48海中防衛戦
登場人物
ウル(主人公)狼に転生した元人間。(★3シルバーウルフ)
パワー ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)
レオニエル モンスターの待遇向上を訴える魔王(★6魔王)
スレイル レオニエル三兄弟の長男(★5キリン)
アウルス レオニエル三兄弟の次男(★5ナイトメア)
ローラン レオニエル三兄弟の三男(★5ペガサス)
オーウェル メキロ伯爵の跡取り(人間)
「アウルスさん、俺達と水中から時間稼ぎをしましょう。
その間に、スレイルさん達はリバイアサンが向かっていることを伝えてください。」
俺はスレイルさんに言って、ローランさんと2匹で先に船に戻ってもらう。
俺達は、水中技をかけてリバイアサンの後を追う。
ちょっかいをかけて時間を稼ぐつもりだ。
フィッシュムーブを使うとリバイアサンより速く泳げるため、すぐに追いつくことができた。
しかし、水中ではダメージ攻撃技は効かない。
どうするか。
「アナライズマジック」
俺はリバイアサンにかかっている技を確認した。
かかっているのは、フリーアクション・不明防御技2つ、不明強化技1つだ。
技のオーラの色を理解すれば、強化技とか防御技などの分類は分かる。さらに強化技のかかっている数も分かるので、知らない技であってもある程度の推測はつく。
先ほどの戦いで、コンセントレイト・ディスペルガードがかかっているのは判明しているので、まだ不明なのは不明強化技1つだけだ。
そして、体が巨大化しているので、それがリバイアサンの強化技だろう。
リバイアサンが気づいて振り向いた。
まさか俺達が水中から追いかけてくるとは思わなかったのだろう。
リバイアサンはチャンスとばかり、反転して襲い掛かってきた。これで船を攻撃されずに済む。
体長三十メートル余りに巨大化したリバイアサンからすれば、パワーですら飲み込むことができる。
が、リバイアサンは意外にも最初に俺を狙ってきた。
だが、フィッシュムーブのかかっている俺はリバイアサンよりも速く泳げる。俺はさっと横に回り込んで、リバイアサンの背びれに噛みつく。
リバイアサンは俺が背びれに食らいついているとも知らずに、俺を探そうと泳ぎ回る。先ほどのデストラクションは相当厄介と思われているらしい。
その間に、アウルスさんとパワーがリバイアサンにウィークをかけるが、効いていない。ダメージ攻撃技が水中で使えない以上、使える技はそれくらいしかないか。
だが、テンマのコーチの話で技の効きやすさは知恵・精神力に依存すると分かった。ウィークをかけるなら俺が一番効きやすいはずだ。
リバイアサンが俺を探して止まっている間に俺はウィークの精神集中に入る。この技は2レベル技だし時間もかからない。
「ウィーク」
俺はリバイアサンに技を放つ。完全な効きでもないが、着実に効果が出た手応えを感じた。
そして、急に泳ぎ出して俺を振り払ってから回り込みこちらを見る。俺は置いて行かれたため元の場所にとどまったままだ。
当然リバイアサンが俺に気づく。そして、憎悪の目で俺を見る。俺が元人間だと気づいたかどうかはともかく、最も精神力が高く技の効果が大きいのが俺だということをはっきり認識したようだ。
その時リバイアサンが苦痛の表情を浮かべた。よく見ると、リバイアサンの腹にパワーが張り付いている。トリプルスラッシュを喰らわしたらしい。
「貴様ら、ワシの庭の水中でバカにしおって、このままで済むと思うな。」
リバイアサンはそう叫ぶと、海中深くに潜っていく。
ウォーターブリーズで水中で息ができるようになっても、深海の水圧に耐えられるようにはならない。
俺達が行けない海底で強化技を使いまくってから襲いに来るらしい。
フィッシュムーブで移動速度を上げられると危険なので、俺達は一旦空中に戻った。
「アウルスさん、ディスペルガードの効果時間は分かりますか?」
俺はアウルスさんに聞く。
「使う者の進化レベルと精神力次第で変わってくるが、リバイアサンなら1時間と言ったところか。」
アウルスさんは俺の意図を分かった上で答えてくれた。
最初からリバイアサンにはかかっていなかったから、俺達の船を襲いに行く時にかけたのだろう。
となるとまだ数十分は消えないな。
「まだ大分ありそうですね。なら、巨大化する技と効果時間は分かりますか?」
「5レベル技のジャイアントフォームだと思うが、効果時間までは分からぬ。」
