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ご主人様はモンスター使い  作者: ウル
エルモンドのアドバイザー
44/122

44帝国へ向かって

登場人物

ウル(主人公)狼に転生した元人間。(★3シルバーウルフ)

パワー   ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)

ロウガ   ウルの体の元の持ち主。ウルの中で眠っている。

ケルティク ロウガの友人でメキロ伯爵配下(★4ヘルハウンド)

レオニエル モンスターの待遇向上を訴える魔王(★6魔王)

スレイル  レオニエル三兄弟の長男(★5キリン)

アウルス  レオニエル三兄弟の次男(★5ナイトメア)

ローラン  レオニエル三兄弟の三男(★5ペガサス)

ティア   メキロ伯爵の乗用竜(★5ティアマット)

オーウェル メキロ伯爵の跡取り(人間)

 俺はご主人様と分かれ、パワーと一緒に帝国に向かうことになった。

 亀島北港に船が準備できていると言うが、今いるのは馬島の南部である。

 技で体が大きくなったティアマットの背中に乗って移動するらしい。


 普段なら馬島北港まで人間が歩いて半月。船で亀島南港まで1日。そこから北港まで人間が歩いて6日かかる。全部で20日と1ヶ月近い行程になる。

 しかし、ティアマットが飛んで移動すると半日で着けるらしい。険しい山とか海の上を飛んでいけるし、何より一旦馬島南町に戻るような回り道がなく、直線距離で飛んでいけるからだ。

 ただし、昼に動くと目立つため、夜間に移動するらしい。ちょうど日が暮れてきた。これからが移動時間になるようだ。


 魔王と3兄弟はフライトをかけながらついて行くようだ。

 テンマ達にはこの地に残ってもらうことになった。


 ティアマットの背中には人間数人が乗れるような鞍が付いており、落ちる心配はなさそうだ。

 鞍にはでかいパワーが座り、オーウェルさんがパワーの腿の上に座る。俺はパワーに抱えられたまま乗ることになった。

 移動を始めると、飛ぶスピードが凄く、空気抵抗はものすごい。

 ケルティクはティアマットの頭上で方向の指示を出している。慣れたものだ。


 俺は、乗っている間にオーウェルさんに色々話を聞くことにした。風の音は小さくないが、お互いパワーの胸のあたりにいるので話せないわけではない。

 この状況じゃとても眠れそうにもないし。


(ノリクの悪行が帝国内に知れ渡っても、ノリクを倒そうという動きは出てこないのですか?)

 俺は、帝国の現状について知っておこうと思い、聞いてみた。


「逆に、ノリクに対抗するため父と協力関係にあった貴族達が、父が暗殺されてから次々とノリクに擦り寄っています。」


(我が身可愛さに怖気づいたということですか。)


「それもあるでしょうね。

 それで、彼らは口を揃えて言うのです。貴族は領民を守る義務があると。ノリクに敵対しては領民の安全が守れない。領民を戦火に巻き込んでいいのかと。」


(口だけなら何とでも言えますね。)


「だけど、私は思うのです。領内の人間だけが領民なのか?と。領内には多くのモンスターも生活しているし、父に協力してくれていたモンスターも多数います。

 ノリクは、人間以外のモンスターを道具としか考えていない。それは、帝国中枢部のモンスターの扱いを見れば分かります。30年前に魔王に滅ぼされた国を見ているようです。

 ノリクに擦り寄るということは、彼らを見捨てることになるのではないかと。だから、私はノリクと最後まで戦うと決めました。父の敵を取りたいからだと言うことは否定しませんが。

 だけど、逆に言われました。父の敵を取りたくて領民を犠牲にするつもりかと?」


(自分のことを棚に上げて勝手な言い草ですね。)

 俺はこういう我が身が可愛いタイプの奴が嫌いで言ってしまった。


「私も言ってやったのです。自分の領内のモンスターたちの安全と幸せはどう考えているのかと。」


(なんて言ってました?)

