43謎の人物の正体
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★3シルバーウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)
ガルガン レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)
パワー ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)
俺達は、評議会の結果が出るまで、グレイファスさんと攫われたモンスターを返しながら待つことにした。
南町を全部片づけたら、途中護衛をしながら西町に戻る。そして、西町の件も全部片づけた。
対応の悪いマスターも若干いたが、ルイさんからきつく言ってもらった。
ルイさんは、エゴの塊かと思っていたけど、意外にも熱心に対応してくれた。
ブランカを通じて、評議会の結果を聞いてみるか。
パワーに話を聞いてきてもらうと、今後の魔王の動きを注視し、被害が出たところで対応を考える方向らしい。
まだ、他国には連絡は取らないようだ。
ご主人様の案の攫われたモンスターを返す方向にしてよかったな。
これで、しばらく討伐隊が結成されることもないな。
シーザーさんには無駄足を踏ませてしまった。まあ、センターから迷惑料程度の報酬は出るのだろうけど。
「一度、魔王に報告に行かない?
ついでにウルの謎もはっきりさせた方がいいわ。」
ご主人様が言う。
確かに、俺の事を知っていた奴のことがずっと引っかかっているのでいい加減はっきりさせたい。
俺達は護衛の依頼を受けながら再度南町に戻った。
そして、ミランドさんに確認を取った上で、魔王に人間側の対応について伝えに行くことにした。
ミランドさんは他にも仕事があるので、俺達だけで行くことになった。
翌日から、封印があった魔王レオニエルの本拠地に向かって進む。
今回は魔王アリエルの封印に寄る必要がないので、多少急げば3日あれば着けるはずだ。
3日目の朝、空中から巡回していたペガサスに発見される。
ペガサスに、センター側の対応の要点と結果を報告に行くことを魔王に伝えてもらった。
元封印の場所に行くと魔王が待っていたが、後ろに巨大なドラゴンが待っていた。★5ティアマットだ。
これは、紹介してもらえるパターンか。
(レンディール殿、ウル君、待っていたよ。
レンディール殿の機転のお陰で人間達と戦わずに済み感謝している。
ウル君、今日はちょうど君に紹介したい人物も来ている。)
よし、いよいよ俺を半月以上悩ませた謎が解けると思うとドキドキしてきた。
(俺の事を魔王に紹介した人ですよね?)
(そうだ。呼んでくるから待っていてくれ。)
魔王はそう言うと、洞窟の中に入っていった。
すぐに人間が出てくるが、俺の知らない人だ。
(紹介しよう。メキロ伯爵のご子息オーウェル・メキロ殿だ。)
魔王が紹介するが、俺はこんな奴知らないぞ。初めて会ったぞ。
まだ若いな。17-8歳か。
(そして、こちらが配下のヘルハウンドのケルティク殿だ。)
あっ、ハルメルンさんの傍にいたヘルハウンドだ。
「オーウェルです。ウル殿、初めまして。
ウル殿のことはケルティクから聞いております。よろしく。」
(ウルです。こちらこそよろしく。)
俺の事を知っていたというのはケルティクのことだったんだ。
確かに一度は会ってるし、彼と呼ぶべきだけど、なぜ俺の事を知っているんだ?
(ケルティクじゃねえか。久しぶりだな。
俺の声が聞こえるか?)
俺の中の謎の声が、ケルティクの知り合いなのか。聞こえてなさそうだけど。
(ウル殿、久しぶりだな。ロウガは目覚めているか?)
ケルティクが言う。
こいつ、なぜ俺の前世の名前を知っている?
いったい何者なんだ。
それに、ハルメルンさんの所にいた時と口調が変わりすぎ。あれは演技だったのか?
(ロウガって誰なんだ?)
俺はケルティクがどこまで知っていのるか確認するため、かまをかけてみた。
(ウル殿の体の本来の持ち主だ。)
そういう事か。
この体の持ち主の名前が、たまたま俺の前世と同じだっただけだな。
これで、ケルティクが俺の前世関係者でないことは分かった。
後は、この世界への転生関係についてどこまで知っているか、色々聞いてみよう。
(俺はシルバーウルフに進化していたのに、よく分かったな。)
こいつは俺が進化していたのに、なぜロウガだと分かったのか?
(進化して姿は変わっても、声に面影が残っているし、匂いはそのままだったからな。)
なるほど、匂いか。
(魔王にはなぜ俺の名前を言わなかったんだ?)
ハルメルンさんの船で俺は名前を名乗ったはずだ。
(貴方が魔王に会うときに、ロウガの名前で名乗るのか、ウル殿の名前で名乗るのかが分からなかったからだ。)
(俺はウルだ。)
(だが、体の持ち主であるロウガも貴方の中で眠っている。
目覚めてロウガの名前で名乗る可能性も考えた故に、種族名で伝えた方が確実だと思ったからだ。)
(俺の中に眠ってる?
ひょっとして、もし、目覚めたら、俺の頭の中に声が聞こえるのか?)
(と言うことは、既に目覚めてはいるということか。
まだ、力は取り戻せていないようだが。)
(力を取り戻すとどうなるんだ?)
(恐らく、本来の体の持ち主ではないウル殿の精神が今の体から追い出される可能性が高いな。)
(なんだって。追い出られたら俺はどうなるんだ?)
俺は驚いてケルティクに聞く。
(消滅するか、アンデッドになるかどちらかだろうな。)
そんな重大なことを顔色1つ変えずに言うんじゃない。
(何とかならないのか?)
