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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
エルモンドのアドバイザー
56/122

56ノアの迷宮(7)

登場人物

ウル(主人公)狼に転生した元人間。(★3シルバーウルフ)

パワー   ウルの仲間モンスター。(★4モサ)

ロウガ   ウルの体の元の持ち主。

ケルティク ロウガの友人でメキロ伯爵配下(★4ヘルハウンド)


 俺達は、判断力の最初の試練を突破した。

 次の部屋に入ると中央に台座があり、奥には3つの扉がある。


 とりあえず、台座の文字を読むか。


「この部屋の奥の3つの扉にはそれぞれ強敵が待っている。

 いずれかの敵を撃破せよ。

 また、4体の支援者に1回ずつ支援してもらうことができる。

 支援の内容は、扉の先の偵察、または、戦闘への協力のいずれか。

 同じ扉への偵察は1回まで、戦闘への協力は1体まで可能。」


「とりあえず、3つの扉の中から1つ選んで敵を倒さないといけないみたいだな。」


「扉に敵について何か書いてあるか?」

 ケルティクは奥の扉に近づく。


「敵の姿らしきものがぼんやりと見えるぜ。」

 パワーが見てくれた。

 多少は情報があるのか。


「4匹の支援者って誰なんだ?」


「汝らが先ほど戦った者達だ。」

 パワーの問いに迷宮の主が答えてくれた。


「3つの扉に1匹ずつ偵察させて、最後に1匹を連れてどれかと戦うってことだな?」


「基本そうだが、偵察はしなくてもよい。」

 した方が有利じゃん。


「それじゃあ、扉に描かれた敵の姿だけでも見てみるか。」

 俺も奥の扉を見る。


 1つ目の扉

 なんと言うか、首がたくさんある巨大な竜みたいな感じだな。


 2つ目の扉

 人間より小さな小人か。あまり強そうに見えないけどな。


 3つめの扉

 3匹の鳥に見えるな。ここだけ敵が複数と言うことか。


 敵の強さが見かけ通りとは限らないわけで、そのための偵察か。


「最後に戦闘で協力してもらうのは誰がいいと思う?」

 俺はパワーとケルティクに聞いてみる。


「さっき戦った奴から選ぶんだよな?」

 パワーが聞いてくる。


「そうみたいだ。」


「鳥か人間だな。象はパワーと役割が被るし、竜のように戦場を見渡すのは我々全員出来るだろう。」

 確かに、ケルティクの言う通りか。


「そうだな。

 それじゃあ、残った象と竜には扉の先を偵察してもらうか。

 真ん中の扉の小人っぽいのは謎が多そうだから竜に頼んでみようかと思うが。」

 俺が言うと、


「象に頼むのは首の多い竜かな。鳥相手では何もできない気がするぜ。」

 これもパワーの言うとおりだな。


「それじゃあ、多首竜の扉を象に、小人の扉を竜に偵察してもらうことにしよう。」


 それを聞くと、先ほど戦った竜と象が目の前に現れた。

 偵察に決めるといきなり出てくるのか。


「私に真ん中の扉を偵察してほしいとのことですが、優先して調べたいことはありますか?」

 呼び出された竜が聞いてくる。

 細かいことを頼んでいいんだ。


「敵が見た目通りとは思えないから、できれば敵の正体が知りたい。

 あと、敵の得意技とか弱点とか戦うときに役立ちそうな情報が分かれば知りたい。

 パワーとケルティクは他に聞きたいことあるか?」

 俺は、自分の聞きたいことを言ったあと、パワーとケルティクにも聞く。


「敵の小人が扉に描かれた大きさなのか知りたいぜ。首の多い竜は絶対絵よりもでかいだろうしな。」

 パワーが言う。確かに大きさは重要だな。


「敵がディスペルガードを使っているかどうか知りたい。

