80反乱軍
登場人物
ロウル 記憶喪失の主人公・交通事故死して狼に転生した?(★4テンロウ)
ローゼリア ロウルを助けた貴族令嬢(人間)
アンナ ローゼリアの母親(人間)
ノリク ローゼリアの父親(人間)
お嬢様の部屋には本棚が2つもあり、色々な本が並べてある。
お嬢様の使う様々な小物らしきものが入った箱もある。
「お嬢様、普段は何をしているの?」
部屋に戻った後、俺は、お嬢様の普段の生活について聞いてみた。
「普段は講師に来てもらって色々な分野の勉強をしているわ。
今日みたいに休みの日は買い物に出かけることもあるけど、護衛隊の方とチェスをしたりすることが多いわね。」
お嬢様が答える。
チェス?
前世でもあったけど、この世界のチェスってどんなものだろう?
「チェスって何?」
俺はこの世界のチェスに興味が沸いたので、お嬢様に聞いてみた。
すると、お嬢様は棚の中からチェスを出してきてくれた。
「2人で交互に駒を動かして、相手のキングを取ったら勝ちよ。
駒毎に、動かし方が決まっているの。
ロウルもやってみる?」
お嬢様がチェスについて説明してくれる。
8×8の白と黒の盤。キング・クイーン・ナイト・ビショップ・ルーク・ポーンの駒。
俺が知っているチェスと同じだ。
チェスはあまりやったことはないけど、ルールくらいなら分かる。
俺はこう見えても前世で将棋は得意だったんだぜ。アマチュアだけど一応有段者だからな。
とは言え、こちらのチェスはルールが違うといけないからルールを確認するか。
「一度やってみたい。
やり方を教えて。」
俺は、お嬢様にチェスのやり方を聞く。
お嬢様は丁寧にチェスのルールを教えてくれた。
聞いてみると、俺の知ってるルールと全く一緒だ。
この世界のチェスは、俺と同じような転生者が持ち込んだものだろうか?
「それじゃあ、私が両手に駒を1つずつ持つから、どちらかを選んでね。」
お嬢様が言う。白の駒を選べば俺が先攻、黒なら後攻だ。
俺は、お嬢様の右手を前脚で指し示す。
出てきたのは黒い駒だった。俺が後行か。
「それじゃあ、私から行くわね。」
お嬢様はそう言うと、俺からみて右から4番目のポーンを2つ前に動かした。
クイーンとビショップの道を開けたな。
確かに有効な手だ。
「俺は、右から4番目のポーンを2つ前に動かしたい。」
お嬢様の動かしたポーンの前に俺のポーンを動かす形になる。
俺の前脚では駒を握れないので、俺はお嬢様に言って俺の駒を動かしてもらう。
「分かったわ。」
お嬢様は、俺の言ったとおりに駒を動かしてくれた。
俺とお嬢様はこうやって、チェスを進めていった。
俺はチェスに慣れてないので結構苦戦したが、将棋で読みの力を養ったおかげで辛くも勝つことができた。
「チェックメイト」
俺が言う。
「私の負けみたいね。
ロウル、チェスをするの本当に初めて?」
お嬢様が聞いてきた。
「昔、やったことがあるような気がする。」
実は殆どやったことはなくて、どちらかと言うと前世の将棋での経験だけど。
「狼なのに、チェスをやったことがあるの?」
お嬢様が驚いて聞いてくる。
「はっきりと思い出せないけど。」
前世は人間でしたとは言いにくいのでそれは黙っておく。
「ロウル、すごいわ。
それなら、色々な知識を学んでみない?
何か記憶を思い出すきっかけになるかもしれないわよ。」
お嬢様が心配して言ってくれる。
確かに、色々学んでみたら何かを思い出せるかも。
俺の前世が人間であることを隠しておくことに気が引けるけど、言っても信じてもらえそうもないし、俺は素直にお嬢様の厚意に甘えることにした。
「色々な知識ってどんなの?」
俺は、聞いてみる。
「私の本棚に、地理とか歴史とか色々な本があるから、読んであげるわね。
どれからにしましょうか?」
お嬢様は本棚の本を見ながら考える。
俺も本棚の本を見ると、世界の地理という本が目についた。
自分がどこから来たか知るためにもまずは、世界の地理を知っておきたい。
「この世界の地理っていう本が見たい。」
俺が言うと、
「ロウル、人間の文字が読めるの?」
お嬢様が聞いてくる。
「読めるみたい。」
俺は答える。
「そう言えば、アーバインの話していることも分かってたわね。
普通のモンスターは人間の言葉を聞いても理解できないし、文字を見ても読めないのに。」
そうなんだ。
俺は、なぜ文字を読めるのだろう?