これでは手がない。
そんなことを考えているうちに、リバイアサンがやってきた。
空中に。
こいつ、フライトを使えるのか。
絶対好相性技じゃないよな。というか、飛行技がリバイアサンの好相性技であってたまるか。
だが、限界突破種なら、好相性外の技を持っていてもおかしくない。
「待たせたな。今度こそ、地獄に送ってやるぞ。」
「ライトニング」
リバイアサンが技を放とうとしてくる。
「デストラクション」
俺は既に準備できている技で妨害する。
「サンダー」
今度は、リバイアサンは妨害できない最速の技に切り替えて俺を攻撃してきた。
「サンダー」
俺も負けじと最速の攻撃技で応酬する。
「インパルス」
「ストーンエッジ」
パワーとアウルスさんも精神集中の短い小技で攻撃を開始する。
3対1とは言え、図体の差がある。耐久力は圧倒的にリバイアサンが上だろう。
このままでは、俺が持ちそうもない。
俺は数発のサンダーを撃った直後、真下に飛び、水中に逃げる。
水中なら攻撃技の効果がないからだ。
だが、リバイアサンは執拗に俺を追いかけてきた。
水中の移動速度も速くなってる。
フィッシュムーブも使ってきたな。
俺は、再び空中に上がる。
アウルスさんが、俺にリジェネレーションをかけてくれた。
助かる。
すぐにリバイアサンが空中に戻ってきた。
俺は再び海中に潜る。
途中でパワーにインパルスを喰らっても、構わず俺だけを狙ってくる。
海中ではスピードで負けているので、海中に長時間いるのは危険だ。
かと言って空中ではサンダーを喰らう。1発のダメージは小さいとはいえ、これだけ回数を喰らうとダメージが蓄積してきた。これ以上サンダーを喰らうと危ない。
俺は、リバイアサンの動きを見ながら、海中・空中を交互に動き何とか逃げ回った。
空中に出る度にパワーとアウルスさんから遠距離技を喰らっているのにまだ続ける気らしい。
しかし、このままでは俺を捕まえられないと思ったのか、リバイアサンの行動に変化が出た。空中を出た瞬間、水中で精神集中を済ませて技を放ってきたのだ。
「ライフスティール」
パワーに技がかけられた。
そして、すぐに海中に消えた。
「ライフスティールだ。リバイアサンも生命力が厳しくなってきているようだな。」
アウルスさんが言う。
ライフスティールは、相手から生命力を奪って自分の生命力を回復させる技だ。
流石のリバイアサンも、ダメージが蓄積して危なくなってきたらしい。
「パワー大丈夫か。」
「1発だけならな。」
3レベル技であるライフスティールの発動を何発も許すわけにはいかない。
「パワー、エレメンタルシールドを頼む。最後の打ち合いするぞ。」
パワーはすぐに精神集中を行い、エレメンタルシールド「サンダー」をかけてくれた。
再び、リバイアサンが上がってくる。
「デストラクション」
リバイアサンが海面で出た瞬間に俺は準備しておいた技をかける。
どうせ、ライフスティールの精神集中をしていただろ。
リバイアサンが俺を睨む。図星のようだな。
「サンダー」
「インパルス」
「ストーンエッジ」
俺達は再び小技の連射モードに入る。
リバイアサンもサンダーで対抗してくるが、俺にはエレメンタルシールドがかかっている。5-6発弱は耐えられる。それにリジェネレーションがかかった状態でそこそこの時間もたった。
リバイアサンの残り体力は少ないはずだ。表情からもそれは分かる。このまま押し切る。
十発余りのサンダーを放った。そして十発余りのサンダーを喰らう。
途中からは数も覚えていない。
俺は耐えられなくなって意識を失ってしまった。
気づくと、俺はパワーに抱きかかえられていた。
「リバイアサンは?」
「倒したぜ。」
「ありがとうな。それなら安心だ。」
パワーに話を聞くと、リバイアサンも俺が倒れた直後に力尽きたらしい。
気が付くと危険なので止めを刺したようだ。
その後敵の船を探してみたが、沈んでしまったようで見つからなかった。
生き残ったサーペントもどこかへ行ってしまったようだ。
仕方ないので、俺達は自分の船に戻ることにした。
俺達が全部対処できたみたいで、船には一切被害がなかったようだ。
俺達はリバイアサンを倒したことを含めた結果を報告する。
「帝国中枢部ではモンスターは邪険に扱われているという話でしたが、敵のリバイアサンは最後まで抵抗してきました。しかも、味方の船を用済みとばかりに沈めたりとか。寧ろ人間を使い捨てのようにしていました。」
