14. 二度目のキスは…
剣術大会に始まり、カイティクス伯爵令嬢との騒動を経て、サンドラとアランは、学園の女生徒たちから、理想の恋人同士として憧れられるようになった。
サンドラは、嬉しいけれど、気恥ずかしい気持ちを抱えながら日々を過ごしていた。
その原因は、アランだった。
両想いになってタガが外れたのか、以前にも増して、人目を気にすることなく堂々と愛情を向けてくるのだ。
春になり、騒動を知らない新入生たちが入学してきた。彼女たちもまた、二人の仲睦まじさやアランの溺愛ぶりを目の当たりにし、愛のある婚約に憧れを抱いているようだった。
恥ずかしいから少し自重してほしいと、アランにお願いしても、「理想の恋人像を裏切ったら、後輩たちが可哀想だろ?」という訳の分からない理由で、まったく取り合ってもらえなかった。
ユールに至っては、いつの間にか「愛のある婚約シリーズ」というアクセサリーの販売を開始したらしい。私たちに、お揃いの指輪やブレスレットのサンプルを「感想を聞かせてよ」と言ってプレゼントしてくれたので、何も知らずに身につけていたら…。
いつの間にか、勝手に広告塔にされていた。
ちなみに、売れ行きは絶好調らしい。
——そして季節は巡り、再びサマーパーティーの日がやって来た。
「アラン君、節度を持ったお付き合いを頼むよ」
「もちろんです」
今年もアランの色を全身にまとったサンドラがエントランスへ向かうと、そこには何度目かになる “笑顔なのに殺伐としている”不思議な光景があった。
サンドラの隣で、母が呆れた表情でため息をついた。
「もういいから、二人とも早く馬車に乗りなさい」
学園の式典ホールに到着すると、昨年同様アランとダンスを踊った。
しかし、昨年と違ったことは、そのまま三曲続けて踊ったことだ。
サンドラは、幸せすぎた。ふわふわした気持ちで、まるで宙に浮いているかのように、心が弾んだ。アランも同じ気持ちなのか、熱に浮かされた表情でサンドラを見つめている。
「サンドラ、少し中庭に行かないか?」
アランが、そっと耳元で囁いた。サンドラが上目遣いで頷くと、優しく腰を抱き、エスコートするように中庭へと向かった。
サマーパーティー仕様にライトアップされた中庭は、柔らかな光に包まれ、とてもロマンチックな雰囲気に満ちていた。
「去年のやり直しをしたいんだ」
そういうと、アランは熱のこもった眼差しでサンドラを見つめた。そして、そっと彼女の髪の先を指先ですくい上げ、そこへ口づけを落とした。
「サンドラ、君を愛している。卒業したら結婚してほしい」
その仕草も、言葉もすべてが愛しくて、サンドラの胸は高鳴った。
「アラン、ありがとう。私もアナタを愛しているわ。ずっと側にいさせてくれる?」
そう言って抱き着いた。サンドラにしては大胆な行動に、アランは愛しそうに目を細め、ぎゅっと抱きしめ返した。
そして、耳元でそっと囁く。
「キスしてもいい…?」
サンドラは、その言葉に真っ赤になりながらも、上目遣いでコクリと頷いた。
ライトアップされたロマンティックな雰囲気の中庭で、二人の距離はゆっくりと近づいていく。
そして、そっとキスをした。
二度目のキスは、甘くて蕩けるような味がした。
——その後、サマーパーティーの中庭でキスをすると両想いになれるという伝説が、ユロリア王立学園で語り継がれるようになったとか。
…ちなみに、その噂の発端が私たちだと知ったのは、ずっと後——私たちの子どもが学園に入学する頃のことだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
初作品でしたが、最後まで読んでくださる皆様のおかげで無事完走できました。
本当にありがとうございました。
今後は、本編には書ききれなかった“おまけ話”を書ければいいなぁと思っています。
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