 それで、そいつらの本性が分かる。


「自分の領内のモンスターを私の領内に避難させてほしいと言ってきました。」


(随分勝手ですね。)


「私は受け入れることにしました。」


(わざわざ、そこまでしなくても。)


「私もただのお人よしではないですよ。打算があってやりました。

 避難してきたモンスターを自分の軍内に組み込みます。これで戦力増強ができます。それに、ノリクに勝った時、帰らずに残ってくれる者もいるのではないかと考えました。

 あと、状況によってこの事実をノリク側に流します。ノリクは裏切り者を徹底的に滅ぼしたがりますので、必要に応じて盾として使わせてもらいます。私に泣きついてきたら助けるつもりですが。」


 オーウェルさん、まだ若いけど貴族の跡取りだけあって、意外と強かじゃん。

 それぐらいしてやってもいいと、俺は思った。


(そこまで重要な情報を部外者の俺に言っちゃっていいの?)

 考えがあってと言うことだったので安心した反面、口が軽すぎのような。


「ウル殿の話は魔王やケルティクから聞いてます。

 私は、ウル殿を信頼できると判断しましたから、内部事情も全て話そうと思って話しました。」

 俺の事を本気で信用している線と、俺を信用させるために敢えて言った線と両方があり得るけど、感と言うか雰囲気で前者だろうと思う。俺もオーウェルさんには何でも聞いて突っ込んでいこう。ないと思うが、万が一後者なら綻びが見えるだろうからな。

 それに、俺には負けそうになっても見捨てて逃げるという選択肢はないよな。五島諸島まで戦火に巻き込まれるし。

 オーウェルさんとは今日初めて会ったばかりなのに、一蓮托生の関係になってしまった。


(で、ノリクとは戦争になりそうなの?)


「いずれなるでしょうね。父の同盟者を剥がせるだけ剥がしたら攻めてくると思います。

 私の領地は帝国内では僻地ですので、向こうは長距離の行軍が必要でしょうが。」


(それまでに、魔獣ガイアを手に入れないといけないのですよね?)


「はい、お願いします。

 ノアの迷宮は私の領内にありますので、領内まで行けばすぐに着きます。

 その間に避難してきたモンスターを編入して、軍を編成し直すつもりです。

 あとは、魔王にどこまで手を出してもらうかと考えないといけないですが、それは本人に相談します。」


(ガイアを手に入れてからになるでしょうが、やってみたいことがあるので、考えを聞いていいですか?)


「提案は何でも歓迎ですよ。」


(皇帝を救出して、大義名分を得るはできないですか?)


「それが出来れば大きいですが、ノリクも最大限の警備をしているでしょう。」


(魔王の力で強引にでもできれば、戦況を逆転できないですかね?

 ノリクは魔王が復活していることを知らないですよね。)

 我ながら魔王の圧倒的なパワーに頼り切りと言うのもどうかとは思うが。


「ノリクなら、影武者を立てて救出した皇帝陛下は偽物だくらいはやってきそうですね。

 とは言え、父の元同盟者に本物だと信じさせることができれば、大きな影響を与えられそうです。

 一度、魔王に相談してみましょう。その時は、ウル殿にも同席をお願いしますね。」


(帝国外の他国に支援求めることはできないのですか?)


「私の領地の奥の未開の地に、亜人が住んでいる地域があります。

 彼らと交易している領内の商人もいますので、彼らと何らかの協力関係が結べればと思ってますが、ノリクに攻められて救援要請しても助けてはくれないと思います。

 あと、北の大陸はハキルシアと4つの属国からなっており、帝国の影響外の国はないです。」


(属国の中で不満は出てないですか?)


「ノリクが宰相になってから細かい不満が色々出ているみたいですが、反乱する度胸まではないでしょうね。」


(そうなると、大陸の中で孤立無援で戦わなければいけないことになりますね。)


「ええ、そのとおりです。

 魔王やガイアの力で初戦・二戦と勝って、父の同盟者達をこちらになびかせるところまでできてからがスタートだと思ってます。」


 勝つことを前提にした見通しは無茶だって。

 しかも、そんな日和見の連中を当てにするとか。

 この八方塞がりな状況何とかできないか。


(勝つことを前提にした作戦には無理がありますから、他にできること考えましょう。

 貴族なのですから、諜報部隊は持っているのですよね?)


