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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
帝国のアドバイザー
87/122

87足掻き

登場人物


ロウル   記憶喪失の主人公・交通事故死して狼に転生した?(★4テンロウ)

ローゼリア ロウルを助けた貴族令嬢(人間)

ノリク   ローゼリアの父親(人間)

タンゴ   ノリクの側近(★5キリン)

コンスタン 帝国御三家パヴェル公長男(人間)

アレクサー 帝国御三家パヴェル公次男(人間)

シャミア  諜報部隊長(闇妖精)

 もう夜遅いにも関わらず、シャミアさんはお嬢様の屋敷に来てくれた。

 俺はシャミアさんにお礼を言った後、情報を聞いて策を考える。



「パヴェル公とコンスタンとの関係は良好なのですか?」

 俺は状況を話した上で、シャミアさんに聞く。


「あまり良くないですね。

 パヴェル公としても、できれば弟のアレクサー様に爵位を譲りたいと考えている節があります。」


「優先候補者を却下していい条件は、健康的な問題と世継ぎとして不適切な失態を犯した場合ですよね。

 もうすでに、候補を外して問題ない環境が整っていないですかね。」


「ただ、優先候補者を外すというのは、他の貴族に攻撃の口実を与えます。

 イワン皇帝の体調が優れない現状、パヴェル公も次期帝位候補の座から遠のく事は避けたいのだと思います。」


「となると、パヴェル公が決断するだけの材料を出す必要があるということですね。」


「タンゴ様は結構強引な事をされますから、コンスタン様に大怪我をさせて健康問題で堂々と後継候補から除外させたりとかしかねませんが。」

 シャミアさんが言う。

 タンゴさんは今回は動かないだろう。

 寧ろ、俺が身代わりを使わざるを得ない状況に追い込もうとするに違いない。


「確かに、パヴェル公に事前に了解を得た上でコンスタンの奴を襲って、健康問題で後継をアレクサー様に変えるというのはありですね。」

 正直、タンゴさん的なやり方なのが気に食わないが。

 何と言うか、同じモンスターなのに同族に対する考え方の違いで、俺はタンゴさんとは相容れないと思った。


「ただ、コンスタン様の周りには屈強な護衛がいるので簡単ではないでしょう。」

 まあ、これは最終手段だ。

 他に手を考えないと。


「コンスタンが過去にやらかした内容について把握をしていますか?」


「大体把握してます。

 主なものは・・・」

 俺はシャミアさんの話を聞いて絶句した。

 これはもう、完全に権力を笠に着たレイプ魔だよ。

 奴のせいで大勢の人間が泣かされたんだろうな。

 それよりも、お嬢様を泣かせたことは絶対許さん。

 絶対に後継者の座から引きずり降ろしてやる。


「パヴェル公としては攻撃される材料は作りたくはないが、できればアレクサー様を後継者にしたいという事ですよね。

 帝都とパヴェル公の本拠のバイカルで、コンスタンの奴の素行を噂でばらまけませんか。

 こんな奴が、次のバイカルロマノフ家の当主でいいのかって。」

 俺が言うと、


「えっ?」

 シャミアさんが驚く。


「何か問題がありますか?」

 俺が聞くと、


「いや、確かノリク様が別の部隊に、ロウル様が仰った事を指示していたと聞いていますので。

 ノリク様はその上で、パヴェル公と交渉をする予定だとか。

 世論の支持を得た上でスムーズにアレクサー様に後継を変える代わりに、ピュートル公や反乱軍との戦いで協力を取り付けるつもりのようです。」

 そうか、ノリク様が既に俺のために動いてくれていたんだ。


「既に、ノリク様が動いているのですね。

 それなら、俺はノリク様の策をサポートする方向で動いた方がいいですね。

 パヴェル公が判断するにあたり、重要な影響力を持つのは誰ですか?」


「第1妃様は既に他界していますので、レニン様をはじめとする側近の方々、外部ではマケルーノ公国のケイシュール公とフェニキア公国のロベルト公でしょうか。」

 シャミアさんが答える。


「噂をばら撒くには人がいた方がいいでしょうから、シャミアさんの部隊にも噂をばら撒いてもらえませんか。特に、バイカル周辺の貴族と、マケルーノ公国、フェニキア公国に。