 あと、一度はアナライズマジックで敵にかかっている技を全て確認してほしい。」

 諜報部隊に指示を出しているだけあって、ケルティクの指示の方が具体的で分かりやすいな。

 俺の頼んだことは漠然としすぎて難しいかも。


「了解しました。他になければ偵察に行ってきます。」


「それじゃあ、お願いします。」

 俺がそう言うと、竜は真ん中の扉に消えていった。


「その間に、私に調べておいてほしいことを聞いておきたいのだが。」

 象が言ってくる。


「多首竜の大体の大きさと、主な攻撃と威力が知りたい。

 相手にかかっている技を調べることはできるのか?」

 俺が聞くと、


「私が使える技は攻撃技と自分の強化だけだ。探知系の技はない。」

 と象に言われてしまった。


「使える攻撃技の属性は?」

 ケルティクが聞く。


「炎と大地だ。」

 象が答える。


「炎と大地は俺様達は使えねえし、効くかどうかわかっても意味ないよな?」

 パワーが言う。


「確かにな。人間と一緒に戦うことを当てにしても仕方ないし。

 それじゃあ、あとは、敵の強さについて知りたい。

 全然歯が立たないのか、仲間が増えれば勝てそうなのか。」


「了解した。調べるのはそれだけでいいか?」

 象の問いに誰も答えなかったので、象も右側の扉へ消えていった。



 しばらく待つと、目の前にボロボロになった象が現れる。

 すぐに象の傷や火傷が治っていく。戦闘後に迷宮の主が回復してくれるやつか。


「どうだった?」

 俺は象に聞く。


「全く歯が立たなかった。

 体長が私の5倍くらいある。」

 ということは20メートル級のでかさってことだな。


「空を飛び、各々の首が炎のブレスを吐いてくる。

 大地系の技は効いていたが、相手が巨大なだけに大して痛くないようだ。」

 結構厄介そうだな。他がよほどの奴でない限り、こいつとの戦闘は避けたい。


「ありがとう。よく分かったよ。パワーとケルティクは他に聞くことある?」


「敵は翼で飛んでいたのか?それとも技で飛んでいたのか?」

 ケルティクが聞く。


「敵の翼は小さく、それだけで飛べるとは思えなかった。」


「分かった。偵察感謝する。」

 報告を終えると象の姿が消えていった。


「多首竜との戦闘はないよな?」

 俺は2匹に聞く。


「俺様もできれば避けたいぜ。」

 パワーも同じ意見みたいだ。


「敵が1匹だけで、分かりやすいというのはある。

 他が正体不明で分からないときは一応選択肢に残しておきたい。」

 ケルティクは冷静だな。

 確かに、小人の正体が全く分からないとかなら考えないといけないか。


 そんなことを話していると竜が戻ってきた。

 ある程度傷ついているが、倒されて戻ってきたわけではないようだ。

 とりあえず、多首竜よりは攻撃能力は低いということか。



「戻りました。1つずつ報告します。

 まず、敵の正体については不明です。」

 だよな。これで正体が分かれば楽だったけど、そんな甘くないよな。


「敵は多くの肉体の器を持ち、肉体と言うか器が倒されても魂が別の器に移って攻撃してきます。」


「なんだって?

 それじゃあ、敵の器を全部倒すまで勝ちにならないってこと?」


「恐らくそうですね。器の中には、巨大亀のような防御力の高いものがあり、私には倒せませんでしたのでそれ以上調査することはできませんでした。」

 それで帰ってきたのか。


「敵の攻撃技は?」


「各々の器に即した攻撃技を使ってきます。その器の武器を使っての肉体攻撃や、体が小さな肉体の場合は精神技を主に使ってきます。ただし、新しい器に移ると強化技を移すことはできないようで、新しい器に移った直後は、隠れて強化技を使っています。

