兼店長と話を付けてくれ」

「デュフ?」


 おじさんが入口を指差すや、ゼニンドがゆっくり振り返っていく。


「タクミ様、話は聞かせてもらいましたわ。あとは、わたくしが対応しましてよ」


 ローレルさん、スカートの裾をつまんで優雅に登場。


「い、いつの間に!? 気配を感じなかったですぞっ」

「わたくし、冒険者ですもの。無音歩行くらい、モーニングおハーブティー前ですわ」

「も、もーにんぐおはー……?」

「モーニングおハーブティー前。多分、朝飯前的なサムシング」


 脂っぽい笑みが消え失せ、困惑を隠せないゼニンド。

 やべぇとこ来ちゃったと後悔した表情。気持ちはよく分かる。

 けれど、もう遅い。お前はすでに、おハーブ大好きお嬢様のテリトリー圏内だ。


「おハーブショップを全国展開する。素晴らしいアイディアですわ。多くの町にツテを持つあなたに、協力した分対価を差し出す。なるほど、道理ですわね」

「……実は、話が通じるタイプですかな? ふひ、心配損でし」

「おハーブに感銘を受けたならば、あなたが好きなおハーブは何でして?」

「ひょ?」


 ゼニンド、額に一筋の汗が伝う。


「バジル、パクチー、ミント、ローズマリー、ローズヒップ、ルッコラ、ハイビスカス、マリーゴールド、レモングラス、ラベンダー、カモミール、クレソン、セージ、ヨモギ――」


 ローレルさんがたおやかな微笑みを携えて、ゼニンドの元へ一歩ずつ迫っていく。


「ひ、ひぇぇぇえええーーっっ!? 小生っ! 小生はまだ、死にたくありませんなっ」


 腰が抜けて尻もちをついた、悪徳商人。

 ゴールドブレスレットをじゃらじゃらさせながら、這う這うの体で逃げ惑う。

 出入り口に到達した頃には、身震いが止まらないまま青ざめていた。


「恐怖! 人はここまで恐怖を感じるのですな!」


 初手おハーブはキツい。おじさんも通った洗礼の儀である。


「こ、この借りは必ず返しますぞ! 笑止! 大人しく小生に従っていれば、楽に金儲けができたものを! エンドー殿、夜逃げの準備を済ませておくべきですなっ!」

「はて、おハーブショップへ注文でして? わたくし、謹んで応対しますわ」

「――ッ」


 ゼニンドはローレルさんと目が合うや、一目散に退場するのであった。


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