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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
帝国のアドバイザー
81/122

81好敵手

登場人物


ロウル   記憶喪失の主人公・交通事故死して狼に転生した?(★4テンロウ)

ローゼリア ロウルを助けた貴族令嬢(人間)

ウル    反乱軍盟主メキロ家アドバイザー。暗殺されたらしい。(★4テンロウ)


 餌を食べた後、俺はお嬢様と部屋に戻る。

 戦争になりそうならお嬢様を守るためにも、正確な情報を仕入れておかないといけないよな。


「お嬢様、戦争になりそうとかいう話を聞きましたけど、毎日食事の時にこんな話をしているの?」

 俺は、部屋に戻るとお嬢様が色々情報を持っていそうか聞いてみた。


「毎日と言うわけじゃないけど、最近は反乱軍の話になることが多いわね。」


「お嬢様を守るためにも俺も反乱軍絡みの話を聞きたい。

 お嬢様は詳しい話を聞いているの?」


「お父様は反乱軍絡みの話をしてくれるから、一通りの話は聞いているわよ。」

 それなら、まずはお嬢様に色々聞けばいいな。


「反乱軍の動きが早いって話だけど、大陸の東側を纏めるのにどれくらいの時間がかかったの?」

 俺は一つずつ聞いて行く。


「動き出してから大陸の東側がまとまるまで1~2ヶ月くらいね。

 その前から準備はしていたのでしょうけど。」

 地理的に大陸の東側って普通に軍が端から端まで行軍するだけで2か月半はかかる距離だよな。それを長くても2か月かからずに支配下に入れるとか、早すぎだ。

 一体、どんな裏技を使ったんだよ。


「メキロ家以外の貴族は支配されて反乱軍に加わったの?」

 普通に戦争して負かせて支配していちゃ絶対間に合わないからな。


「大陸の東側の貴族は昔から西側の貴族に対抗意識を持っているのよ。

 昔は東側って、左遷された貴族の行先だったから。

 西側に負けてたまるかって思いを持つ貴族が少なくないわ。

 そこをメキロ家のアドバイザーが上手く乗せて纏めたみたい。

 東側は人口が少ないから普通に考えれば西側と戦うのは厳しいはずなのだけど、それでも全ての貴族を説得して東側が纏まって反乱を起こすという意思統一ができたらしいわ。

 しかも、お父様が準備しようとしていた策も逆手に取られてしまったから。」

 お嬢様が教えてくれる。


「お父さんも何か策をしようとしてたの?」


「メキロ家が反乱を狙っているらしいという情報は入ってきてはいたから、お父様も策は考えていたのよ。

 メキロ家の近くにリッチモンド家と言う比較的大きな貴族がいるわ。当主のパール伯はお父様と仲が悪いのだけど、息子のアレン様とは普通に交流していたの。

 お父様はアレン様と連絡を取り合って、協力してくれる貴族と一緒にメキロ家包囲網を構築する準備を進めていたの。

 そこで、メキロ家のアドバイザーのウルは、それを逆手にとってお父様の偽の手紙を送ってアレン様を騙したの。

 偽の手紙を見たアレン様は焦って自分の父親を監禁すると、近隣貴族と共同してメキロ家を強引な攻撃に出て、待ち構えていたメキロ家の罠に嵌って返り討ちにあって戦死したわ。

 さらにメキロ家は当主のパール伯を救出すると、自分で差し向けたアレン様の行動をお父様が唆したと東側の貴族達に吹聴して、お父様の討伐を大義名分に反乱軍を立ち上げたの。

 リッチモンド家の当主のパール伯はお父様と仲が悪いから、メキロ家の策に同調して、メキロ家と仲が良くない貴族達を説得して回ったみたいで、あっという間に東側の貴族全てが反乱軍に加入したらしいわ。」


 なるほど、確かにその方法なら短期間で東側を纏めることができるか。

 しかも、大義名分の使い方が絶妙だ。東側の貴族達からしたら、完全にお父さんが悪者に見えてる。

 ウルと言うアドバイザー、大した策士じゃねえか。これは相当な強敵だな。

 だが、偽の手紙で騙して誘い出して返り討ちとか、その後お父さんに全ての罪を擦り付けるとか、やり方が汚なすぎるよな。

 証人は既に戦死しているし、当然証拠は隠滅しているだろうから、今から証拠を掴んで無実を訴えるのも困難だろうしな。

 戦争は最終的に勝ったものが正義だとは言え、俺は友達になりたくないタイプだ。


 それよりも問題なのは、今回の敵の策はこちらの動きを把握していないと出来ないということ。諜報能力で完全に負けていると言うことだ。

 兵力で優位かもしれないが、このまま戦争になると厳しいな。

 あと、敵のアドバイザーのウルという名前。どこかで聞いたことがあるような気がするけど、気のせいか。

 とりあえずは、ウルの暗殺に成功しているなら一安心なのかもしれないけど、これだけの策を繰り出してくる奴がそうも簡単に暗殺なんてされるだろうか?

