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ターゲット①

 最近の保育園だが、俺とレイちゃんが飛び抜けて、何でも出来てしまう。その為、保護者の中に、それをやっかむ人たちが、にわかに出始めていた。どうやら、俺とレイちゃんを排除したいと考えているらしい。保護者だけではない。保育士の中にも、それに同調する者がいる。実際、その保護者の気持ちも分からないではない。相対性理論を東大准教授と会話を交わす4歳児。本当は50歳を過ぎているおじさんの4歳児。どちらも、普通ではない。まあ、俺は全くきにしてはいないが、人一倍感受性の高いレイちゃんには、ちょっと可哀想だ。そろそろ、保育園も潮時なのかと俺は思っていた。


 自宅に帰ると一通の手紙が届いていた。

『レイ、ちひろちゃん、当たったわ。』

何かが当選したみたいだ。

『ママ、何が当たったの?』

レイちゃんが質問した。

『レイが言ってたやつよ。おかあさんといっしょ。それが当たったの。』

『やったあ。そしたら、ちひろちゃん、テレビに出られるんだあ。』

『そうよ。楽しみよね〜。』

えー、まじか。恥ずかしいよ。

『ママ、ちひろちゃん、何のコーナーに出るのかなあ?』

『それは書いてないから、当日まで分からないわね。』

『体操かなあ?歌かなあ?もしかすると、歯磨きかなあ?レイも見に行っていい?』

『もちろんよ。ちひろちゃん、良かったわね。お母さんといっしょに出られるのよ。そうだ、新しいお洋服買ってあげるわね。とびきり可愛いのを選ばなくちゃ。』

やはり、俺には拒否権がない。でも、今回は彩先生の関与はなさそうだ。ということは、俺ってくじ運がいいのかなあ。あっ、違う。むしろ外れて欲しかったんだから、くじ運が悪いと言った方が正解か。

『ママ、私、恥ずかしい。』

『何言ってるのよ。せっかく当たったんだから、チャンスを逃すのはもったいないわよ。それに、ちひろちゃんのお仕事はモデルなんだから、これも勉強と思えば、楽なもんでしょ。』

なんか言い含められてる。

『3日後の木曜日に収録だって。急いで、お洋服買わないとね。そうだ、今から行きましょう。レイ、選ぶの手伝ってね。』

『うん、ママ。レイがちひろちゃんに似合う服を探すね。』

『じゃあ、出かけてくるから、ちひろちゃんは、お留守番していてね。』

『私の服を買うのに、私は行かなくていいの?』

『いいの。当日まで、お洋服は秘密にするから。』

二人は、買い物に向かった。


 俺はパソコンを立ち上げた。検索欄に「ちひろ」と打ち込む。まあ、出るわ出るわ。俺に関する情報が溢れている。ヤングマガゾンのグラビアが評判だということをすぐに理解した。高輪のホテルで撮られた晴れ着の写真も、相当数アップされていた。その他、目撃情報なども載っていたが、ほとんどがガセであ。心配したの、このマンションに住んでいるなどの情報が漏れていないかどうかだ。幸いにも、大宮での目撃談は無かった。

 頭にくるのは、いわれなき誹謗中傷である。ちひろの高校時代はヤンキーである。ちひろの彼氏を知っている。ちひろはヤリマンである。ちひろは整形している。ちひろは存在しない、CGの合成である。よくもまあ、こんなに嘘デタラメばかり書くとは。呆れてしまう。一番酷いのは、ちひろを殺してやると殺人予告をしている男だ。見るに耐えない。

 その殺人予告に対するコメントが面白い。

「ちひろ様を傷つけることは、僕が許さない。ちひろ様は特別な方。あの美しさは神の領域。僕の過ちを厳しく断罪し、そして許してくれた恩人。だから、ちひろ様の為なら何でもします。ちひろ様を悪くいう人は許さない。』

これは、竹田電機のバカ息子、竹田武に違いない。完全に俺を崇拝している。時々、遊んでやるか。使い道はありそうだから。

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