表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
エルモンドのアドバイザー
77/122

77宰相ノリク

 俺は、ノリクの館の地下室に繋がれたまま過ごす。

 部屋の前で2人の護衛が俺が何かしないか交代で見張っている。

 俺は無駄な抵抗だと分かっているので何もせず、時々護衛が持ってきた餌を食べるだけだった。

 動けない俺は小便も大便も垂れ流しだが、2人の護衛がその都度処理をする。

 中には、

「面倒なことしやがって」

 と言って、俺を蹴ってくる護衛もいたが、俺は敢えてそう言う奴の時に集中的に垂れ流してやった。

 まあ、そいつに殴られまくるんだが、俺的には気分がすっきりする。


 地下なので時間帯は分からないが、半日ほどして、地下室に中年の人間の男が入ってきた。


「君かね。

 私の計画をことごとく潰してきたというのは?」

 男が話しかけてくる。


「貴様は誰だ?」


「失礼。

 まだ名乗っていなかったね。

 私は、ノリク・ミューゼル。

 この国で宰相をしている者だ。」

 こいつが、ノリクか。これまでの事件の全ての黒幕。

 俺の動きを完全に封じて絶対的優位を確認しているのか、ノリクは俺の質問に普通に答えてくる。

 ノリクの話しぶりからして、ノリクは完全に俺を標的にしていたようだ。

 そのあたりの情報も聞けるなら聞いておきたい。


「俺はメキロ家に協力しているから敵なのは間違いないが、大したことはしてないはずだ。」


「本気で言っているのかね?」

 ノリクは、自分の情報をベラベラしゃべるほど間抜けじゃないか。

 しかも、感情的にならないところを見ても、挑発して何とかできそうには見えない。


「海上の襲撃を撃退はしたが、俺はその中の1匹にすぎないぜ。」

 あの襲撃がノリクなのはほぼ間違いないが、一応確認してみるか。


「だが、その中で唯一我が軍の秘密兵器の脅威に気づき、エルモンドで模倣する体制を整えたのは君だね。」

 こいつ、俺が転生者だと知っているのか?

 どうやって知ったんだ?


「船員にスパイが残っていたか。」

 しかし、もし船員のスパイが残ってたらノリクは魔王についても知っている可能性は高い。


「いや、船内の密偵は君に捕らえられたよ。」

 ノリクも情報を漏らすことあるんだ。

 これくらいは言っても問題ないと思っているのだろうが。


「船には多数のメンバーがいたんだから、俺かどうかは分からないはずだろ。」


「君がメキロ家のアドバイザーとして、はじめてエルモンドに来た翌日、

 犬人の職人が館に呼ばれて、兵器の模倣を依頼された。

 これは偶然かね?」


 そうか、犬人の中に密偵が紛れ込んでいたのか。見落としていた。

 しかも、ノリクは限られた情報を総合的に判断して、俺がそれを提案したと正しい分析をしている。こいつはかなりの切れ者だ。


「それだけでわざわざ俺を捕まえたのか?」


「さらに君は、私が遠方にいて指示を出すのに時間がかかるのをいいことに、私の偽指示書をアレン・リッチモンドに送り、アレンを暴走させた挙句自滅させて、私の準備を全て台無しにしただけでなく、短期間で効率的に大陸東側を連合国としてまとめあげた。

 大した策士だよ。君は。」


 ちょっと待て。

 俺はそんなことはしていないぞ。

 一体誰が?

