太陽と月のプライド
アッシュローズの返答はにべもなかった。
「断る」
ここまで即断即決だといっそ爽快だが、だからといっておとなしく引き下がるのは癪である。何より、わざわざ国から愛用の棒を持ってきた意味がなくなるではないか。GRは倉庫に庭の手入れ道具を片付けている彼に食い下がった。
「なんでだよ。別にいいじゃん、減るもんじゃねえし……。やろうぜ、手合わせ」
「気が乗らん」
「じゃあ、乗せれば文句ねえってことか?」
「…………」
道具をしまい終えたアッシュローズが振り返った。口をねじ曲げた彼に向けて、ニヤリと笑みを浮かべてみせる。
「澄ました顔してっけど、お前、意外と剣振ンの好きだろ」
「……私がいつ、そのようなことを言った?」
「野暮なこと訊くなっての。武器を交えた仲じゃねえか」
アッシュローズは分厚く垂らした前髪の向こうから無言でGRを見ていたが、ふと息を抜くなり顔ごと目を逸らした。リビングに戻る気なのかそちらへ向かって歩き出す。
「わざわざ確かめなくともお前のほうが強い。保障してやる」
「たった一回やりあっただけでわかンのかよ」
「野暮だと言った口で訊くな」
アッシュローズが耳元の空気を払うように片手を振る。
「剣だけでなく魔法も使って本気で殺そうとしたのに、あそこまできっぱり負けてしまったのでは認めるほかあるまい」
「いや、きっぱりとなんて勝ってねえだろ。お前が自滅しただけじゃん」
「そこまで追い込んだのはお前の実力だ」
「むー……」
見事すぎる即答の連続にうなり、GRは身長とほぼ同じ長さの棒を天秤棒のように担いだ。気を取り直して再度説得を試みる。
「どっちが強ェかはどーでもいいからさ。やろうぜ。お前とは一度、殺し合いじゃなくて普通の手合わせをしてみてぇンだよ」
「しつこい」
「……ケチ」
「何とでも言え」
「ドけち〜。いけず〜。頑固者〜」
「やかましい」
小馬鹿にしてみるも、アッシュローズの気配に乱れはない。冷静そのものだ。
(……この野郎……)
アッシュローズがもはや本能で暴力を憎んでいるのは知っている。だがそれは一方的なものや短慮な抗争に対してだ。人が武力を持つことを頭から否定しているわけではない。そもそも本当に嫌っているならば、比喩でなくGRを足蹴にするのがお約束と化すわけがないのだ。つまりこれは、
(興味のあるなしじゃなくて、ただ単に面倒くさいってだけじゃねえか)
相手がGRのときのみ発揮される、彼のひどい気まぐれというやつだ。絶対に。
こうなると意地でも火をつけたくなるのが人の性。いや、GRの性。アッシュローズがリビング前のテラスに入るのを見送りながら、台詞をひねり出す。
「なんだ、自信ねえのか?」
ハウヤに似た者同士だと太鼓判を押されただけあってか、アッシュローズを挑発する言葉は簡単に出る。
「考えてみりゃそうだよな〜。椅子に座って本を読んでンのがほとんどだもんな。そりゃ体もなまるよなぁ。あとはでっぷり太ったおっさんになるばかりってか? 恥っずかし〜ぃ。フェリスに嫌われっぞ。つか、すでに嫌がられてたりして」
長い髪の端っこが反応した。深読みしすぎる癖のある男は見事に苛立ってくれたようだ。気を良くしてGRは、アッシュローズから視線を外しつつ続ける。
「いつもお前にべったりだったフェリスが、わ・ざ・わ・ざ・俺のほうに格闘術教えてくれって言ってきたの、もしかしなくてもお前がなまってきてンのに勘付いたからじゃねえ?」
笑って、彼に背を向ける。
「どっちにしろ体が動かねえんじゃあ、しょうがねえか。そんな奴相手にすンのは俺もつまンねえしな。わかったわかった。あきらめっから、おっさんはのんびり紅茶でも飲んでろよ。…………ん? いや、実年齢から言ったら、おっさん通り越して爺さんか」
刹那、背後──リビングの入り口で、ゴッ、と音にならない音が発生した。
意識を無視して全身の毛が逆立つ。
GRは担いだ棒からとっさに左手を外した。右腕が棒を操る。体の向きを百八十度回転。同時に回した棒が体の前面に出る。
──ガギィンッ!
