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イザベラ女王のさいきょう軍団

ついにイザベラ女王の率いる王国軍は魔王の住む居城へと軍をすすめた。

女王は最後の決戦を望んだのである。

しかし、国王軍の兵の疲労や兵糧はもはや限界に近づきつつ有った。


最後の力を振り絞る国王軍、しかし魔王城の城門を守る巨大なゴーレムに攻めあぐねていた。


城にかかる橋を進む国王軍、門の前に立つゴーレムの一振りで数人の兵が谷に落ち、ゴーレムの足踏みで数人が踏み潰されていった。


三度の突撃に失敗すると老将軍は攻撃を停止し睨み合いとなってしまったのである。


今夜の軍議はの老将軍の奏上から始まった。


「もはや我が国王軍に余力は残されておりません。明日の突撃で城門を突破できねば我が軍に魔王を倒す力はございません。」

「将軍、まだ三回は戦えるだけの兵糧はある。と聞いております。全力で城門を攻撃できないのですか?」

「女王陛下、畏れながら。三回、ただそれだけです。それが我が軍の限界でございます。三回戦えばもはや何も残されていません。三回目の突撃の後はもはや軍の体裁を整えていないでしょう。」

「ここまで来たのです。多くの兵が死にました。あと一歩なのです。あと一歩で魔王を滅することが出来るのです。」

「女王陛下、国土は守りました。民は復興を信じています。魔王軍は壊滅し、今なら国軍を維持したまま撤退できます。」

「わかりました、国軍に魔王城を落とすだけの力が無いと言うのですね?あと一歩で魔王を」

「女王陛下、無闇な突撃で兵を死なす訳にはできません。兵は家族に帰す時期であります。国軍兵士は家に戻れば父親としての仕事が有るのです!!」

「フフフ、わかりました。明日の朝、異界の軍勢を召喚します。準備を行いなさい」

「女王陛下!!止めて下さい!あなたの命はもはや。」

不適に笑う女王の笑い声はどこか狂気の孕んだ物であった。軍議に参加した者は全て、ついに女王陛下が気がふれたと思った。

「ハハハッ!そうです、兵には家に妻と子供がいるのです!!私は夫も息子も戦って死にました!!コレは私の私闘です!私から家族を奪った魔王との私闘です!!」

「女王陛下!国王と王子は国土と国民を守って戦って死んだのです。この戦果を無駄にしないのが残された我々の責務です!!」

「わかりました、一度だけ。一度だけ私の私闘に付き合ってもらいます。あす、明朝に異界の軍勢を召喚します。私の命と引き換えです。解散しなさい!!」

軍議の一方的な終了宣言で席をたつ女王に老将軍は異を唱えた。

「女王陛下!!未だ王国の血が途絶えた訳ではありません!国力が戻れば必ずや強力な軍が出来ましょう。」

女王は耳に入らなかった様に悠然と退席した。


翌朝、女王の元気な笑顔で軍幹部は安堵したが、挨拶の次の言葉で奈落の底に落とされた。

「召喚魔方陣の準備は整ってますか?」

「女王陛下、やはり行うんですか?」

「はい、やります。その為に昨日は早く床についたのです。今日は身体の調子も良いのです。」

空気を読まない宮廷魔術師が声を掛けた。

「徹夜で魔方陣を完成させました。」

「そうですか。ありがとうございます。これで、魔王を滅ぼせば。私の命など安い物です。」

混乱する軍幹部を尻目に、朝の日課を片付けるような素振りで、命を削り魔方陣に魔力を注ぐ女王がいた。

「さあ、異界の最凶の兵士よ!!我が慟哭に答えなさい!」

魔方陣の光が消えると。

中央に一人の異形の人がいた。


その姿はまるで緑色のオーク。高い上背と突き出した腹、胴回りは病的な太さで、全身まだらの緑と茶の斑点模様、顔まで緑色で血走った眼がまさに異常な狂気を孕んでいた。

もはや、最後の魔力を注ぎ込んだ女王は異彩を放つ異界の戦士に命じた。


「あの城門を守るゴーレムを倒し、敵の首魁なる魔王を滅しなさい!!」

「レンジャー!!」

「亜人の一匹も逃すのではありません!!」

「レンジャー!!」

「国軍兵を助け。魔物を倒すのです!」

「レンジャー!!」

「わたしの言っていることがわかりますか?」

「レンジャー!!」

「・・・」


いまいち不安になった女王を尻目に、異界の戦士は城門前の橋をただ一人進み。

中央でいきなり跪くと。後ろに向かって叫んだ。

「後方!退避せよ!!」


「ええっ、喋れるんですか?」


兵士の呼びかけに答える事無く、肩にぶら下げていた筒をゴーレムに向けると、

「レンジャー!!」

掛け声と共に轟音と煙が伸びて、あれほどの強靭さを誇ったゴーレムの上半身が大音響と共に一瞬で消え去った。