 だが、これでアレン・リッチモンドのメキロ家討伐計画が雑だった理由は分かった。

 何者かが、ノリクの策を潰すためにやったのだ。


「なぜ、それをしたのが俺だと分かるんだ?」

 敢えて否定はせず、逆に聞いてみる。


「アレンの暴走の結果として、最も得をしたのはメキロ家だ。

 そして、メキロ家の中でそれができると判断できるのは君しかいないと思うがね。」

 確かに、俺がノリクならメキロ家の誰かを疑うか。

 メキロ家のアドバイザーをしている以上、俺が真っ先に疑われても仕方はない。


「悪いが、それは俺じゃないぜ。

 アレンのあっけなさに拍子抜けしたのは事実だが。

 敵を作りすぎない方がいいんじゃないのか?」


 それに、アレンを偽指示書で騙して自滅させるとか、俺はそこまではしたくはない。

 俺は、ノリクに自分でないと言うことにした。

 実際にやったのは、ノリクの敵の誰かなのだろう。

 ノリクの目を、メキロ家から少しでも見えない敵に向ける効果があると思った。


「ほう、わざわざ自分から情報を言うつもりがあるとは。」


「流石に、アレンを殺すつもりで騙すというのは俺の流儀に反するからな。」


「だが、メキロ家のアドバイザーとして、メキロ家を連合国の盟主にまで押し上げたのは事実だね。」


「俺は、言いたいこと言っただけだぜ。

 実際にそれを実行したのはオーウェルさんだ。」


「君がメキロ家に現れてから、私のメキロ家に対する計画はすべて潰されている。

 君のその判断力は是非とも欲しい。」


「誰が貴様なんかに協力するか。」


「それができることを君は分かっているはずだが。」


「なんだと?」


「君を捕えたジロウ。

 誰かに似ていなかったかね?」


「まさか?」

 俺はタロウさんの顔が頭に浮かぶ。


「分かったかね。

 君を捕えた★5フォルセティのジロウは、元々は、君が知っているタロウだ。

 君を捕まえるために、無理して捕らえ、洗脳させてもらった。」

 そうか、だから姿も声も匂いもそっくりなんだ。

 同一人物なんだから当然だよな。

 このままだと、俺もノリクの手先にされてしまうのか。


「これまでか。

 だが、今更俺1匹を手駒にしたところで戦況はそんなに変わらないぜ。」

 我ながら苦し紛れの台詞だ。


「君がいなければ、メキロ家の若造は海の藻屑と消えているはずだった。

 君がいなければ、メキロ家はリッチモンド家に潰されているはずだった。

 君がいなければ、大陸東側に連合国などできることもなかった。

 違うかね?」


「どれも俺だけの力じゃない。」


「君が自分の事を過小評価してくれていて助かったよ。

 メキロ家の若造の警備は固かったが、君自身の警備が手薄だったからね。

 敵の本拠での作戦はかなりの博打だったが、君の活躍による状況の悪化で背に腹は代えられなくてね。私としては君の自分への過小評価に助けられたよ。」


 ノリクの奴、俺が敵の中で一番厄介だと思っているようだ。

 転生者としての知識を警戒したのか?

 だが、転生者としての知識なら近代兵器を作った奴の足元にも及ばないはずだ。


 一番避けたいのは、俺の中にある魔王やガイアの情報がノリクにばれる事。

 タロウさんから俺の情報をどこまで引き出したか分からないが、俺から魔王やガイアの情報を引き出される訳にはいかない。


「俺は洗脳か何かされて、貴様のことをノリク様とでも呼ぶようになるのか?」

 これらの情報を隠匿できるよう何とか考えないとまずい。

 無理なら自決も考えないと。


「自分の運命が分かっている割には冷静だね。」


「今まで味方だったメキロ家に躊躇なく攻撃するようになるのか?」


「そのあたりの記憶は消させてもらうから安心してメキロ家と戦うがいい。」

 よし、それなら魔王やガイアの記憶も消されるはず。

 敵となったオーウェルさんに助けてもらえる可能性を信じるしかない。

 ただ、ここで安心するそぶりは見せるわけにはいかない。

 ノリクなら、俺の素振りから魔王やガイアの存在に辿り着く可能性がある。


「冗談じゃねえ。そんな簡単にいくと思うなよ。」

 俺は精神集中を始める。


「グワッ・・・」

 その瞬間、鎖から俺の体に強力な電流が流れる。


「その鎖は君が精神集中をしようとすれば電撃が流れるように作られている。

 何度試しても無駄なことだ。」


「悪いが、俺はメキロ家に仕えているんでね。最後まで足掻かせてもらうぜ。」

 俺は、力いっぱい暴れようとするが、鎖で縛られているため殆ど動くことすらできない。

 ノリクに噛みつこうとするが、ノリクは数歩離れているため全く届かない。


 これでいい・・・

 これでいいんだ。

 ノリクに俺が秘密を持っていることを悟られてはならない。

 ノリクは切れ者だ。

 俺のちょっとした行動から感づく可能性がある。

 俺は最後までノリクを嫌って、無駄な抵抗を続ける自分を演じなければならない。


 俺は抵抗が無駄だと分かったらどうする?

 しばらくおとなしくしてチャンスを待つな。

 よし、ここは俺らしく、抵抗はこれくらいにしてチャンスを待つことにしよう。


「はあ、はあ・・・」

 俺は息を切らしつつも、一旦抵抗をやめる。

 そして、部屋を見回す。

 地下室っぽく、出入口はノリクの後ろの1か所だけだ。


「抵抗が無駄だと分かったかね?

 では、あとは作業員に任せるので、私はこれで失礼する。」

 俺を残して、ノリクは部屋を出て行った。


 奴を騙しきることはできただろうか?

 俺は、これから洗脳されるのだろうが、一応隙がないかだけはチェックしておこう。

 ノリクがそんな隙を見せるとは思えないが。


 しばらくして、研究者っぽい人間達がやってくる。

 そして、動けない俺の頭全体を覆うマスクのようなものを被せる。

 マスクは完全に固定され、俺は前が全く見えなくなった。


「スイッチを入れます。」


 人間の声がすると、マスクから俺の頭の中に何かが鳴り響く。

 耳からでなく、俺の頭に直接響いてくる音。

 頭がおかしくなりそうだ。


 俺は何とか耐えようとするが、脳に直接響く音はさらに激しさを増し、終わる気配がない。


「では、試験体の抵抗力が無くなるまで続行。

 交代で見張りを続けるように。」


 正直この脳に直接来る響きは10分もしたら頭がおかしくなりそうだ。

 こいつらは、俺が力尽きるまでこれを続けるつもりらしい。

 やはり、都合よく敵が隙を見せるなんてことはないよな。


 俺は、それでも抵抗を続けたが、永久に続く脳への攻撃に耐えられるはずもなく気を失ってしまった。


 パワー、オーウェルさん、ごめん。

 俺はここまでみたいだ。

 後は頼んだぜ。


 これが俺の最後の記憶だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ま、まさかまさかでしたが…… ウルさん、捕まっちゃってます。軍師兼宰相みたいなビッグポジションだったウルさんが捕まっちゃって、これどうなるんでしょうか? 非常に気になりますし、熊王伝の…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