棒を伝って手に響いた衝撃。腕一本ではこらえきれない。左手でも握って押し込まれる力に対抗する。
遅れて焦点が定まった。襲いかかってきた危機に。
ミルク色の長髪が涼やかな音を立てて舞い降りる。それを受け止める白絹のローブがやんわりと揺らいでいる。美しささえ感じる情景だが、GRが両手で止めている力に生易しさなどかけらもない。
自身の武器と交差している片手剣の刀身は、刃でなく棒だった。ひとまず理性が残っていることを武器の形状と放たれている熱風の温度とで把握したGRは、改めて唐突に襲撃してきた相手の顔に視線を移した。激しい動きによって割れた前髪の隙間から片目が覗いている。それだけで彼の表情に凄絶な色が宿るのが面白く、同時に怖い。──わかりやすい。
恐れる心をなだめながら、GRは胸中で嘆息した。
(この馬鹿、火がついた途端に爆発しやがった)
理性と暴力性。アッシュローズが持つふたつの顔は、本当に両極端だ。
(俺も大概、短気だとか直情型だとか言われるし、自分でも自覚してっけど、こいつには負ける気がするよなぁ)
考えたら思わず脱力しそうになった。が、こらえる。気を抜いたが最後だ。一瞬でやられる。しかも──わざと煽ったのだから自業自得だが──苛立たせた以上、あざのひとつやふたつでは済まないだろう。
とはいえ、結論がひとつ。
(まずは俺の勝ち、ってな)
乗せることに成功したのだ。そうとなれば楽しまなければもったいない。気持ちを切り替えて集中する。
「何怒ってンだよ。もしかして自覚あったのか?」
「自覚? 何の話だ。私は馬鹿犬の馬鹿極まりない馬鹿な発言に腹が立っただけにすぎん」
反論が愉快でたまらない。
「あっそ。あんま無理すンなよ、爺さん」
「生意気を言うな、赤子」
そう来たか。
切り返しの面白さに歯を剥いて笑うと、向かい合うアッシュローズの目に不敵な笑みが湧いた。
交わす視線。
ぎちぎちと音を立てる二本の武器。
この均衡が崩れた瞬間が勝負開始の合図。
自ら仕掛けるか、仕掛けてくるのを待つか、それとも────
(──!)
アッシュローズの眼光が鋭くなった。来る!
同時に武器を押し合い、バックステップ。間合いを取る。と見せかけて、GRは前に跳んだ。後ろにひっぱられる腕、そして棒にかかる力を反動に変えて突き出す。狙いは剣を握る右腕。
しかし届く前に上から打たれた。腕がぶれて強制的に軌道を変えられる。と、白い手が返った。刀身の向きが変わる。斜め下から銀が迫る。
(速ェッ!)
のけぞったGRの鼻先を剣風が掠めた。
左手を棒から離して右足を大きく後ろへ一歩。
体勢を整えようとした視界の端でアッシュローズが腰をひねった。ローブが翻り左足が飛び出す。足払いをかける気か。
いや、違う。軌道が高い。──狙いは脇腹だ!
