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氷の次期当主

私は魔力を込めて両手を軽くパンと叩くと一瞬にして氷の魔法は溶けてしまい、料理のスープも暖かい湯気を出していた。


「レイティシア、お前を覚醒者だと認める」

「ありがとうございます。お父様」


私はスカートの裾を摘んで、上品にカテーシで挨拶をする。

顔を上げると、真っ直ぐな目でお父様を見た。


「魔法覚醒者としてお願いがございます」

「言ってみろ」


「私の部屋をお義兄様たちのような綺麗な部屋にして、衣食住の保証をして頂けますでしょうか?もちろん腐ったスープなんて論外です」


「要望を叶えよう。そこのお前、すぐにレイティシアの部屋を用意しろ」

「かしこまりました」


お父様の言葉を聞いた侍女の一人は慌てて食堂を後にした。

これで一つ私の目的は果たした。

全員がいる場で魔法を使い、お父様に私が魔法の覚醒者であると同時に跡取り候補だと認めさせればアーノルドと同様に馬鹿な虐めも無くなるはずだ。


「では要件は終わりましたので、私はこれで失礼します。暖かい朝食の方お待ちしておりますね」


そう告げると私はその場から後にした。


一時間後。

侍女から案内されて部屋の一室に赴いた。

そこは豪華な調度品の数々、ふかふかのベッド、クローゼット、まさしく貴族令嬢の名に相応しい部屋だった。


「こちらがお嬢様の新しい部屋になります」


(ここが私の部屋…。ちゃんとした部屋が宛てがわれるか、ちょっと心配だったけど大丈夫なようね)


「あ、あのお嬢様…」

侍女は私に言いにくそうな態度でビクビクする。

私は侍女の態度を見て即座に理解する。


彼女は私のことを今まで影でずっと虐めていた。

妾の子である私は自分より立場が低い者、さらにグロリア家の次期当主はアーノルドだと思い、アーノルド側についていたのだろう。


だけど、それが今はひっくり返った。

私が力を使ったから。


「ありがとう。もう戻って良いわ」

にっこりと笑顔で侍女を追い返す私。

だけど彼女は私のご機嫌取りをするように必死で言ってくる。


「今後お嬢様のお世話を致しますので、どうか、どうか私を傍に置いて頂けませんか!今すぐにお嬢様に似合うドレスをご用意致します」


「別に良いわ。服なんて自分でも着れるし、身の回りは自分で出来るから。それに…私あなたがしたこと許すつもりないから」


私から冷ややかな視線を向けられた侍女は顔を歪め、逃げるようにその場を後にした。


「本当に面倒臭い…」


はぁ…と短いため息をつく。

そして私は改めて室内を見渡す。

ひとまず、グロリア家で自分の部屋を手に入れることは出来た。

衣食住の心配はしなくて大丈夫だろう。


父は厳格で厳しい人だが力ある者を認めるところがある。

前世でアーノルドは魔法は覚醒しなかったもののグロリア家の嫡男で剣術もそれなりに出来ていた為、次期当主として扱われていた。

今思えばそれは父がアーノルドに対しての期待も含んでいたのかもしれない。

何れ彼が氷の魔法を覚醒することに。


私はベッドに行き、座る。

ベッドのふかふかの感触が伝わる。


「凄い、ふかふかだわ。部屋に案内される前に食べた食事も暖かくて、美味しかったし。力を使って正解ね」


父に私の力を認めさせた。

次の目的としてやるべきことがある。


私は強い決意をしながら手のひらをぎゅっと強く握りしめた。

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