(一応、その方法を提案するために我々もウル殿を探していた。)
(と言うことは、方法はあるんだな?)
(お二方で1つの体を共有することで折り合いがつくようならそれでもいいし、そうでないなら、どちらかが別の体に移るしかない。)
(そんな都合のいい体があるのか?)
(ハキルシアの大魔術師ノアが封じた魔獣ガイアには、魂がない。それを手に入れてどちらかの魂をガイアに移すことになる。)
(ガイアって、魔王戦でも活躍した強力な魔獣だろ?
俺が移ってやってもいいぜ。)
頭の中のロウガが話してきた。ロウガは狼の体を捨てて、強い肉体を手に入れたいらしい。
俺はそれでもいいか。これで今の体が完全に俺のものになるわけだから。
(ロウガは、ガイアの肉体を手に入れたいと言っている。)
俺はケルティクに言う。
(ウル殿とロウガの間で合意ができていればどちらでも構わない。
問題はそれができる博士がノリクに殺されてしまっていることだが。)
(結局、できないんじゃないか。)
(今、ノリクの魔の手から救出した博士の弟子たちが残された博士の書物を必死に解読している。)
(俺を転生させたのは、その殺された博士なのか?)
(そうだ。
ロウガは魂に重大なダメージを受けたので、命をつなげるために一時的に代わりの魂を入れる必要があった。
そのため、博士は異界から肉体を失った魂を呼び寄せたと言っていた。
とは言え、あくまで臨時の措置なので、博士はいずれロウガの体に入った貴方に要望を聞いて、代わりの肉体を準備するつもりだったのだが。)
(やけに詳しいな。)
(博士は私の最初のマスターだからな。)
なるほど、それで俺の転生関係のことに詳しいんだ。
(今は違うのか?)
(今の私にはマスターはいない。最後のマスターだったメキロ伯爵もノリクに暗殺されたからな。)
(ハルメルンさんは違うのか?)
(メキロ伯爵の指令でハルメルン殿の護衛をしていただけで、マスターではない。
本当はノリクにつながる誘拐犯をハキルシアまで連れていってから捕らえるつもりだったが、ウル殿に連れていかれてしまったのでな。)
だから、あまり協力的ではなかったんだ。
(と言うか、ノリクって宰相は相当な悪党じゃないか。
誘拐の証拠をあげても何とも出来なかったのか?)
(身の危険を感じたのかは分からんが、メキロ伯爵を暗殺することで黙らせようとしてきた。)
極悪人じゃねえか。
(このままいったら、帝国はノリクの手に落ちそうなのか?)
(そうなるだろうな。帝国内を完全に掌握したら、ノリクは五島諸島にも侵攻してくるだろう。)
はっきり言って、ノリクって奴、人間版魔王じゃん。
メキロ伯爵側が信用できるかどうかはまだ判断できないが、敵対しているノリク側が極悪人であるのは間違いない。
(あんたは魔王レオニエルに何か依頼をしに来たのか?)
(私ではなくオーウェル様がだが。
魔王レオニエルを味方に引き入れ、伝説の魔獣ガイアを手に入れることでノリクに対抗しようと思っている。
魔王からは、モンスターの暮らしやすい国を作るという条件を提示されたので、了承した次第だ。
具体的な要望は、ノリクに勝った後魔王に要望を細かく聞くことになるが。)
俺にとっては遠い北の国の争いかと思ってたけど、俺にも火の粉が降りかかってきては手を出さざるを得ないか。
とりあえず、こいつらに協力してノリクって奴に勝てば、
・ロウガがガイアの肉体に移動し、今の体は完全に俺のものになる。
・魔王の理想としているモンスターが幸せに暮らせる国ができる。
うん、話が本当であれば、メキロ伯爵側について問題はなさそうか。
さすがにメキロ伯爵側が魔王を騙すようなことはないだろう。ばれたら後が怖いだろうし。
(魔王は、協力することにしたのですね?)
俺は魔王にも確認する。
(そうだ。魔王が復活した話が広がると危険なため、あまり目立つことはできないがな。)
俺は、自分のことがあったから一人で話し続けたが、ご主人様はどう思ってるだろう?
(俺は、魔獣ガイアを手に入れるために彼らに協力しようと思いますが、ご主人様はどう思いますか?)
「ウルが自分の体を手に入れるためにはそうするしかなさそうね。
だけど、私は五島諸島に残ることになるわ。
五島諸島の人間が帝国内で対立している勢力の片方に与すると色々問題起こりそうだから。
南町に今回のことを報告しておかないといけないというのもあるけど。」
(そうですか。ご主人様、今までお世話になりました。
ノリクが片付いたら、また、冒険しましょう。)
「そうね。待ってるわ。ウル、死なないでね。」
ご主人様は俺の目指す道が危険であることを認識しているようだ。
(ウル様、俺様は連れていってくれるんだよな?)
パワーが聞いてくる。
(危険だぞ。分かっていて言ってるのか?)
(勿論だぜ。)
(分かった。パワー、頼んだぞ。)
(俺様に任せておけって。)
こうして俺はご主人様と別れ、パワーと一緒に北の帝国を目指すことになった。
今までの情報でノリクが悪党だというのは分かっていたから、迷うことはなかった。
ただ、メキロ伯爵側が正しいかどうかはまだ断定はできない。それは、これから一緒に行動することで判断していこうと思った。