少なくとも前世のすべての言語とは違うのに。
「何故だかは分からないけど、アーバインさんの話していたことが理解できたし、文字も読めた。」
俺にも何故だか分からない。
「だったら、自分で本を読んでみる?
読んでいるうちに何か思い出すかもしれないわよ。」
お嬢様が言ってくる。
「ありがとう。
とりあえず、この本から読んでみる。
何か思い出せるといいけど。」
俺は、お嬢様の本棚の本を読ませてもらうことにした。
世界の地理と言う本には、最初にこの世界の主な大陸について記されていた。
この世界の中央には五島諸島、東にはワノクニのあるジパング諸島、
西には広大なジャングルが広がるアマゾニア大陸、南にはストラリアの国があるオセアノ大陸、
そして、北には今俺がいるハキルシア大陸がある。
ハキルシア大陸は、中央を走るウラル山脈で東西に分断され、さらに大陸北部は永久凍土で人間が住むことができないため、ウラル山脈南の海岸沿いにあるエルシアの港を経由しないと山脈の向こう側に行けないようだ。
大陸西側はハキルシア帝国発祥の地であり開発が進んでいるが、東側は沿岸部とある程度奥まで開発されているものの、さらに奥は大森林があって、人間はあまり住んでいないようだ。
俺は、本を読んでこの世界の大まかな地理について理解できた。
読み終わると、お嬢様が俺のことをじっと見ていた。
「ごめんなさい。
読むのに夢中になっていて。」
お嬢様を待たせてしまったみたいなので、俺は先に謝った。
「いいのよ。気にしないで。
どう、何か思い出せた?」
お嬢様が聞いてくる。
「本の内容はよく分かったけど、何も思い出せなかった。」
俺は答える。
「そうか。
そんな簡単には思い出せないわよね。
でも、集中して読んでいたわね。面白かった?」
「俺はこういう本を読むと色んなことが分かって楽しい。」
「私の部屋には本が沢山あるから、いつでも好きな本を読んでね。」
お嬢様が言ってくれる。
「ありがとう。
色々読んでみたい。」
俺は答える。
その時、部屋をノックする音がする。
「はい。」
お嬢様が答えると、
「アーバインです。奥様が、お嬢様をお呼びです。」
アーバインさんが答える。
「ロウル、ちょっとお母様のところに行ってくるわね。
本でも読んで待ってて。」
お嬢様はそう言って部屋を出ていった。
それじゃあ、その間に他の本を読もうかな。
次は、『ハキルシア帝国の歴史』にするか。
俺が本を読んでいると、扉を開ける音がしてお嬢様が帰ってきた。
「ロウル、ただいま。
お母様に食事の件について聞いてきたわよ。
こぼすといけないから、私の部屋の中で食事をするのはダメだって。
私達と同じ部屋で食べることになったわ。」
お嬢様が言う。
「分かった。」
確かに狼の俺は、口を突っ込んで食べるしかないからな。
「ロウルは、本読むの好きみたいだから、好きな本を読んでてもらっていい?
