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美形軍人に連行された少女の末路 ~辿り着く先は見知らぬ夫の元か、投獄か!?~  作者: 当麻月菜
序章 値切りは連行の始まり

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2

 再び裏路地に秋風が吹く。


 表情が消えたベルの髪を揺らす。銀髪軍人の髪も同様に。

 

 時間稼ぎのためにベルは頬に掛かった横髪を、ゆっくりと耳にかける。


 銀髪軍人は自分の名を呼んだ。二度も、間違えることなく。

 つまり、人間違いではないのだ。自分を連行する為に、彼らはここにいる。


 そして、拳銃を構えている下っ端軍人達は、皆、無表情。上官の命令一つで迷うことなくトリガーを引く意思がヒリヒリ伝わってくる。


(ああもうっ、どうにでもなれっ)


 追い詰められたベルは、そんなやけっぱちなことを心の中で叫んで───……銀髪軍人に向け、こくりと小さく頷いた。





 ベルが同意すれば付いてくるのが当然といった感じで、銀髪軍人はすぐに歩き出した。


 その態度がどうも鼻に付いて、ベルはやっぱり逃亡してやろうかと思ってしまう。


 でも、あっという間に前後左右に詰襟軍人に囲まれてしまった。


 ちなみに彼らの手には未だに拳銃がある。

 銃口はさすがに向けられいないが、自分が背を向けた途端、迷わずトリガーを引くこと間違いない。


 ベルは背中に穴が開いた自分を想像して、またバケットを強く抱きしめる。


 さっきから力任せに抱いているソレは、もはやパンとは程遠い物体に変わってしまった。


 けれど、この状況で捨てることも、まして口に含むこともできず、ベルはそれを抱えたままとぼとぼと歩を進める。


 それから歩数にして十とちょっと。移動というには短い距離を歩いた先には、真っ黒な馬車が待ち構えていた。


 見るからに軍御用達。そしてご丁寧にも、窓には逃亡防止の為の鉄格子が付いている。


 これに乗り込む自分を想像して、ベルは情けなさに泣きたくなった。


「乗れ」


 躊躇しているベルに、銀髪軍人は感情の読めない声で乗車を促した。


 いや、促すという表現より、命令と言った方が正しい口調だった。


 それでもベルの足は動かない。


 一度は頷いたものの、これに乗るということは、どこかに連れていかれるということになる。


 そして向かう先は、間違いなく牢屋とかそういう類のところ。まかり間違っても年頃の少女が喜ぶ場所ではない。


「……あの、私はどこへ」

「黙って乗れ」


 ダメもとで銀髪軍人に問うてみたけれど、返ってきた言葉は望まぬものだった。


 思わず男の顔を見れば、あろうことか睨み付けられてしまった。罪人相手に説明をするなど手間でしかないのだろう。


 例えそれが身に覚えのないことだとしても、この男にとっては関係ないようだった。 

 

 ベルは世界中にいる銀色の髪を持つ人間が嫌いになった。

 

 あと心の中で「これだから軍人は」と悪態も吐く。


 ベルはとある出来事がきっかけで、軍人嫌いになった。そして今回の一件で、来世まで軍人を毛嫌いできる自信がついた。なんなら、その次の来世だってイケる気がする。 


 でも、そんなことを口に出すのは詮無いこと。だからベルは嫌々ながら馬車に乗り込んだ。


 座席に腰かける前に、扉が閉まり乱暴に施錠される音が響く。


 それから馬車は、何かに追い立てられるかのように勢いよく走り出した。


 




 

 鉄格子の隙間から流れるように過ぎ去っていく景色を、ベルはじっと見つめる。


 街は変わらず賑わっていた。


 そしてとても平和だった。一人の少女が軍人に連行されたことなど、なかったことにして。


「……こうなったら、仕方がない。覚悟を決めよう」


 ベルはこつんと窓に額を当てて独り言ちた。


 何の因果かわからないけれど、望まぬ歯車が回り始めてしまったのだ。


 神様とて、時間を巻き戻すことはできない。

 それに巻き戻す必要も、きっとないはずだ。


 ベルはケルス領を出たかった。とある目的の為に。


 そしてその時の為にとずっと前から準備をしていたのだ。あとは気持ち次第というところまで完璧に。


 だから今日の理解不能な出来事は、もしかしたら腰が重いベルにしびれを切らした神様が、「さっさと行け!!」と背中を押してくれたのかもしれない。


 そう思ったら全てがストンと胸に落ちた。


 でも神様からGOサインを貰っても不安はある。この行動が、大切な人達を傷付ける結果となるのは目に見えているから。




【ベル様、どうかご自身がその時と思われた際には、我々のことは捨て置いてください】




 後ろ髪を引かれるベルを叱咤するかのように、師匠の言葉が脳裏をよぎる。


(よしっ。気持ちを切り替えよう!)


 ───パチンッ。


 ベルはためらいを消すために両手で頬を叩いた。


 そして目を閉じ気持ちを切り替える。


 目的を成功させるの為に、この移動の間にちゃんと考えようと決めた。これから自分がどう動くのが最善なのかを。





 軍御用達の馬車はお世辞にも乗り心地が良いとは言えない。


 丈夫さだけが売りのようで、車輪の音が車内まで響いてくる。うるさいことありゃしない。


 ベルは更にきゅっと目を瞑って、思考の妨げになる全てを排除した。

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