腹筋を力を入れ、右手の握力を弱めて素早くスライド。逆手状態になると再び手に力を込める。
蹴撃を防いだのは直撃寸前。重い。しかし耐えるとすぐに付加が弱まった。足が離れるなり棒先を振り上げる。
アッシュローズが反射的に攻撃を恐れて大きくバックステップ。
その隙間で右手の甲を軸に棒を回転させる。左手、さらに順手の右手、左手、右手、左手と、立て続けにスイッチ。風車のごとく回しながら体勢を整え、棒を横から素早く背後へ。腰で止めると同時に前へ出た。右拳で突く。
アッシュローズが体を開いて拳を避けた。
予測済みだ。一瞬で拳を引くと左腕を回した。逆足の踏み込みとともに風切り音を立てて上から叩きつける。
上段に構えた銀棒がそれを阻んだ。
互いの腕が軋む。
(……なっつかしいなァ、おい)
思わず笑いが頬にこみ上げてきた。目が合っているアッシュローズも苦笑交じりではあるものの笑みを返してくる。
あの日と同じ角度、同じ姿勢での拮抗。ならばこの先に待つ結果は見えている。そしてそれを互いにわかっているとなれば、重要になってくるのは次に仕掛けるタイミングだ。が、過去を絡めた駆け引きなど面倒くさいしつまらない。
GRは自ら引いて距離をとり、武器を構え直した。心中をくんでくれたらしく、アッシュローズの追撃はない。彼もまた息を整えて柄を握る。
視線を交わし、一呼吸。
スタートダッシュ。距離を詰めるのは同時。鋼鉄製の棒と銀製の剣が空気を裂き、うなる。
──ガンッ! ガッ、キィン! ギギィンッ!
連続して切り結ぶ音が耳に、脳に、脊髄に響く。
武器が相手の体に届きそうで届かない。逆に油断をしようものなら一瞬でやられる、そんな危機感が常に張り付いている。
棒による攻撃と蹴り技、さらに拳のコンビネーション。
紙一重でよけられ、興奮度合いが増す。
(やっぱ面白ェッ!)
己の感情に意識が逸れたその瞬間、アッシュローズの剣が陽光を反射してきらめいた。残光が不規則に散る。
目がくらんでとっさに動けない。GRは棒を両手で構えた。何度も打ってくる剣をそのつど跳ね返す。
今は受け止めることができているが、耐えるだけでは間違いなく追い込まれる。反撃しなければ。しかし生半可な反撃では手を読まれる。しかも下手に攻撃に切り替えたら隙となり、そこを攻められるのは必至。
(けど……だったら、手はひとつ、だよなっ)
剣の一撃を大きく跳ね飛ばすとGRは、攻撃に移るべく棒の一端をアッシュローズに向けた。
即座に彼の手首が切り替わった。剣筋が変わる。狙いは、やはり開いたGRの左肩口!
(かかった!)
攻撃に移ると見せかけた棒を素早く戻す。
アッシュローズがひるんだ。しかし今からでは立て直せまい。剣は予定通りの軌道で迫る。
剣筋を見極め、棒で受け止めた。次手は譲らない。回し、刀身を巻き込みながら横に流す。
剣を持つ手をひっぱられてアッシュローズの体勢が崩れた。
「ヒュゥ……ッ」
見据えるは、がら空きの胸部。右手を腰だめに構えた。すり足で大きく一歩。反動ごと力を手に集中させ、
──パンッ!
「っ!?」
渾身の力で繰り出したはずの掌底に手ごたえがない。
動揺するGRの目の前で、アッシュローズの体が力を失った。崩れていく。否。落下していくのはアッシュローズではない。彼が着ていた白絹のローブだ。それだけだ。ならば、つまりこれは、自分が掌底を打ち込んだ相手は────
考えがまとまりかけたその刹那、GRの頭上に陰が差した。巨大な鳥が降りてきたかと思えたのは一瞬だけだった。もしもただの鳥ならば、覚えのありすぎる殺気を放つわけがない。
影を仰ぎ見る。空中に、淡すぎるほど淡い色の髪が流れていた。宙を跳び、GRの背後を今まさに取ろうとする男が、美しい髪の狭間で口角を吊り上げて笑っている。ひどく愉快そうに、歯を見せ、双眸をぎらつかせて。
声にならない悲鳴をあげ、GRは無我夢中で地を蹴った。地面を転がってその場を離れ、さらに跳躍して距離をとる。そうしてから改めて向き直ると、アッシュローズが横殴りに剣を振ったところだった。髪と袖の翻り方がいかに全力で腕を振るったかを示している。
シャツにズボンという軽装になった相棒を見やりながらGRは、噴き出た汗をぬぐって体勢を整える。
「き、器用なことする奴だなぁ」
対するアッシュローズは剣先をいったん下げると、先ほど見た嗜虐的な表情を若干だけ抑えて襟元を緩めた。
「少々暑くなってきたものだからな」
つまりは、本気になりつつあると、そういうことだ。
少し前の恐怖も忘れ、GRは嬉々として飛び起きる。
「そりゃ、光栄なこったッ!」
気合いを吐き、一気に距離を詰めた。臨戦態勢をとったアッシュローズめがけ、鋭く棒を振り上げる。
──スコーンッ!