俺は、オーウェルさんに感じたことを報告する。
「そのリバイアサンは限界突破種ですか?」
「間違いないと思います。」
「ノリクが一部のモンスターを裏で幹部クラスで雇っているという未確認情報も入っているのですが、今回のリバイアサンはそれを裏付けることになりましたね。仲間に酷い扱いをされているのに、なぜノリクに従うのかが分かりませんが。」
「リバイアサンの奴、俺様には仲間のサーペントすら使い捨てみたいな感じで扱ってたように見えたぜ。」
パワーが言う。確かにそんな感じはしたな。
「ノリクは限界突破種のモンスターを集めていたそうだな。幹部扱いにするとか甘い言葉で味方に引き入れたのではないか。限界突破種以外の同族を見下しているようなモンスターが仲間になったのかもしれんな。」
魔王が言う。
確かに、モンスターに酷い扱いをするのが人間だけとは限らないよな。同族モンスターがそうしないとも限らないわけだ。
俺的には、モンスターであっても仲間を大事にしない奴とは仲良くしたくないな。そう言う奴が敵になるなら、やっつけてしまえばいい。
「それでは、ノリクには限界突破種の幹部がいると想定しておかないといけないということですね。」
「それだけじゃない。
ノリク側に近代武器を作っている奴がいる。」
俺が言う。
「近代兵器、なんですかそれは?」
オーウェルさんが聞いてくる。
「帝国の船って、帆もオールもなくても動くのですか?」
俺は帝国の技術レベルを知るため、聞いてみた。
「そんな船は聞いたことがないです。」
やはりそうか。
「今回の敵の船は、帆もオールもなくエンジンで動いていました。
この世界は、俺の前世の過去に近いのですが、今回の敵の船は俺の前世の近代に近い船です。
ありていに言うと、敵は未来の兵器を使っていました。」
「なんだって!」
みんな同じ反応をしてきた。
「船だけではないです。
火薬を使った銃器や大砲まで装備してました。
幸い使われる前に、フォッサマグナで使える人間を倒したので問題はなかったのですが。」
「リバイアサンが船を沈めたのは、未来の武器を奪われないためか?」
スレイルさんが言う。
「間違いなくそうでしょうね。沈めてしまえば奪われることはないですからね。」
「敵にウル殿と同じ転生者がいるということだな。」
アウルスさんが言う。
「そうでしょうね。
しかも、俺のような一般人とは違って、兵器を実際に作ることができる専門家です。」
「そのような武器を使う相手に、正面から戦争して勝てるのでしょうか?」
オーウェルさんが聞いてくる。
「兵力が互角だとしても、無策では間違いなく負けるでしょうね。
敵の船に大砲が付いてましたので、海岸近くでは戦わない。
火薬は濡らすと使えなくなるので、極力戦闘は雨の日に行う。
敵の兵器をしっかり調査して対策をする必要があると思います。」
「なんとか諜報部隊に探らせるしかないですね。」
「転生者本人が1人で作っているなら探るのは厳しいでしょうが、量産を考えているなら探ることもできると思います。」
「なんとか、早くこの情報を諜報部隊に伝えたいのですが。」
「今、船はどの辺ですか?」
「ちょうど行程の半分と言ったところですね。」
「ここからスピード併用でフライトしたら、ドンロンの港までどれくらいですかね?」
「1日から1日半と言ったところです。」
「オーウェルさん、フライトをかけますのでで港まで飛びますか?
海上でも方向は分かりますよね?」
「そうですね。そうしていただけると助かります。」
「この船の守りはどうするのだ?」
魔王が聞いてくる。
「魔王とスレイル殿・アウルス殿・ローラン殿にお願いできませんか。
諜報部隊に情報を伝えるだけでなく、ウル殿とパワー殿にはなるべく早く迷宮に挑んでもらいたいですので。」
「この船がまた襲われる可能性もあるが、襲撃部隊の全滅を確認してから準備するとなると、かなり時間がかかるか。」
最終的に、魔王も了承したようだ。
オーウェルさんは船長にドンロンの港に飛ぶことを伝え、船員の統括などあとのことを頼むことにしたらしい。
明日の朝、俺が自分とパワーとオーウェルさんにフライトをかけて飛んでいくことになった。
翌朝、俺はパワー、オーウェルさんと一緒にドンロンの港に向けてフライトとスピードを併用して出発する。
フライトは効果時間が短いので、途中何度もかけなおす。
スピードと併用したことが功を奏したようで、次の日の夜が明ける前にはドンロンの港に着くことができた。