 最初の器が扉に描いてあった小人で、身長1メートルくらいです。使っていた強化はコンセントレイトとフライトでした。

 途中何度かアナライズマジックしましたが、必ず使っていたのはコンセントレイトくらいですね。」


「精神技が妨害されないことを最優先にする時点で、敵の本体は精神系だな。」

 俺が言う。


「問題はすべての器を倒しきることができるかだ。」

 ケルティクが言う。


「肉体を倒されて、別の肉体に移るとき、目に見えたか?」

 これが見えるなら、追撃して次々倒せる。


「いいえ。倒された器が動かなくなるだけで、魂の移動は目に見えません。」

 強化技を使っている間に探せってことか。


「敵は1匹だけなんですよね?」


「はい。器を次々と変えるとは言え、本質的には1体だけです。」



「体が変わると、敵はだんだん強くなっていったか?」

 パワーが聞く。


「順番と強さにはあまり相関関係はなさそうです。実際、途中で急に強い器が出てきました。」


「強い器ってどんな奴だ?」


「防御力が高くて倒せなかった巨大亀ですね。」


「精神技が強い器はなかったのか?」

 ケルティクが聞く。


「調べた限りはなかったです。どの肉体でも精神技は使ってましたし、威力もほぼ同じくらいでした。」

 俺が狼の器に入ってる魂だと考えると、精神技の威力は俺の精神に依存するから、どの器でも威力は一緒だよな。

 偵察に行った竜を倒せていない時点で、敵の精神技は多首竜にははるかに劣るのは間違いないだろう。


「他に聞くことあるか?」

 俺は2匹に聞く。

 2匹とももうないみたいだったので、竜にお礼を言って帰ってもらった。



「俺は小人の姿をした奴の方が組しやすいと思ったが、パワーとケルティクはどう思う?」

 竜が帰った後、仲間内で相談する。


「最後に無茶苦茶強い肉体が出てきたりしないよな?」

 パワーが言う。


「その可能性は否定できない。

 だけど、竜を倒せてない時点で敵の精神力は大して怖くない。

 俺はある意味、狼の器に入っている魂と言ってもいい状態だが、強い肉体に移ったからと言ってその力が完全に引き出せる自信はない。

 実際、俺は狼の肉体なら問題なくできるはずのトリプルスラッシュですら苦戦したからな。

 いずれ、ロウガがガイアの器を手に入れたとしても、練習もなしにいきなり全力は出せないだろう。

 だから、肉体が強力な器があったとしても、隙はあると思った。」


「なるほど、確かにそうだな。

 戦闘相手から多首竜は除外して考えよう。」

 ケルティクも納得してくれたようだ。


「3匹の鳥の偵察には行くのか?」

 パワーが聞いてくる。


「小人相手に協力してくれる支援者を決めてそうじゃない方に偵察してきてもらうか。」

 俺は答える。


「小人相手なら、最後に凶悪な器がない限り、支援者がいなくても我々だけで勝てる気がするのだが。

 だから、凶悪な器対策で鳥に来てもらってはどうか。」

 ケルティクが言う。


「まあ、支援者も入れて戦えという時点で最後に強力な肉体はあるんだろうな。

 ただ、素早い敵対策なら、人間に範囲攻撃をしてもらう選択肢もあると思う。」


「厄介なのは巨大すぎる敵が出た場合じゃねえのか。」

 パワーが言ってくる。


「鳥なら巨大な敵相手でも、我々の態勢が整うまで敵を引き付けて時間稼ぎしてもらえると思うのだが。」

 ケルティクとパワーが想定していたのは巨大な敵対策か。俺は、素早い敵対策だと思っていた。

 人間だと高魔力技をぶつけることはできても、耐えるのは厳しいか。


「そうだな。それじゃあ、連れて行くのは鳥にしよう。

 あと、鳥3匹を人間に偵察してもらうか?

 相性は悪そうだが。」

 俺が聞く。


「鳥を連れて敵の鳥3匹と戦う選択肢はありえるから、一応偵察してもらってもいいと思うが。」

 ケルティクが言う。


「確かにそうだな。それじゃあ、ダメもとで人間に偵察してきてもらおう。」


 俺がそう言うと、人間が目の前に現れた。


「鳥3羽の偵察ですね。

 何を優先して調べますか?」

 人間が聞いてくる。


「3匹に違いがあるかと、使ってきた技を教えてほしい。」

 俺は言う。素早さのほどを調べるのは無理だろうしな。


「あと、敵の大きさも知りたいぜ。」

 パワーが言う。確かに大きさは重要だな。

 だけど、パワーも一目で分かることしか聞こうとしてないな。

 すぐに負けるだろうと思っているな。


「敵3匹が連携していたかどうかが分かれば知りたい。」

 ケルティクがいう。

 確かに連携は重要だな。


「あとはいいか?」

 俺は2匹に聞くが、パワーもケルティクもそれ以上ないみたいだ。


 人間は、左の扉に消えていった。

 しばらくして人間が傷だらけになって戻ってくる。

 傷は迷宮の主がすぐ癒したが。

 まあ、予想通りの展開だよな。


「どうだった?」


「1羽は体長3メートルくらい、残りは体長1メートル弱の大きさだ。

 技を使える前に負けたので技を使うかどうかは分からない。

 巨大な1羽の指示で3羽から一斉攻撃された。」


 敵の大きさとリーダーがいるのが分かったのは大きいな。

 それ以外は予想通りの展開か。


「俺はこれ以上聞くことはないな。」

 俺がそう言うと、パワーとケルティクも同意する。

 すると、人間の姿が消えていった。


「で、戦う相手だけど、鳥3匹はありだと思うか?

