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妖狐は亡国の皇太子と謎を解く  作者: 犬村汐里


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第1話




 一人の青年は、生い茂る草やどこからか伸びてきた蔓をかき分けてひたすら前へ前へと進み続けた。



 青年の目に廟が飛び込んできたのはすぐのこと。



「やっと見えた」



 ほっとした青年は、息をひとつ吐き出す。


 その廟は、ずっと昔に建てられてから放置されているのが分かるほどに朽ちていた。


 扉ははずれ、屋根はもうない。



 青年がその廟の中へと入ると、九尾の狐の像が一体、空を仰いでいた。



「これが天狐さま……」



 青年の呟きに呼応するように、寂びていた狐が突然光を帯びた。


 青年は、その応えを逃すまいと「天狐さま!」と呼びかける。



「天狐さま、お願いがあります」



 唾を飲み込み、青年は言う。



「天狐さま、どうか、どうか、この国、裴王朝の国王を殺してほしいのです」



 最後まで願いを言うと、青年はうつむいた。



「理由は……僕の、僕の叔父を殺したからです。だから、どうか」



 顔をあげた青年は、目に涙を浮かべていた。


 その目に宿る炎は、天狐が放つ光を映すことさえ許さない。



「私の父を殺してください。この国の国王を、殺してください」



 青年は「あ、そうだ」と言って懐から袋を取り出すと、そこから金貨を出した。



 それを天狐の像の前に置くと、跪いて祈りをささげる。



「父を殺してください」



 そう何度も青年は呟いていた。


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