強かったのは、あなたじゃない。
『今度は楽に侵入できたわね!』
早朝。
研究所を数日観察していると、この時間に退勤する研究員がいた。
『お命ちょうだい!』
ヨミがメスで暗殺し、白衣と入館パスを奪う。
なんてことない、簡単に侵入できた。
『しかし、リリイの呪い、どこにあるのかしら。』
『はあはあ。』
『どうしたの?違?』
『なんかね、妙に剣とかが重く感じるのよ。』
『えー!』
『地下世界来てから違和感はあったんだけど、こうやっていざ動き回ると少しね。』
額の汗を拭う。
妙にリアルなんだよな。
地下世界。
『早めに、リリイの呪い、見つけたいところだが、、、』
『ケイ、ありがとう。大丈夫だ。』
『そうか、、』
しかし、侵入は出来たものの、全くわからないな。研究所も薄暗くどこに何があるかわからない。
なんとなく続いている廊下を道なりに進んでいる。
『てか、守衛室通ってからずっと一本道だね。』
『ああたしかに言われてみれば、分岐もなければ扉もないな。』
『うう、、、』
鎧が重い。
戦える、動き回れるギリギリのところだ。
何か改造施したか?
『あ!見てみて!ドアがあるよ!』
ヨミが元気いっぱいなテンションで、指を指す。
その先には白い自動ドアのようなものがある。
スレイブユアセルフの世界に自動ドアとは、
違和感が半端ない。
『地下世界は奥が深いな、、、』
呟いてみた。
『開くよー!!』
ドアが開く。
真っ暗な部屋だ。
静寂が支配する。
何か・・・
いるのか・・・・?
何か違和感を感じた瞬間明かりがついた。
部屋の真ん中にはガラスの小瓶に入った薬品だけがショーケース内に鎮座していた。
『あれかしら?』
『あれだな。』
『しかしな、、』
『ああ、たぶん。』
『リリアの呪いよー!』
『あ、ヨミ!バカっ!』
一足遅かった。
ヨミはショーケースを割った。
サイレンが鳴る。
入り口から警邏兵がなだれ込む。
部屋の前方にホログラムが映る。
白髪にオールバック。
整えられた髭。
紺色のスーツの上からもわかる鍛えられた肉体。
『おや、ネズミが忍び込んだようだな。』
『ああ・・・。』
ヨミが涙目でこちらを見ている。
『誰?』
『ロックハート総帥、、』
『あれが?なんだか、ちょっとイケオジね。』
『ふむ。そのくらいの軽口をたたく余裕はあるか。しかし己がスレイブに罪を背負わせ、また罪を重ねるか。愚かな。』
『うわー、なんか中二病。。』
『た、違ぇぇもう終わりだよ、、ロックハートに見つかったら、、、』
『うむ、少しヤバいかもしれない。』
『そんなにヤバいの?』
『ロックハート直属の警邏兵に捕まると脱獄はおろか、、アカウントがスレイブに落とされる。』
『マジか、、、』
スレイブ。
奴隷だ。
強制労働ミッションをこなすだけの地獄を味わうことになる。
実質、アカウント停止だ。
『えー、じゃあなんとしても切り抜けないと!』
『2人とも、準備はいい!?』
ヨミがメスを構える。
『あ、うん。』
『・・・頼んだ。』
『は!』
『私は後方援助にまわる。』
ケイはリボルバー式の銃を出した。
『アンタ!ネクロマンサーじゃないの!?』
『言っただろう?死体にも感情があると。』
ケイは銃弾を警邏兵に打ち込みまくる。
『まあ、いい!倒せるさ!』
ケイとヨミはサクサクと警邏兵を倒す。
しかし。
『ぐっ!重っ!』
『コイツは弱いぞ!みんな襲い掛かれ!』
警邏兵のレベルは弱くはないが、ランカーの私なら余裕で倒せる。
はずだった。
『違っ!』
『ぐあっ!』
ヨミのメスで、私を背後から切ろうとした、警邏兵が倒れる。
『違っ、やっぱり装備重いんじゃ、、、』
『そ、そんなはずは、、、』
素直に言えればいいのに。
『違!』
『ぐあっ!』
ケイの銃弾で救われた。
助けてって。
いや、私はランカーだ。
しかもトップランカー。
このくらいで根を上げては、、、
『くそぉぉぉ!!!』
『隙あり!死ねぇっ!』
あ・・・・。
まずい。
あと、0コンマ1秒で剣戟が脳天に・・・・
『インビジブル!全方位爆撃!!』
ドローンのようなものが近づき、一斉にミサイルが放たれる。
『愚かなスレイブめ!』
ロックハートが罵倒するように叫ぶ。
警邏兵が次々と倒れる。
『全く。たかが、アカウント1人の命の為に、免罪符も自らを担保にして支援ユニットを使うとは、、、、』
ロックハートのホログラムが消える。
警邏兵が今の砲撃で掃討された。
『違っ!大丈夫!?わあああー!良かったああ!!』
『よ、ヨミ重いって、、、』
『2人とも後続の部隊も来るはずだ。さっさと逃げよう。』
『はっ、はっ、しかし、ヨワの保険が効いたわね。』
『全く。あのスレイブなかなか筋がいい。パーティに加えたいくらいだ。』
『まあ、NPCだからね。』
『しかし、あちらから提案するか?普通。』
『確かにスレイブユアセルフのミッションでこんなご都合的な展開は初めてよ。』
私は黙っていた。
そう、彼女はこのミッションの前に一つの提案をしてきた。
『違ちゃん。地下世界での戦闘ははじめてよね?』
『ああうん。』
『だったら、ステルスのドローンを持っていって。私が遠隔操作するから。』
『ヨワ、それはどういう、、』
『違ちゃんも感じてるでしょ?鎧や剣が重いのを、、、』
『・・・・そんなことない。』
『そんなことある!』
『だったらなんだよ、、トップランカーだよ?私は、、、』
『違ちゃん、、そういうところだよ。』
『は?』
思わず詰め寄る。
私は強い。
支援ユニットなんていらない。
そう誰の支援も。
『持っていかないから!!』
『じゃあ、もうご飯作んない!』
『は?じゃあヨミとケイとご飯食べるからいいですぅ!』
『私らは、ヨワの飯を食うぞ?』
『私は、、違を食べられれば、、、』
スパーン!
『ひ、ひゃうっ!?』
ヨミの尻を叩いた。
『はあ。ご飯は食べたい。』
『だったら持っていって。』
『なんで、、私そんなぬ弱く見えんのか?』
『違う、、違うの。』
『は?』
『だって、、、強かったのは、、、』
ヨワは唾を飲み込む。
鉛玉を喉から出すように声を絞り出す。
『強かったのは、違ちゃんじゃないから。』