 俺としては、鳥の全力の戦力が分からない時点で小人の方が無難が気がするんだが。」


「ああ、私も小人の方がいいと思う。」

「俺様も小人がいいと思うぜ。」

 2匹も同意してくれたので、鳥を連れて小人に向かうか。


 すると、鳥が現れる。

「契約に従い、次の戦闘で汝らに助太刀しよう。」


「よろしくお願いします。

 えっと、名前を教えてもらっていいですか?」

 戦闘で呼び合ったりするだろうから、名前を聞いておこうと思った。


「我は迷宮主の作り出した疑似生命体。名前など持たぬ。好きに呼んでくれればいい。」

 そうですか。


「それじゃあ、一緒に戦闘するときに呼び合うのに不便だから、仮でも名前つけさせてもらうね。

 パワー、ケルティクはなんかいい名前ある?」


「俺様に聞かれても困るぜ。

 大きさが似てるからリーザとかじゃダメか?」

 確かに見た目はリーザと同じイーグルだよな。


「私は何でも構わぬ。リーザでいいのではないか。」


「それじゃあ、ケルティクも一応同意してくれたし、リーザと呼ばせてもらう。よろしくな。」


「分かった。」

 こうして、鳥の支援者の名前はリーザに決まった。


「では、扉に入る前に作戦を立てよう。」


「敵の肉体が全部なくなるまで倒しまくるだけだろ。」

 そりゃ、パワーの言う通りだけど。


「敵の器の移動と、巨大な器が出たとき対策は考えておいたほうがよくない?」


「器の移動は目に見えないらしいから、倒したらすぐに次を探すしかないな。

 巨大な器はリーザにしばらく相手してもらっている間に我々の体勢を整えればいい。」

 これも、ケルティクの言う通りか。


「我は、巨大な敵が出たときに囮になればいいのだな?」

 リーザが確認してくる。


「それでお願いしたい。それ以外は特に指示がない限り自分の判断で敵を攻撃してほしい。」


「了解した。」

 これくらいか。


「俺様思ったんだけどよ、戦ってる最中に動いてない肉体を探して倒せないか?」


「パワー、冴えてるな。それはいい考えだ。

 リーザ以外は匂いで分かるよな。明るければリーザも目で見つけられるかもしれない。

 もし、誰かがそれ以外の器見つけたらその場で倒すことにしよう。

 リーザも動かない肉体を見つけたら教えてくれ。」


「分かった。

 あとは、事前にかける支援くらいか。」


「そうだな。前回同様全部だな。」


「リーザは強化技を使えるのか?」

 支援してもらえるのだから、技もかけてもらおうと思って聞いてみる。


「強化技はスピード・フライト・フリーアクションが使える。」

 俺達はそれら全部を「誰かが」使える。まあ、そんなものだよな。


 結局俺達は、リーザも含めた全員に全ての技をかけることにした。

 小人の不意打ちディスペルマジックの可能性も考えたためだ。

 そして、各々技の精神集中を完了させて扉に入った。

 俺はアナライズマジックだ。


 扉に入ると、俺達はいつの間には森の中にいる。

 ここは迷宮の中だよな?