 あと、お嬢様。もし、まだでしたらノリク様に話をしてケイシュール公・ロベルト公に働きかけできないか聞いてください。

 パヴェル公が相談する相手が、尽く後継者の交代に賛成なら、パヴェル公も動きやすいでしょうから。」

 俺はそう言って、シャミアさんとお嬢様にお願いする。


「ケイシュール公は、後継者の交代には黙っていても賛成してくれると思います。」

 シャミアさんが言う。


「確かにアレクサー様の第1妃になるのは、ケイシュール公の娘のレリーナ姫でしたね。

 アレクサー様より大分年上ですけど。」

 お嬢様が言う。

 それなら、ケイシュール公は積極的に後継者の交代を進言するだろう。

 それにしても、ケイシュール公は先見性もあるな。パヴェル公の後継者がアレクサー様になることを見越していち早く婚約の話を持って行ったわけだ。そのケイシュール公が、周囲を全て敵に回す愚を犯すとは思えない。早くマケルーノ公国の調査結果が知りたいな。

 先にコンスタン対策を済ませる必要があるが。



 こうして、俺はパヴェル公が後継者を変える決定をしやすいようできる限りの策を実行して、パヴェル公の決断を待つことになる。

 とは言え、俺にはそれ以外にしておかなければならない事があった。

 タンゴさんの動きについてだ。

 もし、俺に自分の都合で仲間を使い捨てるよう仕向けているのだとしたら、俺の策に横やりを入れてくるかもしれないと思ったからだ。


「今回の件で、タンゴさんは何か動いているか分かりますか?」

 俺はシャミアさんに聞く。


「指示系統の関係で、タンゴ様から私に指示が来ることはありませんので細かいことは分かりません。

 部隊間の情報交換では、★4テンロウを探しているそうですが。」

 シャミアさんが答える。

 俺の身代わりの事だな。


「タンゴさんにとって、ノリク様のしている策は不都合があると思うのですが、何か動きがあれば教えてくれませんか。」


「ロウル、タンゴの事が気になるの?」

 お嬢様に聞かれ、


「実は、お嬢様がお風呂に入っている間にタンゴさんが話に来たのです。

 モンスターが人間の政治の世界に入れるよう同志にならないかと誘われたのですが、タンゴさんとは限界突破種以外のモンスターの扱いで意見に相違があって断ったのです。

 仲間モンスターを使い捨てにするタンゴさんのやり方には、俺は同意できなくて。

 タンゴさんが帰るときに思わせぶりなことを言っていたので、俺にどうしても身代わりを使わせようと画策しているんじゃないかと思ったのです。」

 俺はタンゴさんとの話についてお嬢様とシャミアさんに話した。


「タンゴも、お父様の策を潰すようなことはしないわよ。

 でも、私がいないときにロウルにそんな話をしに来たというのは気になるわね。

 明日の朝お父様に話してみるから心配しないで。」

 お嬢様はそう言って、俺を安心させてくれた。


 その日はシャミアさんに帰ってもらい、次の日の朝になる。



「ローゼ、おはよう。

 昨日ロウル君から何か話はあったかね?」

 ノリク様がお嬢様に話しかけてくる。


「お父様、なぜ知ってるの?」


「昨日タンゴから話があってね。

 万が一私の策が上手くいかなかったときに、ロウル君が替え玉を使うつもりがあるか探りを入れておくと言っていたのだ。

 ローゼが何か話がありそうに見えたからね。その件でロウル君から話があったかと思ったのだ。」

 それじゃあ、昨日のタンゴさん話は、俺の本心を確認するための探りだったのか。

 それなら、余分な話をせずに用件を直接言ってくれればいいのに。


「ノリク様、俺は自分の身代わりに罪もない他人が殺されるようなことはしたくないです。」 

