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敏感な鼓膜

桜灼 零透(オウシャク レットウ)」年齢16歳、12月26日生まれ、黎殿学園2年生、身長180㎝、体重不明、性別不明。

 悩みは誕生日がクリスマスと被るのでクリパついでに祝われること。

 

 黒っぽい紫色の髪は地毛。

 八重歯のせいで嫌な目に遭った経験がある。

 

 憧れの人はかつて一人で国家転覆を企み、数千人が死ぬ世界最悪のテロリズムを起こした謎の人「メサイア」。

 現在桜灼 零透はこの学園を意のままにして欲望の限りを尽くす特薦に反抗するテロ組織「メシア」のリーダーをやっている。

 ――

 変な文章が流れるエンドロールが終わり、最後に桜灼 零透ドキュメントというタイトルが出る所まで見終えると俺は深く息をつき座っていた椅子にもたれた。

「えぇと……つまりさっき桜通りで話したことは全部嘘で、ここに俺を連れてきたのは自分がリーダーをしているテロ集団に俺を勧誘するためって事か?」

 

 長髪もとい桜灼は指を鳴らして言う。

「その通り!君がちゃんとエンドロール読むタイプで助かったよ~!」

 

 俺は暗闇の奥にある倉庫の天井を仰ぐとため息交じりに言う。

「えぇと、まず事情を訳分からん自作の自分語りドキュメンタリーのエンドロールで説明すんな、あともう一つ……」

 

 俺は桜灼を意識的に威圧感を出した目で見て言う。

「冗談抜きで教えろよ、命日について……」


「命日を自殺に追い込んだ奴が特薦の中にいてその正体は……ここから先はメシアに入ってから教えるよ」

 桜灼の目が妖しく光る。

 

 俺の心はもうすでにこいつのあらゆる言葉に惑わされてもんじゃ焼きみたいになっていた。

 それを整理して腹の中に納めるまで俺は何も言えなかった。

 

 俺たちの会話が止まり倉庫が静かになるとどこかで水の落ちる音が定期的に聞こえてくる。

 ポチャン……ポチャン……と。

 水の音は俺の思考を遮り、苛立つ心に油を注ぐ。

 

 そして腹立たしい水の音がようやく止むと、俺は桜灼に問いかける。

「そもそもお前は何で俺を組織に入れたがる?」

 

 桜灼は俺の質問を長年離れ離れだった最愛の人の様に抱きしめて言う。

「正直その言葉を待っていた!単刀直入に言おう!私が君を勧誘しようとしていた理由……それは!」

 

 ガチャン!!

 突然倉庫に鳴り響いた扉の音に桜灼は話をやめる。

 

 先ほどまで閉まっていたはずの扉、そこから入ってきたのは俺がよく知っている顔だった。

「深水?」

 喜多見 未垂、この学園に入って初めてできた俺の男友達だ。

 ――

 あの後、俺は桜灼から「我々の志は同じだ、僕はこの倉庫で君を待つよ……ただしテロ組織はテロ組織それなりの覚悟はしてきてね?」とだけ言われ外に出された。

 俺にはもう分かっていた、桜灼が俺をあそこまで勧誘したがる意味を。


「しっかし侮れないな~この位置情報共有アプリってのも……たくお前よ~あんなに人の良い寮母さんを心配させてんじゃねぇよ~!」

 喜多見は発泡スチロールの様に軽い声でそう茶化す。

 

 俺はそんな喜多見の顔を見れなかった……なぜならテロリストになるかならないか、本気で悩んでいる   自分が喜多見の様な良い奴と関わっちゃいけないと思ったからだった。

 そんな俺の浅はかな思考は夕方も終わりかける頃の街灯の元で弾け飛んだ。

 目の前で大柄な学生、首元では三年生であることを証明するバッジがキラリと輝いている。

 

 喜多見は震える声で言う。

「深水……あれってあの女の子、服脱がされようとしてるよな?」

 

 俺はもういっぱいいっぱいだ、何も考えられなくって胸が締め付けられて喉の奥に蓋をされたような感覚になって、地面に膝を付ける。

 

 喜多見はそんな俺にかまける事無く一直線で三年の男を殴りにかかった。

「うぉぉぉ!離せやァァァ!」

 

 ガシ!ドォン!

 しかし喜多見は頭を掴まれて壁に押しつけられるとそのまま失神したのか空気の抜けた風船のように地面に倒れた。

 

 喉が裏返ってくるような感覚がした、そんな時に俺は父の言葉を思い出した。

「人の為に世の為に辛いときは自分の事を忘れてしまえ、自分を忘却するための言葉をただ一言決めるんだ」

 

 深水 英馬は地面に手をついて立ち上がり、ただ一言言う。

「ふざけやがって……変心(ヘンシン)

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