 俺達のコピーを瞬時に作り出すほどの大魔術師の迷宮だ。部屋の広さもきっと自在なのだろう。

 そして、身長1メートルほどの小人が待っていた。


 パワーが先制のインパルスを放つ。

 小人も準備を完了していたのであろうディスペルマジックで応酬してきた。

 俺はアナライズマジック、ケルティクはディスペルマジックと精神集中を完了させて準備していた技をそれぞれ開放する。

 リーザは小人に向かって高速で飛んで行った。


 小人はディスペルマジックをリーザに放つが、リーザはディスペルマジックをかわして小人に攻撃を仕掛ける。

 俺のアナライズマジックが発動する。


 使用中コンセントレイト・フライト


 前情報と同じか。

 そこへケルティクのディスペルマジックがかかる。

 目に見えないので解除されたかどうかは分からないが、間違いなく効果が落ちているはずだ。


 小人はリーザの攻撃に翻弄されている間にパワー・ケルティクに近接されてあっという間に動かなくなった。

 さあ、次の肉体を探さないと。


「空から手分けして捜索しよう。」

 全員フライトがかかっているので、俺はそう言って、俺とパワー・リーザは空を別方向へ捜索に行った。


「私は音と匂いでこの近くを当たってみる。」

 ケルティクは、音と風上からの匂いを頼りに近くを探してくれるようだ。そりゃ近くも探さないとな。



 俺が空から捜索をしていると、遠くに巨大な生物が見えてきた。

 近づいてみる。動かないけど前世の恐竜に似ている。体格的にティラノサウルスに近い。

 これは絶対、後から動き出す奴だよな。


 今なら動かないし、首筋を掻き切れないかな。体格的に首も巨大だけど。

 俺は、恐竜の首にかぶりついた。皮が固い。皮の表面に傷がついただけで、これは無理だ。

 ライトニングで削ってもいいけど、何十発とかかかりそうだ。

 仕方ない。

 パワーを呼んできて首筋にトリプルスラッシュをしてもらおう。


 俺が、パワーがいないかなと遠くを見渡していると、すぐ後ろから音がする。

 振り向くと、恐竜が動き出して俺に爪を向けて腕を振り下ろしてきた。

 間一髪でかわす。危ない。


 俺は、距離をとると、敵を見つけたことを知らせるために、大きく吠える。

 その隙に、恐竜がディスペルマジックっぽい技の準備を始めたので、サンダーで打ち消した。

 恐竜も負けじとファイアーを放ってくる。

 俺はエレメンタルガードもかかっているから数発は耐えられるけどな。

 ディスペルマジックより遅い技は流石に危険だが、耐えられるうちに1発くらいライトニングをぶつけるか。


「ライトニング」


 俺は恐竜にライトニングを放つ。恐竜はファイアーで妨害しようとてきたが、エレメンタルガードを削り切れなかったようだ。

 こちらはフルバフ、敵はバフなしのハンデは大きく、少し戦った感じ俺だけでもなんとか相手できそうだと思った。

 仲間には、他の体を1つずつ潰してもらった方がいいのではと思い始めた。


 俺と恐竜はサンダー・ファイアーの応酬を始めた。

 敵は巨大だからこっちの方が不利だよな。

 危なくなってきたら、地上に降りて一旦木の陰に隠れよう。


 そんなことをしていると、ケルティクとリーザがやってきた。

 ダメージがたまってきたので、俺は敵がまだ強化できてないことを伝えると、一旦木の陰に隠れさせてもらった。

 リーザが素早い動きで恐竜を翻弄する。ケルティクがトリプルスラッシュを決めつつ、技を準備し始めたらサンダーで打ち消す用意も抜かりがない。

 時間はかかりそうだが、これなら苦戦せずに勝てるかもなどと思い始めたとき、恐竜の体が急に動かなくなった。

 ちょっと待て、まだ十分に体力が残っているだろ。


「この竜紛いの生物はまだ体力が残っているみたいだが、器の移動ができるようだな。」

 ケルティクが言う。


「そう言えば、パワーがいないな。

 パワーだけなら倒せると踏んで器の移動をしたんじゃないのか。」

 俺はパワーのことが心配になった。


「パワーが1匹だけでいるところを狙われるとまずいな。

 一旦手分けしてパワーを探すぞ。」


「分かった。お互い見つけたら遠吠えで知らせよう。