膝をつき、崩れ落ちるゴーレム

「「おおお!!」」

感嘆の声を上げる国軍兵士たち。

閉まった城門に対し、魔法筒の操作を終える異界の戦士、たて続けに鋼鉄の城門に魔法筒を打ち込んだ。

「レンジャー!」

人が通れる程の穴が開いた城門の穴に何かを投げ込む異界の戦士。


城門の奥で何かが光ると。

異形の戦士は城内へと進んでいった。

「レンジャー!」


呆然とする、国軍兵士に老将軍は

「今!異界の勇者が魔王を倒すべく城内に進攻した!国軍兵は魔王城を包囲し警戒せよ!!」

じりじりと時間だけが進み。

太陽が頂点にかかろうとするころ。

いきなり魔王城が轟音と砂埃と共に大地に沈んでいった。

砂塵がはれ、消え去った魔王城の空には今までには無かった。青空が広がっていった。

魔王の存在を示す、不吉な瘴気を孕んだ雲は消え去ったのである。


将軍は叫んだ

「おお!!魔王は滅んだ!!我々は勝利したのである!!」

女王イザベラはその場にひざまついて祈った。

「おお!神様!!わたしの罪深い私闘に力を貸していただきありがとうございます。」



王都に戻った国軍は民衆の歓声によって迎え入れられた。

もはや、魔王は居ない。魔物の軍勢もない。我々は狩られる生物ではないのだ。


勝利の歓喜が過ぎ去った後の王都では冷静さを取り戻しつつあった。

多くの兵士が家庭に帰り、避難民が生まれ故郷の村を目指しつつあった。

今まで暮していた村は、長らく放置されていたし、獣の巣に成っているだろう。

その目には多くを失った悲しみや、喪失感は在るが。どこか表情に明るい者が多かった。

これからはきっと良くなるという。希望があったからである。


ただ一方的に殺されることは無いのである。

魔物の出ない森は神の恩恵の森である。


復興の活気溢れる、王都にイザベラ女王は病床にあった。

生命を引き換えに魔力を使い尽くし、もはや命の尽きるの待つばかりであった。


「女王陛下、お身体はいかがでしょうか?」

「おや、将軍、死に損いを見に来たのですか?」

「女王陛下、おたわむれを。死に損いは私でございます。息子も孫も死にました。もはや私一人でございます」

「そうでしたか、私のほうが恵まれていたとは思いませんでした。戦の時は私は最も不幸な女だと思っていたんですよ。」

明るく笑う女王に老将軍は安堵した。

「将軍、私は最近、寝るたびに過去の夢を見るのです。あの時ああしていれば。こう決断していれば、もっと多くの人が救えていたのではないかと。」

「女王陛下私もです。」

「ああ、将軍、私が呼び出した異界の軍勢にも思うのです。彼等が守る国と国土はどのような物であったのかと。」

「碌な国ではありますまい。良い兵とは良い父親なのでございます。殺戮の饗宴に酔ったり、自分の死に酔ったりするなど、もはや魔物と変わりません。国を守る兵士とは必ず家に帰り家庭の父親としての勤めを果たすものが最強の兵士なのでございます。」

「フフフ厳しいですね、将軍、」

「生きて帰ってこそ、兵士なのでございます。」

「そうですか、そうですね。夫と息子を戦で無くす様な女王には耳の痛い言葉です。」


女王は病床の窓から空をみた。

森は緑で、空は青く。

魔王の片鱗は何処にも無い。多くの物を失ったが、最後に望んだ平和な国だけが残った。

「将軍あとはおねがいします。娘の力になってください。」

「この老体の続くかぎり…。」


眠りにつく女王に森の小鳥のさえずりが遠く聞こえてきた。










「レンジャー!!」



あとがき

やあ、(´・ω・`)ようこそ、スローターハウスへ。

この話はサービスだから、まず読んで 落ち着いて欲しい。

じつはこの話は「レンジャー!!」って言いたかったダケで書いた話なんだ。

ギャグのつもりだったんだよ!!

で。3話を書いて1話を書いて2話が長くなった。

1話のは、あんまり考えてないけどイメージ的には関ヶ原合戦後の食詰め足軽

2話のは、日中戦争初期~中期の日本軍

3話は「レンジャー!!」(空挺フル装備)


次のお話は…。


追伸なお3話の魔王の死亡原因は建物の崩壊による圧死(手持ちのC4爆薬&対戦車地雷で城を吹き飛ばしただけ。)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 残ったレンジャーはなにしてるの? [一言] レンジャー! レンジャー! レンジャー! ところでなんでレンジャーなんだろうね
[一言] 面白かった。
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