「はい。父は重視していましたので。

 能力が突出した人はいませんが、人数は同規模の貴族よりはかなり多いですよ。」


(じゃあ、既にやってることもあるでしょうが、帰ったら今から言う中で調べることが出来そうな事をやってください。)


 俺は、以下のようなことを調べて欲しいと提案する。

・4属国の支配者の情報収集。ノリクへの不満の程度、野心家の支配者がいないか。

・帝国内のモンスターのカリスマ的な存在がいるのかどうか。

・皇帝の日常生活、普段どこで何をしているか。

・ノリクの日常生活、普段どこで何をしているか。

・ノリクの重臣について、能力と性格・ノリクとの関係

・ノリクが宰相になって実権を掌握できた理由(どうやって権力を握ったのか)

・帝国内に封印されている魔王の位置と能力

・未開の地の亜人の人口・戦力、能力


「4属国で野心家を調べるというのは、場合によっては協力関係を結ぶということでしょうか?」


(そうだ。味方がいなくとも、せめて敵の戦力を分散はさせたい。)


「既に分かってる中では、マケルーノ公国のケイシュール公は野心家だったはずです。

 ただ、噂を聞く限り人物としてはノリクに近いタイプだと思いますが。」


(それでも構わない。

 情報操作などで、なんとかノリクの戦力を分散させて時間を稼ぐことも考えたい。)


「分かりました。他の3国についても調査しましょう。

 帝国内のモンスターのカリスマ的存在と言うのは?」


(モンスターをまとめて味方に引き入れられないか。

 それが出来なくとも、ノリクの手を煩わせて戦力分散を図りたい。)


「カリスマかどうかはともかく、ノリクが手を焼いているモンスターはいますね。限界突破種の★5ガルムで名前はアレス。首都ルーベンブルクで好き勝手暴れまわっているようです。」


(どんな奴なんだ?)


「ルーベンブルグの貴族の館が多数襲われたみたいですね。颯爽と現れて好き勝手してあっという間に去っていくみたいです。」


(襲われたのが貴族の館だけなのか?)


「そう聞いていますが。」


(襲う理由次第では味方にする可能性はありそうだと思った。

 アレスの目的や性格というか人となりが知りたい。)


「分かりました。アレスの件ももっと詳しく調べてみますね。

 皇帝陛下の日常生活と言うのは、やはり救出狙いですか?」


(それもある。あと、皇帝もいつかは大人になるだろ。

 その時に、ノリクが皇帝をどう扱うつもりなのかを知りたいと思った。)


「場合によっては皇帝陛下の側近も一緒に脱出させるわけですね。」


(まあ、最終的にはそこに行きつくな。)


「ノリクの日常生活と言うのは、暗殺狙いですか?」


(厳しいと思うが、それも選択肢には入れておきたい。

 細かい情報から、戦うときの弱点が見えるかもしれないからな。)


「確かにそうですね。権力を握った理由や重臣も含めて色々調査させましょう。

 この辺りは父も調査させていたはずですから、潜入中の部隊と接触して既に得た情報を一度集めます。」


(そりゃそうだよな。俺が今思いついたことくらいは、全部調査済みで報告待ちとかだといいんだが。)


「調査項目が多岐にわたっていて、参考になりました。

 ウル殿は転生されたと聞いていますが、前世ではそのような任務にあたっていたのですか?」


(ただの使い走りだ。

 この世界は前世の過去に似ているから勉強した歴史が多少参考になるくらいだ。)

 さすがに、ゲームの世界で色々考えたとは言えない。


「歴史の勉強をする時点で上流階級なのでは?」


(前世では、庶民もそう言う勉強したんだ。それができるくらいシステムがしっかりと出来ていた。)


「いいですね。ノリクに勝てたら、誰でも高等教育が受けられる国を作りたいです。」


(まずは、ノリクに勝つことを考えないと絵に描いた餅ですからね。

 残りの魔王や未開の地の件もお願いしますよ。)


「分かってます。確かに考えると色々手はありそうですね。

 ちなみに、帝国には魔王は2体しか封印されていません。どちらもそこまで力を持った魔王ではありません。魔王は五島諸島に封印されることが多いです。五島諸島は地理的に世界の中心にあるせいか、魔王が最初に現れることが多いためと言われています。

 亜人については、戻ると分かっていることをまとめた資料がありますので、そちらで説明しましょう。」


(あと、ナイトメアのアウルスさんとも相談したいですね。切れ者だと思いますので。)


「分かりました。魔王と相談するときに入ってもらうようにします。」


 情報が入ってこれば、新たに考えることも出てきそうだ。

 やるからには、勝つためにできるだけの手は打とう。俺はそう思った。


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