 リーザはパワーを見つけたら、危なければパワーの支援を、そうでないならパワーとここへ向かってくれ。

 俺達も、見つからなければ一旦ここに戻る。」


 俺達は空から手分けしてパワーを探す。

 確か、パワーは捜索に行くとき俺からみて左の方へ向かっていたはずだよな。


「パワー、どこだー。」

 俺は大声を出しながら、分かれて捜索するときにパワーが向かっていたであろう方向を探しに行く。


「ウル様、ここだー。」

 地上からパワーの声がする。

 よかった、まだ無事のようだ。


 俺がパワーの方へ飛んでいくと、パワーが小さくなっている。

 ディスペルマジックで技を解除されて空を飛ぶことができなくなってしまったようだ。


「奴は、ネズミになっている。木の陰からディスペルマジックをしてくるぜ。」

 パワーに言われて、木の上に降りる。地上にいるであろうネズミから俺の姿が見えないように。

 そして、ケルティクとリーザを呼ぶために遠吠えをする。

 これで、いずれ合流はできるはずだ。

 俺はいつネズミがディスペルマジックをしてきてもいいように、ライトニングの精神集中を済ませておく。

 サンダーにしなかったのは、向こうも準備する時間がいるだろうから、精神集中する時間があると踏んで、そして、体の小さなネズミなら一撃で倒せることも期待して・・・だ。


 しばらくして、予想通りネズミがフライトを使って、俺の横に現れた。


「ライトニング」


 俺は見た瞬間ネズミにライトニングを放つ。


「ディスペルマジック」


 だが、ネズミの方も当然精神集中が終わった技を放ってきた。

 俺にかかっている技が消される。

 ネズミは小さいから一撃で倒せないかと期待したが、まだ何とか耐えているようだ。

 俺は、追い打ちでサンダーの連射を始める。

 ネズミはライトニング1発で体力が危ないのが分かっているので、すぐに木の下に降りて行った。

 幸いまだフライトは残っているようなので、俺は飛んで追いかける。


「インパルス」


 待ち構えていたようにパワーがインパルスを放つ。

 体の小さいネズミにはこれ以上耐えられなかったようで、ネズミは動かなくなった。


「パワー、1匹だけで相手してたのか。」


「大きな象の体があったから潰そうとしたんだけどよ、その間に後ろからネズミにディスペルマジックされて飛べなくなったんだ。」

 確かに森の中で空を飛べなくなると合流するのが大変だな。

 敵は、戦力の分散のためにそれを狙っていたのだろう。

 となると、敵は何らかの方法でこちらの位置を把握できるということか。


「象はどこにいるんだ?」

 俺がパワーに聞くと、敵はその象の肉体に移って突進してきた。

 木が生えている森の中動くのはきついだろうと思ったが、象は気にせず小さな木を倒しながら進んでくる。

 俺とパワーしかいない間に無理してでも倒したいらしい。


「ストレングス」


 俺はパワーに強化技をかける。

 これで五分とはいかないが、なんとか戦えるはずだ。

 パワーと象の殴り合いが始まった。


「ウィーク」


 続いて、象に弱体化技をかける。

 ここまですれば、パワー優位で戦えるはずだ。

 そんなことをしている間に、ケルティク・リーザが続々とやってきた。

 こうなれば一方的だな。

 4対1では勝てないと察したのか、敵はさっさと象の肉体を捨てて別の肉体に移ったようだ。


「また、肉体を移動したようだな。」

 ケルティクが言う。


「また、戻られても厄介だし、象の肉体は潰しておこう。」

 俺達は、全員がかりで、動かない象の肉体を潰した。


「一旦相談したいことあるんだが。」

 象の肉体を倒した後、俺は仲間に相談する。


「なんだ?」


「分かったことが2つある。

 1つは、敵は遠くにいる肉体にも一瞬で移ることができること。

 2つ目は、敵は用意してある肉体から俺達の接近を知ることができること。」


「確かにな。

 そうでも考えないと、遠くの竜紛いの生物との戦闘中に、肉体を捨ててパワーのすぐ近くの肉体出てくるようなことはできないな。」

 ケルティクが同意してくれる。


「それで、提案なんだがチームを組まないか?

