第14話 氷姿雪橋
帝国暦1400年1月
―レーヌ帝国帝都レーヌ―
「アオイ様起きてください。レーヌの市街地に入りました。」
アイに肩を揺すられ私は馬車の窓から外を見た。
レンガ造りの建物が道の両端にびっしりと建ち並び、多くの人々が買い物をしたり、会話をしたりしている。
そして道の奥には禍々しい雰囲気を放つ巨大な城。王城、レーヌ城がそびえ立つ。
私の知るレーヌの街だ。
「着いてしまったか…。」
ウマアリ温泉でコトネと別れ、皇帝の使者が持ってきた馬車に乗り込み丸2日。私達はレーヌ帝国の帝都レーヌに着いた。
「賢者様、もうそろそろ王城に着きます。王城に着いたら直ぐに皇帝陛下に謁見される予定になっておりますからご準備願います。」
馬車を運転していた男が言う。
「アイ、私帰る。後はよろしく」
そう言いまだ走っている馬車から飛び降りようとする。
「ちょっ…、ダメですよアオイ様。皇帝からの手紙なんですから行かないと間違いなく殺されます。」
アイが必死に止めてきた。
「アイ、やめろ。私は帰るんだ。あの男の事だ、どうせ行こうが行くまいが襲われる事に変わりわない。何より私はあの男に会いたくない。あの男の顔を見るだけで寒気が走る。」冷や汗を垂らしてアイに語りかける。そしてアイの手を何とか解こうとする。それに対してアイも必死に私の事を食い止めようとする。そうこうしているうちに馬車が急に橋の上で止まった。それによってアイの拘束が緩まった。
好機!
と思いアイからの拘束を何とか振り払い私は外へ飛び出た。このまま急いで古代樹の森へ帰ろうと思い、前を見ると目の前には高く高くそびえ立ち城内からは禍々しい雰囲気を感じるレーヌ城と5賢者の一人であるクラウス・ベーン、後ろにはどこか魂のこもっていない人形のようなたくさんの城の守備兵がまるで私が馬車から逃げ出す事が分かっていたかのように立っていた。その姿はお前は帰さない。皇帝の元へ行けと言っているようだった。
無言の圧力に観念した私は素直に再び馬車に乗り込もうと足をかけた。その時だったベーンがファイヤーボールを放ってきた。そしてそれが合図かのように後ろの守備兵達が一斉に攻め込んできた。
「ちっ、私を拘束するつもりか…。あの腹黒皇帝め…。」
私は驚きと怒りでいっぱいになりながらも瞬時にスノーヴァイトを放ちファイヤーボールを相殺する。
ドッカーン
空中で二つの大きな火の玉と雪玉がぶつかり、消える。
そして守備兵の一人に向かって私が散々嫌ってきたユニークスキルの一つである氷姿雪魄氷姿雪橋を発動した。(氷姿雪魄は発動相手の記憶を断片的に読み取る事ができる魔法)
その瞬間、一気に守備兵の記憶が流れ込んでくる。
断片的だが分かった事がある。
この城には私が500年前に倒したはずの魔王がいること。
そして、魔王すらも何か本能が拒絶するようなヤバいものに操られていること。そのヤバいものの狙いは私だということ。
信じたくないが現実を見なければならない。まずはこの守備兵、そしてベーンを何とかしなければ…。