 影武者とかがいてもおかしくないし。もし、まだ生きているとしたら危険だよな。


「お嬢様、ウルというアドバイザーの暗殺に成功したのは間違いないの?」

 俺は気になったので聞いてみる。


「うちで開発した新兵器で遠距離から狙撃して完全に体を貫いたはずだから仕留めたのは間違いないって聞いてるわ。」


「死体を確認したわけじゃないの?」


「かけつけた敵兵に阻まれてそこまではできなかったみたい。」

 ちょっと待て。死亡の確認ができていないじゃん。詰めが甘すぎだって。


「死体の確認ができていないわけですよね。

 認識が甘すぎです。

 仕留め損ねた可能性も考えておくべきです。」


「でもメキロ家を探っている部隊の報告では、その後、ウルはメキロ家に一度も姿を現していないそうよ。」


「そんなの変装とかで何とでもなるでしょ。」


「ウルは、モンスターなのよ。ロウルと同じ★4テンロウよ。

 調べた限りメキロ家で唯一の★4テンロウである以上、変装で紛れることはできないわ。」

 驚いた。

 敵のアドバイザーのウルってモンスターなのかよ。

 しかも俺と同じ★4テンロウなのか。

 やり口も汚いし、俺と同じ★4テンロウということもあって、無性にこいつの好きには絶対させたくないという対抗意識が芽生えてきた。


「それなら変装は難しいかもしれないけど、こちらを油断させるためにあえて姿を現さないという可能性はあります。

 ウルが生きている可能性は想定しておいた方がいいです。

 常に最悪を想定しておかないと、足元をすくわれるかもしれませんので。」


「ロウルは細かいところに拘るのね。」

 お嬢様、そこはしっかり押さえないと危ないですって。

 お父さんの口ぶりもウルを仕留めた前提になっていたし、はっきり言ってお父さんも認識が甘すぎだよ。

 そうやって詰めが甘いから、裏をかかれるんだって。

 兵力で勝っているとは言っても、諜報能力で負けているし、このままじゃ下手すると戦争に負けかねない。

 正直、お父さんのやり方に口を出したい。

 だけど、ただのペットでしかない俺が国の戦争方針に口を出すとか有り得ないよな。


 いや、ちょっと待て。敵のアドバイザーのウルもモンスターなんだよな。

 奴はどうやって、メキロ家の中でアドバイザーにまでのし上がったんだ?


「お嬢様、敵のアドバイザーのウルってどうやって人間の中でアドバイザーにまでなったの?」

 俺は、お嬢様に聞く。


「分からないわ。

 ウルについてはお父様が詳しく調べさせてたからお父様に聞いてきましょうか?」

 お嬢様が答える。


「お願いします。

 あと、お父さんに話をするなら諜報部隊を強化するように言って欲しい。

 偽手紙で誘い出されて裏をかかれている時点で、敵はこちらの情報を完全に把握できているって事だから。

 諜報力で負けた状態だと、また敵の策でいいようにされちゃいますよ。」


 俺がそう言うと、お嬢様は驚いた顔して俺の顔を覗き込む。


「ロウル、凄いわ。

 そんなことまで思いつくのね。

 何て言うか、アドバイザーみたい。」


「今日聞いた話から思ったことを言っただけです。敵のアドバイザーのウルだってこれくらい当たり前のようにやっていたわけでしょ。

 正しい情報を手に入れられれば、俺だってちょっとしたアドバイザーくらいはできますよ。」

 お父さんのやり方に口を出すためには、これくらいは言っておいた方がいいかもと思って言ってみる。


 その後、お嬢様がお父さんに話をして、諜報部隊の強化を考えてくれることになったようだ。

 それだけでなく、俺が色々な情報を知っていた方がいいということで、諜報部隊の隊長の1人を俺につけてくれることになった。

 モンスターだという偏見で俺を見ず素直に評価してくれるお嬢様とお父さんに感謝でいっぱいだ。

 残念ながら、諜報部隊が認識した時点で既にウルはアドバイザーになっていたようで、ウルがアドバイザーになった経緯は分からなかったが。


 そして、俺は、お嬢様の部屋にあるハキルシア帝国の地図を広げる。

 西側から地図を見るが、内陸部はまだ余り開発されてないとは言え、東側も西側と同じくらい広いな。


 すると、地図の反対側、ハキルシア大陸の東側に不敵な笑いで俺を見る★4テンロウの姿が現れる。

 もちろん俺が想像した敵のアドバイザーであるウルの姿だ。

 俺とウルは、ハキルシア大陸の地図を挟んで、東と西側から睨み合う。


 ウル、絶対まだ生きているだろ。

 だが、俺がいる限り、これ以上お前の好きにはさせないぜ。

 俺は、好敵手を目の前にして、そう宣言した。


20221219


話番号修正・誤字等修正

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