 1匹だけでいるときに敵が目の前に現れると厳しいだろ。

 だから、2匹ずつのチームで行動しよう。

 2匹なら大抵の器に対処できるし、俺とケルティクが別のチームになれば、遠吠えで何かあっても知らせ合うことができるだろ。」


「了解した。チームはどう分ける?」

 ケルティクが聞いてくる。


「ウル様と俺様は、敵に消された技をかけなおさないといけないからチームを組んでかけなおしたいぜ。」

 パワーが言う。


「では、私はリーザと組めばいいのだな。」


「そうだな。動いていない器を見つけたらその都度潰すことにして、対処できない器が現れたら遠吠えで知らせてくれ。」

 俺がそう言うと、ケルティクはリーザを連れて飛んで行った。



「それじゃあ、消えた支援をかけなおすか。

 今は何が残ってるんだ。」

 俺はパワーにアナライズマジックをかけた。


 効果減少中リジェネレーション・ストレングス・効果減少中スピード・効果減少中エレメンタルシールド「サンダー」

 効果減少中エレメンタルシールド「ダーク」・効果減少中ウォーターブリーズ


 効果が弱まった技は効果減少中と出るんだ。

 これは、さっきかけなおしたストレングス以外ほぼ全部消えていると考えた方がいいな。

 俺は一旦リジェネレーションをかけなおしてから、もう1回アナライズマジックをかける。



 リジェネレーション・ストレングス・効果減少中スピード・効果減少中エレメンタルシールド「サンダー」

 効果減少中エレメンタルシールド「ダーク」・効果減少中ウォーターブリーズ


 予想通り効果減少中がなくなったな。

 これは、念のため全ての技をかけなおすか。

 一応支援技は俺とパワーだけで全部網羅しているので俺達は全ての強化技をかけなおした。


 まるでタイミングを見計らったようにケルティクの遠吠えが聞こえてくる。

 さっきの恐竜がいた方向だな。



 俺達は、先ほどの恐竜の方へ向かうと途中でケルティクとリーザがやってきた。


「どうしたんだ?」

 俺が聞くと。


「竜紛いの生物が空中からやってくるぞ。」

 ケルティクが言う。

 遠くを見ると何かが近づいてくるのが見える。

 そりゃ、あれだけ時間あったからな。

 すべてのバフする時間はあるよな。


「ディスペルマジックを連打しよう。

 パワーは敵に技を使わせないようインパルスで支援を頼む。」

 俺はケルティクとパワーに指示を出す。


「リーザはしばらく敵の相手を頼むぞ。」

 ケルティクもリーザに指示を出す。


 まずリーザが飛んで行って、恐竜に攻撃する。

 素早く動いて敵を切り裂くが、傷は皮の表面だけだ。


「ディスペルマジック」

 俺とケルティクと恐竜が同時にディスペルマジックを放つ。

 恐竜はコンセントレイトをしていたみたいで、直前のパワーのインパルスでは妨害できなかった。


 そして、パワーに飛んできたディスペルマジックを俺が受ける。

 俺にかかっていたフライトの技が消えて、俺は空を飛べなくなった。

 だが、パワーが俺をしっかりと抱えてくれたので、落下はしない。


 一方の恐竜は俺とケルティクの2発のディスペルマジックでフライトが消え、そのまま地上に落下した。

 すごい地響きとともに、恐竜は動かなくなった。


「恐竜ってかなり厄介な肉体かと思ったけど、あっけなかったな。」

 俺は言う。


「強化を維持しつつ戦えば、時間はかかるが何とかなりそうだな。」

 ケルティクが言う。


「それじゃあ、俺はまた技のかけなおしするから、捜索を頼む。」

 ケルティクとリーザは別の体を探しに行った。



 俺は、再び強化技をかけながら考える。

 敵としても、このまま全部の肉体を潰されたら負けるのは分かっているはずだ。

 しっかり強化しても俺達のうち2匹すら倒せず、途中で俺達に4匹全員合流されて倒される。

 普通に考えれば圧倒的に不利のはずだ。


「なあ、パワー。お前が敵だったらどうする?」

 昔パワーと戦った時と同じような展開だったので、俺はパワーに聞いてみた。


「破壊力がある肉体を使って、敵を1匹でも倒したいぜ。」

 パワーが答える。

 そうだよな。単独行動は厳禁だよな。

 一気に片を付けようとか考えず、隙を見せないようにして着実に器を1つずつ潰していく。

 地味だけど、これが一番だ。


 俺達はしばらく、敵の器を1つ1つ潰していく作業を続けた。

 途中技を消された場合は、丁寧にかけなおして続ける。

 いずれ敵も切り札を出してくるだろうとは思っていたが、それは突然やってきた。


 俺達が空中を捜索していると、リーザが1匹で飛んできた。


「リーザ、どうしたんだ?」


「ケルティクが敵に倒された。」


「どうやって?」


「地中にいる敵を掘りだそうとしていたところを、後ろから強力な爪と牙で一撃だ。」


「敵の姿は?」


「目に見えなかった。」


 敵の切り札は透明の肉体か。

 それもある程度大きな体だろう。そうでなければケルティクが一撃でやられたりはしない。

 敵はパワーの予想通りの攻撃をしてきたわけだ。

 だが、透明の肉体と分かれば対処できないわけじゃない。


「敵の姿は全く見えないのか?