いきなり側頭部に攻撃を受け、GRは見事にバランスを崩した。地面にぼてと転がる。攻撃といっても軽いため痛み自体はたいしたことはないのだが、あまりにも突然、しかも思わぬ方向からであったため動揺がひどい。
「なっ、なっ、なんだぁっ?」
見ればアッシュローズも驚いたらしく、鬼気迫る笑みはどこへやら、目をまん丸に見開いて間抜け面をさらしている。彼が原因でないことだけ確かめると、GRは急いで辺りを見渡した。
傍にちりとりが落ちている。それとともに、いつの間にか庭に出ているメイの姿が。
「こ……、こ、の、馬鹿王子っ!」
息を荒げ、尻尾をぱんぱんに膨らませた彼女は、こちらを睨みつけたまま膝に両手をついた。
「アッシュ様に、何しようとしてくれてるのよっ!」
悪いが、怒られる理由がさっぱりわからない。
「なんの話だ?」
問い返すが、とんでもなく慌てて走ってきたのか怒りのせいで呼吸が崩れたのか、どちらにしても肩で息をしているメイは答えられる様子ではない。
とりあえず落ち着くまで待ってやるかと思ったそのとき、奥からフェリスが駆け寄ってきた。今にも泣き出しそうな顔で走る少年が、速度を緩めもしないままアッシュローズの腰に抱きつく。
「だっ、だめなのぉっ!」
この子供もまた意味のわからない抗議をしてくれる。
ひとまず立ち上がるとGRは、口がきけそうにないメイは置いておいてフェリスに話を振った。
「お前らさっきから、いったい何言ってンだ?」
すると、フェリスがアッシュローズのズボンをさらに強く握りしめた。一生懸命涙をこらえながら顔を上げる。
「だめ、なんだもんっ。まま、いってたもんっ。けんかはだめなんだもんっ。みんななかよくしなきゃ……ふぇっ、……けっ、けんか……けんかしちゃ、やだぁっ」
結局泣き出してしまったが、これだけ言ってくれれば理解もできる。要するに勘違いをしたのだ。GRとアッシュローズが武器を振り回して喧嘩していると。わかってしまえば脱力以外の何者でもない。
「なんだかなぁ……」
「……考えてみれば、二人の前で剣形態にしたのは初めてだったな」
苦笑まじりに息を落としたアッシュローズが武器を消し、フェリスに体を向け直して膝をついた。動いたことで外れ、行き場を失ったフェリスの手を、両手に包み込む。
「フェリス、大丈夫だ。泣かなくともいいのだよ? 私たちは喧嘩をしていたわけではないのだから」
「……っく……、けんかじゃ、ないの? ……ほんと?」
「本当だとも。私がお前たちに嘘をついたことがあったか?」
「で、でもじーる、あしゅのこと、ぼうで、た、たたこうとしたよっ?」
この弁は、曲がりなりにも『体の動かし方』を教えてやっている身として黙ってはいられない。GRは横からフェリスの頭を指で突いた。
「擦り傷とか切り傷とかちょっとしたあざならともかく、手合わせでヤバい怪我させるようなヘマ、俺様がするわけねえだろ。見くびンなっつーの」
かくんと頭を揺らしたフェリスはびっくり眼でGRを見上げたあとで、頬を流れる涙を掌でぬぐった。改めて義父を見やる。
「てあわせって、なぁに?」
いつもは前髪で隠れて見えないアッシュローズの眼差しは、今はとても柔らかい。フェリスを心から慈しんでいるのがわかる微笑みだ。