 お嬢様から言ってもらうよう頼んでいたが、俺は、自分の思いを直接ノリク様に話した。


「そうか。

 万が一私の策が失敗した時のために、身代わりの★4テンロウを探すようタンゴに頼んでおいたのだが必要はないか。

 となると、私も絶対に失敗はできないな。」

 ノリク様が言う。


「俺も出来るだけのことはします。」

 できる限りノリク様の策の支援をしないと。

 今回は完全に当事者だしな。


「ロウル君の助言があると、とても助かる。

 私の進めている策を話すから、ロウル君の意見を聞かせてほしい。」

 そう言うと、ノリク様は自分の策を俺に話してくれた。


 内容はこうだ。

 過去にコンスタンの被害にあった侍女2人を買収して、また被害にあったと騒いでもらう。

 この騒ぎが大きくなるよう放置し、コンスタンの行動は側近でも止められないことをパヴェル公に印象づけるように、コンスタンの側近も買収済み。さらに、その側近がコンスタンと一緒に失脚しないようノリク様がしっかりとサポートすると、最悪次の職場斡旋すると約束済み。

 それと同時に、過去の被害者達を買収して、コンスタンから騒がないよう脅されたとパヴェル公の耳に入れてもらう。

 これで、パヴェル公からすれば、お嬢様の件で厳重注意した直後に、コンスタンがまたやらかした挙句、脅して黙らせようとしたという話が耳に入ってくるわけだ。

 そして、タイミングを合わせてマケルーノ公国のケイシュール公からも跡取りの交代を求めるよう働きかけてもらうことになっていると。

 さらに、後継者交代で批判が出ることを恐れているパヴェル公に対して、ピュートル公やニコラ公ではなくパヴェル公を次期皇帝候補として支持するとノリク様から友好貴族に働きかけるよう伝えると。

 ここまで押して、パヴェル公に後継者の交代を決断してもらおうという策のようだ。


 凄い。

 ノリク様は、コンスタンの野郎を嵌める気満々だ。

 と言うか、ノリク様は、俺なんか出る幕のないくらいの策士じゃん。

 冷静な口調で話してくれたけど、ノリク様も娘に乱暴をされて内心ブチ切れているんだろうな。


「凄いです。

 外部からの働きかけは、ケイシュール公だけだとレリーナ姫の件があって利益誘導に映るかもしれませんので、フェニキア公国のロベルト公とか直接利害の絡まない方からも押してもらえるようにすると効果が高まると思います。

 あとは、最悪の場合にパヴェル公に事前に了解を取り付けた上で、コンスタンを襲って健康問題で無理やり退場してもらうくらいでしょうか。」

 俺は言うが、ノリク様の策が完璧すぎて、正直これくらいしか言うことがない。


「そうだな。

 やはり、君の意見は参考になる。

 ロベルト公や、周辺貴族にも働きかけておこう。

 最終手段はタンゴの案と同じだな。パヴェル公の様子を見て、そちらの準備もしておこう。」

 ノリク様が言う。


「ありがとうございます。

 先日の反乱軍のアジトの襲撃部隊の全滅の件は申し訳ありません。

 調査を進めて、対策を考えます。」


「私は、今そちらまで手が回らないから、頼むぞ。

 コンスタンの件は任せておけ。君を渡すようなことには絶対させないからな。」

 ノリク様にここまで言って貰えて、俺は嬉しかった。


 話が長くなってしまったので、ノリク様は慌てて食事を済ませると、急いで政務のために王宮に出かけていった。

 ここまで準備ができているならコンスタンの件はノリク様に任せて、俺は反乱軍の強力な相手の対策を考えないといけないな。



20230209


話番号修正・誤字等修正

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