 少しは背景が揺らめいたりするのか?」

 俺はリーザに聞く。


「攻撃するときに多少は揺らめきがあった。」

 なら、隙がないわけじゃないな。


「静かで見晴らしのいい場所に行かねえか。

 目に見えないようにはできても、音や匂いは消せねえだろ。」

 パワーが言う。

 そうだな。

 たとえ、敵の姿が見えなくとも、俺達には耳と鼻があるんだ。

 しかも、相手が激しく動くときは揺らめきも分かる。

 まだやりようはある。


 俺達は、見晴らしのいい草原で敵を待ち受けることにした。

 ちょうど湖のほとりだ。


「水中なら、敵が透明でもはっきり見えるよな。」

 俺が言う。


「敵が来てくれればいいけどよ。

 水中に肉体がないかだけ見に行くか。」

 パワーの言うとおりだが、俺達は水中に肉体があってもいけないので水中を探しに行った。

 すると、水中にはサーペントの器がある。


 近づくとサーペントが動き出した。


「ウィーク」


 俺はサーペントに弱体化の技をかける。

 パワーは最大限強化されているので、こうなるとパワーだけでも相手できてしまう。

 サーペントはあっという間にパワーのベアハッグで倒され、肉体を処理されてしまった。


「もう、水中には器はないみたいだな。」

 パワーが確認してくれた。


 これで背後の湖からの襲撃はない。

 俺とパワーは湖を背にして、音に集中する。

 リーザにも横で、何か見えないか注意していてもらう。


「ウル様、聞こえるか?」


「ああ、聞こえるぜ。」


 敵がフライトをかけて飛んでくる音がはっきりと聞こえる。

 恐竜形態のミスを繰り返さないように、地面すれすれを飛んできているようだ。

 俺はディスペルマジックの精神集中を済ませて、敵の接近を待つ。


 敵は少し離れた所から何か精神集中を始めた。

 パワーが敵にインパルスを放つ。


 違う。インパルスを放ったのは敵のすぐ目の前だ。

 インパルスの衝撃で敵の周りに砂ぼこりが立つ。

 それにより、敵の姿の輪郭が見えてきた。

 身長3メートル余りの巨人だ。


「ディスペルマジック」


 パワーのおかげで俺は正確に敵にディスペルマジックを放つことができた。

 敵の技が消えたようだが、姿は消えたままだ。

 敵は精神集中していたはずだが技が飛んでこない。

 ディスペルマジックで精神集中している技も消せるらしい。いいことを知った。


 リーザが見えない敵に向かって攻撃しようと飛んでいく。

 パワーはリーザの支援のために、敵の近くにインパルスを放つ。

 リーザは、敵の輪郭が見えたすきを逃さす敵に的確に一撃を当てていく。


 俺は、その間に次の技を完了した。


「アナライズマジック」


 効果減少中コンセントレイト・効果減少中フライト・効果減少中フリーアクション


 透明になる技がかかってない。

 ということは透明になるのは、肉体の能力か。

 厄介だが倒すしかない。

 幸いパワーが耳と鼻で敵の位置を判断して砂ぼこりで俺達にも見えるようにしてくれている。


「ディスペルマジック」


 俺は2度目のディスペルマジックで敵の技を完全に消し、


「ホールド」


 近くのつたを伸ばして敵の足を封じた。

 ツタは目に見えるので、これで敵の位置ははっきりわかる。

 それを見て、パワーが突っ込んでいく。


「ウィーク」


 俺も阿吽の呼吸でパワーの支援をする。

 ここまでこれば、順調に敵の器を倒すことができた。


 透明の器を潰すと俺達は扉に入る前の部屋に出てきた。


「見事だ。汝らは判断力の試練を突破した。」

 迷宮の主の声がする。


 リーザの姿はない。

 傍にケルティクが倒れているが、傷がみるみる回復している。

 迷宮の主がいつものように回復させてくれたみたいだ。


「油断した。申し訳ない。」

 意識を回復したケルティクが謝ってくる。


「大丈夫だ。敵は倒した。」


 よし、残りは最後の関門だけだ。


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