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美形軍人に連行された少女の末路 ~辿り着く先は見知らぬ夫の元か、投獄か!?~  作者: 当麻月菜
1.毒舌少女は他称ロリコン軍人を手玉に取る

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 煌々と輝く月がゆったりと流れる雲に陰影を作り、濃紺の秋の夜空に色を添えている。


 とても美しい夜だった。


 しかしベルを連れ去った軍人ことレンブラント・エイケンは、窓枠に背を預けている。月を愛でる気などこれっぽっちもないようだ。


(さて、始まってしまったものは仕方がない。迅速に行動するのみだ)


 頭の中のほとんどを占めているのは、やむを得ない事情で攫うように連れ去ってしまった少女─── ベルのこと。


 実はレンブラントも予想外の展開に頭を悩ましていたりする。

 当初予定では、ベルにきちんと同意を取ってから同行願うつもりだったのだ。


 まかり間違っても、脅すような真似をするつもりなんてこれっぽっちも無かったのだ。


 ─── コン、コン。


 眉間を揉みながらもう何度目かわからない溜息を吐いたと同時に、ノックの音が重なった。


「入れ」

「どうも、邪魔するよ」

 

 入室許可を出したと同時に顔を出したのは、夜の泉のような深い藍色の髪と瞳が印象的な身なりの良い青年だった。


 てっきり部下だと思っていたレンブラントは、途端に眉間に皺が寄った。


 予想外の人物の登場に歓迎する気はないらしい。


「……ダミアン、なぜここに来た?落ち合う場所は、ログディーダの砦のはずだ」

 

 頑固な容疑者だったら即座にゲロるような口調で問われたダミアンは、レンブラントの質問を無視してソファに着席する。


 そして、こてんと首を傾げた。


「んー?待ちきれなかったら、来ちゃった」


 にぱっと場違いなほど爽やかな笑みを浮かべたダミアンに、彼のすぐ傍に移動したレンブラントの頬は見事に引きつった。


「勝手な真似をするな。あと確認だが、フォンク卿(お父上)にはちゃんと許可を貰ったんだろうな?」

「……レン、お腹空いたなぁー僕」

「黙れ。そのひしゃげたバケットでも食ってろ」

「え゛、これパンだったの?!僕てっきり……」

「パンの事はどうでもいい。とにかく答えろ。フォンク卿(お父上)に許可を取ったのか?」


 ソファの前のローテーブルに置かれていたパンに釘付けになっていたダミアンだけれど、誤魔化すことは不可能だと悟り、小さな声で「取ってない」と答えた。


 すぐさまレンブラントは額に手を当て、天を仰いだ。


 自分より一つ年下の彼が、やんちゃな子供にしか見えない。


 レンブラントとダミアンは幼馴染であり、悪友である。しかし親友なのかと聞かれると、互いに渋面になる所謂”腐れ縁”という関係だったりもする。


「予想はしていたが、やっぱりとなると呆れて何も言えん。あのお方も、こんなバカ息子を持って気の毒に……」

「あのさぁレン、そういうことは本人の居ないところで言ってよ」

「安心しろ。お前が居ないときにもちゃんと口にしている」

「……酷いなぁ。あとパン食べたいからミルクかお茶淹れて」

「自分で淹れろ」


 すっぱりと言い捨てたレンブラントは、くるりと背を向け机の上に投げ出してある書類に目を通し始めた。


 まるで現実逃避のように事務処理を始めたレンブラントだが、実はここは軍の施設ではない。彼らはケルス領を出て最初の宿屋にいる。


 裕福な人たちが訳アリの旅行で使う宿でもあり、店主の口は岩よりも硬いと有名だった。


 そして宿の内装はとても豪華で、一部屋一部屋がとても広い造りとなっている。だからレンブラントの部屋には寝台もあればソファもあるし、文机だって完備されている。


 もちろん数種類の飲み物だって、既に部屋に用意されている。


 そんなわけでダミアンはいそいそと自分でコップにミルクを注ぎ、ひしゃげたパンを食べ始めた。


 ちなみにダミアンはこう見えても伯爵令息だったりする。この国大丈夫?などとは思わないで欲しい。


 あと、言わなくても良いことかもしれないが、このバケットはベルが馬車に置き忘れたもの。


「……で、例のお嬢ちゃんはいずこに?」

「二つ隣の部屋にいる。今はラルクとロヴィーが部屋の前で護衛中だ。あとマースは、館内の入口。御者のモーゼスは裏口担当だ」


 端的に答えたレンブラントに、ダミアンはパンをもごもご咀嚼しながら頷く。


 そしてミルクと一緒に飲み込んだあと、感心したように腕を組んだ。


「へぇー徹底してるね。っていうか、あのお嬢ちゃんが逃げ出しそうって感じなの?」

「いや。それどころか、こちらが拍子抜けするほど大人しくついてきてくれた。……想定外の出来事があったもんで怖がらせてしまった。それに急いでいたとはいえ、手荒な真似もしてしまった。だが正直助かった───……さすがに泣かれたら、困るしな」


 最後にポツリと呟いたそれは、失言だったのか、胸の内が零れてしまった本音だったのか。


 とにかく聞かれたくはなかったようで、レンブラントは咄嗟に口元に手を当てた。


 けれど、時すでに遅し。その言葉は、しっかりダミアンの元に届いてしまっていた。 


「ふぅーん、泣く子も黙るレン隊長からそんな言葉を聞くとは、僕、夢にも思わなかったよ」


 そう言ってダミアンは、にやーと生温い笑みを浮かべた。

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