私も自分の勉強をしないといけないから。」
お嬢様にそう言われ、俺はお嬢様の邪魔にならないようにお嬢様の机から離れて、本棚にある本を色々読ませてもらうことにした。
まずは、歴史の本の続きからだけど。
そして、夕方になってきて、再び部屋をノックする音が聞こえる。
「メイドのリナです。
お食事が出来上がりました。
今日は旦那様もお帰りです。」
「ありがとう。分かったわ。」
お嬢様が返事をする。
「ロウル、食事ができたみたい。
行きましょうか。
今日はお父様が早く帰ってきたみたいだから紹介するわね。」
俺はお嬢様の後について、階段を下りていく。
食堂に入ると、テーブルの上に料理が乗っていた。
貴族の食事だけあって、豪華だな。
テーブルの下には、ボールが置いてあり、推定俺の餌と思われる鶏肉を煮たものが入っていた。
こちらもいい匂いがする。
「ロウル、紹介するわ。
私のお母様よ。」
お嬢様が紹介してくれる。
貴族の妻をしているだけあって、綺麗だな。
お嬢様の年齢を考えればそれなりの年のはずなのに、全くそんな感じがしない。
貴族の世界で生きてきただけあって余り感情を表に見せない感じだけど、悪い人には見えないよな。
「アンネよ。
ローゼリアから話は聞いてるわ。
ロウルって名前なの?
ローゼリアの話し相手になってあげてね。」
お嬢様のお母さんが話してくる。
お嬢様のお母さんは意思疎通の魔法が使えるみたいだ。
「分かった。」
俺は答える。
「ローゼ、帰ったよ。」
そうしていると、お嬢様のお父さんが食堂に入ってきた。
お父さんは、顔からしていかにも賢そうな感じがバリバリ感じられる。
国の宰相をしているのだから、やり手じゃなきゃ務まらないよな。
やはり、貴族の当主だけあって、あまり感情を表に出さないな。
「お父様、お帰りなさい。
今朝連れてきた狼が気が付いたの。
紹介するわ、ロウルよ。」
「ロウルです。」
俺も名乗る。
「ロウル君と言う名前なんだね。
元気になってよかった。
話は聞いたが賢そうだね。
とても普通の狼には見えない。
私がローゼの父のノリクだ。
ローゼの相談相手になってやってくれ。」
お嬢様のお父さんが言う。
予めお嬢様から話は聞いていたんだろうけど、お父さん結構鋭いな。
国の宰相をやってるくらいだから、それくらい鋭くないと務まらないか。
「分かりました。」
俺は答える。
両親ともに忙しそうだから、俺がお嬢様の相手をしてあげないとな。
お嬢様とお父さんとお母さんが食事をする間に、俺はテーブルの下で餌を食べさせてもらう。
「大陸東側の貴族は全て反乱軍に参加したようだ。
これでいよいよ対決は避けられそうにないな。」
餌を食べていると、お父さんの話が聞こえてきた。
「相手の動きが早いですね。」
お嬢様が言う。
「私としてもこの早さは予想外だよ。
せめてもの救いは、反乱軍のアドバイザーの暗殺に成功したことだな。
これで、少しでも動きが遅くなってくれるといいのだが。」
お父さんが言う。
ハキルシア帝国ってこの大陸全てを支配する巨大国家のはずだけど、反乱が起こっていたんだ。
俺は気になったので、聞き耳を立てて話の内容を聞く。
お父さんの話によると、大陸の東側のメキロ家と言う貴族が大陸東側の貴族を巻き込んでハキルシア帝国から独立しようと反乱を起こしたようだ。
メキロ家自体はそこまで大きな貴族ではないらしいが、大陸東側の全ての貴族を巻き込んで味方に引き入れる手腕とそれをあっという間に成し遂げた行動力が脅威らしい。
そして、メキロ家の当主自体はまだ18歳の若さでそこまでの力はないらしいが、反乱の計画立案をしたと言われるメキロ家のウルとか言う名のアドバイザーが強敵だという。
お父さんは慌てて反乱軍の情報を探り、反乱軍の動きの速さの原因がそのアドバイザーだと気づくとウルの暗殺を狙ったようだ。
ウルは自分の策のために単独行動をすることが多く、幸運にも暗殺には成功したようだが、既に大陸の東側は完全に反乱軍の支配下となっているらしい。
お父さん的にはこれで反乱軍の動きが少しでも遅くなってくれればとのことだった。
ハキルシア帝国って、歴史で知ったけど過去に大きな反乱が2度も起こってるんだよな。
今回は大陸の東側全部が反乱に加わったことで帝国史上最大規模の反乱ってことになるよな。
これは、いよいよ戦争になるか。
俺は、お嬢様をしっかり守らないといけないな。
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