「たとえば、雪投げをしているとき……、GRが投げた雪が当たったら、どうやって当てたのか、どうして当たってしまったのかを考えて、その方法を覚えるだろう?」
「うん」
「同じようにしてGRに当てようとしたら、今度はGRがそれをよける方法を考える。もし上手によけられたら、お前はどうしてよけられてしまったのかを考えて、別の方法を探す……。そうやって、お互いにいい方法を探しながら運動するのはとても良いことだ。GRが使う格闘術や、私が使う剣術も、雪投げと同じ。実際にやってみることで学んでいくのだよ。それが、手合わせ。……わかるか?」
真剣な表情で耳を傾けていたフェリスが、ぱっと表情を明るくした。
「うんっ。けんかじゃなくて、おべんきょうしてたんだね。ぼく、わかったっ」
「いい子だ」
頭を撫でられ喜ぶフェリスが、ふと、目を上げた。
「ねぇ、あしゅ」
「ん?」
「あしゅとじーるは、なかよしさんだよね? だからいっしょに、おべんきょうしてたんだよね?」
まっすぐな問いと願望に、アッシュローズが息を呑んだ。
そして、
「…………そうだな」
わずかに顔を伏せた。乱れていた前髪がさらりと流れ、笑みでほころんだ頬に落ちる。
「でなければ、手合わせなどできないよ」
「よかったぁっ」
アッシュローズは首に抱きついてきたフェリスの背中を撫でると、そのまま抱いて立ち上がった。途中で服を拾ってメイに近づいていく。
「大丈夫か? 驚かせてすまなかった」
「ほ、本当にびっくりしましたよ。……あ、そんなことよりもお怪我はありませんか? 手当てしないと」
「擦り傷ならあるかもしれないが、その程度ならば舐めておけば大丈────」
「だーめーでーすっ。もうっ、アッシュ様ったら最近GRのずぼらさがうつってきてませんっ?」
「む? ……それは嫌だな」
「どういう意味だ、コラっ!」
おもいきり叫んだら、振り返ったアッシュローズに半眼で冷たい視線を浴びせられてしまった。わかりきったことを訊くな、と言いたいらしい。
何にしても、手合わせはこれで終わりか。またしても決着がつかずじまいなのが残念だが、以前とは比べようもないほどの満足感が胸を占めている。充分楽しめたのだから引き止める理由もないだろう。GRは屋敷に戻っていく白い背中を黙って見送った。
──前言撤回。
やはり物足りない。もっと続けたくてたまらない。
「アッシュっ」
声をかけるとすぐに振り返った相棒はやや不機嫌そうだったが、構わずに破顔する。
「そのうち、またやろうぜ」
「断る」
案の定な即答に、思わず苦笑だ。
「ケチ」
「なんとでも言え」
アッシュローズが、上気した頬のまま微笑んだ。心底困ったように。
「お前とやりあうのは、気が乗らん」
言って身を翻した彼は、今度こそ可愛い『息子』と『妹』を連れて屋敷の中へと入っていった。
GRは一人、呆然と瞬きを繰り返す。
いろいろと言い返したい気もするが、これもまた突っ込むだけ野暮なのかもしれない。GRは後ろ頭を掻いてこそばゆさをごまかすと、明後日の方向を見て肩をすくめた。
(……なぁんだ。俺に負けるのが嫌だっただけか)
こっそり吹き出し、さらに大きな伸びでごまかして。
GRは尻尾を揺らしながら、同居人たちの待つリビングへと足を向けた。




