死せる孔明、次の生に目覚める
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『にゃんじゃあ、こりゃあ―――っ!!!!!』
【異世界転生】した私の第一声がそれだった・・・。
何?
意味が分からないだって?
・・・分かっている。
順を追って説明しよう。
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私の名前は孔明。
比類なき知性を持った大軍師、
【三国志】の諸葛亮 孔明と言ったほうが解りよいか。
まさか後の世で、
私達の戦いが物語になるとは・・・。
そして・・・、
【三国志】の愛好者ならば、
私の最期は当然ご存知だろう。
――そう、
あれは広大な原野において、
敵の軍勢との にらみ合いが続いていた野営地・・・、
五丈原の夜だった・・・。
病におかされ、
いよいよ自分の死期を悟った私は、
部下に愛用の車椅子を押してもらい、
幕舎から外へと出た。
満天の星空だった。
「孔明様!」
「孔明様・・・」
「うぅ・・・、
我々を置いていかないでください・・・」
「どうか、どうか・・・!」
周りの部下達も私の最期を悟ったのか、
涙を流してくれていた。
ここまで私の指揮のもと、
共に戦ってくれた仲間たちだ。
乱戦で腕を負傷した者、
矢を受け片眼を失った者、
落馬して骨を折った者・・・。
誰一人として、
傷を負っていない者などいなかった。
そしてそれ以上の、
星の数ほどの命が、
ここまでの戦いで散っていったのだ。
敵も味方も・・・。
(戦い続けた人生だった・・・)
その事に後悔はない。
(だが・・・)
私は夜空を見上げた。
美しく、穏やかな星空だった。
ふと、
戦の合間に亡き君主、
劉備 玄徳様と過ごした時間が思い起こされた。
二人で碁盤を囲み、
穏やかに碁に興じていた記憶が・・・。
「幸せじゃなあ。
ワシは、
こうやって碁を打っている時が、
一番幸せなのじゃ・・・」
劉備様は、
よくそんな風に言われていた。
そして、
「人の国づくりも、
このように楽しく出来たら良いものよ・・・」
とも・・・。
――本当に楽しい時間だった。
劉備様・・・、
囲碁・・・、
平穏・・・、
国・・・、
世・・・、
生・・・・・・
(もし、次の生があるのならば・・・)
私は、
かすむ眼で夜空を見ながら天に祈った。
(願わくば・・・、
戦のない・・・平穏な世で・・・、
皆と碁を・・・打ちた・・・い)
そして、
一筋の流星と同時に、
私の命の灯は消えた。
――長い戦いの人生だった・・・。
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――そして・・・・・・、
「あ、
動いたよ お兄ちゃん」
「本当?
良かったぁ・・・」
そんな声が聴こえ、
私は目を覚ました。
(私は・・・生きている?)
柔らかい布の上に私はいた。
どうやら、
うずくまって眠っていたようだ。
「眼も開けたよ。
大丈夫みたい」
と、
また近くで声がした。
(私の事を言っているのか?)
声の方向を向こうとした。
が、
(・・・!?)
何故か思うように身体が動かない。
(何だ?)
私は、
それほど長く眠り続けていたのか?
首一つ動かせない私の顔を
「君、
うちの玄関前に倒れていたんだよ」
と、
先ほどの声の主が覗き込んできた。
見れば、
まだ年端もいかぬ少女だった。
(それにしても・・・)
異様に髪が短い少女だ。
結うどころか、
つまむのが やっとと言った長さか。
(前髪を垂らしているにもかかわらず・・、
額が半分近く出ているではないか)
薄い草の色をした、
柔らかそうな髪だ。
こんな髪型と髪の色など、
今まで見た事がない。
(まさか・・、
ここは異国か?)
だが、
少女たちの発する言葉は解る。
一体、
私は眠っている間に、
どこへ連れて来られたのだろう?
私を見ている目の前の少女は、しばらくして、
「お兄ちゃん、
このコ 身体が動かせないみたいだよ」
と、
先ほどの もう一人の声の主を呼んだ。
(『このコ』とは、
まさか私の事か・・・?)
五十前後の男をつかまえて、
子供呼ばわりとは・・・。
少女に呼ばれて、
その兄らしき人物が近づいてきたようだ。
「えっと・・・、
大丈夫?」
と、
目の前に現れたのは、
少女より一つ二つ上くらいの、
あどけなさの残る少年だった。
やはり少女同様、
この少年も見慣れない髪をしていた。
首もと程度までありそうな髪を後ろ手に結っている。
前髪は、
少女のものほど短くはないものの、
目元にかかるか かからないかの短さで、
(むう・・、
やはり結うには長さが足りぬな)
それを真ん中で分け、
少女と同様に額から垂らしている。
そして髪の色は何と、
紅葉の様に赤い・・・。
(それと・・・)
少年の両目の前に着けられた、
二つの透明な板は何だろう?
眼を護るためのものか?
(――いや、ともあれ・・・)
どうやら私は、
この二人に世話をされていたらしい。
(ならば、
まずはその礼を言わねば・・)
と、
思うのだが・・・。
やはり身動きどころか声ひとつ出せない。
(おかしい・・・)
本当にどうなってしまったのだ、
私の身体は。
そんな私の様子に気付いたのか、
兄のほうが、
「そうだ!
お湯で身体を温めてから、
按摩をしてみようか」
と、
提案をしてくれた。
「今、お湯を沸かすから」
兄がそう言うと、
「じゃあ、
わたしがお風呂場に連れていってあげるね」
と、
妹のほうが私の身体を抱えた。
全身を包み込むように・・・。
(何だ、この状態は!?)
私は抱き抱えられながら混乱した。
何故、
こんな小柄な少女の腕の中に、
私の全身が収まっているのだ!?
だが、
確かめようにも、
首一つ動かせない今の私は、
自分の手足を見る事すらできない。
少女に抱えられたまま、
私は別の部屋に連れて行かれた。
(お風呂場と言っていたが・・・)
目線を必死に動かしてみる。
どうやら脱衣所らしい。
左手にある戸の奥が浴室で、
右手には洗面台と鏡が・・・鏡!?
「鏡、見たいの?」
私の思いが伝わったのか、
少女は後ろから私の脇を両手でつかむと、
「はい、どうぞ。
美人さんですね~」
と、
鏡の前に差し出した。
そこに写っていたのは、
一匹の小さな猫だった・・・。
『にゃんじゃあ、こりゃあ~っ!!』
私は思わずそう叫んだ!
・・・つもりだった。
だが、口から出たその声は、
「ニャアアアアッ!!」
という、猫の奇声だった・・・。
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【あとがき】
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