42魔王との討論「2」
登場人物
ウル(主人公)狼に転生し、レンディールの僕となる。(★3シルバーウルフ)
レンディール 人間のモンスター使い。俺のご主人様。
リーザ レンディールの仲間モンスター。(★2イーグル)
ガルガン レンディールの仲間モンスター。(★2サーベルタイガー)
パワー ウルの仲間モンスター。(★3ポールベア)
「逆に聞きたいのですが、魔王は何をめざしているのですか?
今のシステムを力づくで変えたいと考えているのですか。」
ミランドさんが逆に魔王に聞く。
「今回保護したモンスターの対処を聞く限り、モンスター側にも配慮した対応をしてくれると分かった。
なので、人間側が今後モンスターの待遇を悪化させるように制度を変えたりしない限りは、私の方から特に何かをするつもりはない。
逆に、人間側は私の封印が解けたと知って私と敵対するつもりがあるのかね?」
魔王は答えつつ、逆に聞いてくる。
「それについては私では答えかねます。
一担当者の判断の範疇を超えていますので。」
ミランドさんは答える。
「そうだな。
私としては先ほども言った通りこちらから何かをするつもりはないが、滅ぼしに来るのであれば、戦うしかない。」
魔王が答える。
一気に不穏になって来た。
「ご主人様、何とか戦わずに済む方法はないですかね?」
俺はご主人様に聞く。
「とりあえずは、攫われたモンスターは全て返す。
その上で様子を見るしかないわね。」
ご主人様は答えるが、実際、それくらいしかできる事はないだろう。
「私は魔王に支配されていましたが、考え方は分かりますよ。
戦いにならないよう当事者として主張だけはするつもりです。」
グレイファスさんが言う。
今回の人間側の中で犠牲者であるグレイファスさんがこう言うのはセンターの判断に影響するだろうか。
「魔王がモンスターの立場について主張する話は理解できますし、私自身の個人的見解としては、戦いたくはないと思っています。
ですが、センターと言う組織としてどう判断するかは別問題ですので。」
ミランドさんが言う。
「ウル様、なんでセンターと魔王が戦う必要があるんだ?
魔王が戦うつもりがないと言っているのに。」
パワーが聞いてくる。
「過去の魔王の殆どが人間世界の破壊をしてきたからでしょうね。」
ミランドさんが答える。
「ただ、魔王レオニエルは実は勇者なのでしょう。
そこを話して何とかならないでしょうか。」
俺はミランドさんに言う。
「勇者である証拠はないわ。
だけど、魔王レオニエルは封印が解けても破壊行為は行っていない。
そこを話して納得してもらえるか話すくらいが私にできる精一杯ね。」
ミランドさんは答える。
「とりあえずここにいるメンバーで精いっぱい説得するしかないわね。
グレイファスさんが無事、かつ、攫われたモンスターを全て返せば人間側の損失はないはずだから。」
ご主人様が言う。
それしかないか。
だが、この場にいるほぼ全員が魔王側の立場で考えている。
精一杯主張するしかないと俺は思った。
こうして魔王との討論は終わった。
結論は出なかったが、少なくとも今すぐ剣を抜く理由も失われた。
翌日、俺達は攫われたモンスター達やグレイファスさんを連れて南町に帰ることにした。
途中で俺達が呼んだ討伐隊にうまく話を付けなければならない。日数的に言って、最速で出発しているなら今日の夕方頃には会うことになるはずだ。
リーザやフレア「アレフさんのヤングレッドドラゴン」に空から確認してもらうと、討伐隊の方からも偵察を出していたようで、お互いを発見することができた。
向こうも大丈夫そうだと判断できたらしく、討伐隊のジェラールさんがヒポグリフォに乗ってやってくる。
ハンニバルさんを隊長とした討伐隊が来ているそうだ。シーザーさんはまだ到着していないので、ほぼ前回の討伐隊メンバーらしい。
こちらからも、グレイファスさんや攫われたモンスターを救出した旨伝えて、お互い地上を進んで夕方に落ち合う事になった。
夕方頃、討伐隊の野営の陣が見えてきた。
いきなり攫われたモンスターを元マスターに会わせると混乱しかねないので、ご主人様とミランドさんだけが先に事情を話しに行く。
俺達は攫われたモンスター達の番をしながら待つ。
帰れることになったのに、モンスター達は不安そうだ。そりゃそうだろう。
俺はできる限りマスターに話すからと言って、なんとかなだめた。
ご主人様とミランドさんが、ハンニバルさんとサイアスさんを連れてきた。
サイアスさんの攫われたモンスターは★3フルファクシだったな。
サイアスさんが
「ブレッド、俺だよ。」
と呼ぶが、フルファクシはグレイファスさんの後ろに隠れてしまう。
「まだ、操られているのですか?」
サイアスさんが聞く。
「いいえ、あなたとの契約が解除されているだけよ。」
ミランドさんが言う。
そして、ミランドさんの説教が始まった。
サイアスさんは、無茶もさせたが基本モンスターを使い潰すつもりがあったわけでもなかったようで、ブレッドに謝って戻ってもらうことができたようだ。
討伐隊には他にも、マリーさんとステッドさんがモンスターを攫われていたので、同じような展開を繰り返し行った。
残りのモンスターについても元の持ち主に話をすることをハンニバルさんに伝える。各々の事情を考慮してだが。
それが終わると、ハンニバルさんと魔王の話になる。
ハンニバルさんは、魔王との話が信じられないようだった。
まあ、俺も魔王がこんなに話が分かる人物だとは思わなかったけどな。
ハンニバルさんも、このまま魔王討伐に向かっても負けることは分かっているので、センターに戻って報告するという。
問題はその後の対応だよな。ハンニバルさんの話では、各町のセンターの責任者を集めた評議会と呼ばれる会議が開かれることになるらしい。そこで五島諸島のセンターとしての最終的な対応が決まるようだ。
俺の知ってる中では虎島港のアーカイクさんや馬島西町のルイさんがメンバーの1人として参加するらしい。どうなるかはハンニバルさんにも予想は付かないみたいだ。
その日の夜、俺はグレイファスさんに聞きたいことがあったので、話をしに行った。
「ウルさんじゃないですか。どうしたのですか?」
「実は、魔王に会う前の日に俺達のところに来たのは、俺を魔王のところに連れていくことが目的だったのですよね?」
俺は、グレイファスさんに聞く。
「そうですけど。」
「なぜ、最初は黙っていたんですか?」
「ウルさんに警戒されて逃げられるわけにはいきませんでしたので。
特に、魔王が既に復活していることがバレたら、間違いなく全員撤退していたでしょう?」
「それはそうだが。
俺のことを直接聞かず、ご主人様の仲間モンスターの種族の確認をして、探りを入れたみたいですけどカモフラージュでしたか?」
「いや、目的のシルバーウルフはマスターがレンディールさんで、仲間にポールベア・イーグル・サーベルタイガーがいるという話でしたので、それを確認しただけです。」
よし、収穫があった。
魔王に俺を紹介した奴は、俺達の仲間全員と種族まで把握してたってことか。魔王も最初に俺の名前を呼ばなかった。ご主人様の名前と俺の種族だけを知っていたわけだ。
俺を転生させた奴なら、ずっと監視でもしていない限り、俺がシルバーウルフに進化したことは知らないはずだ。と言うことは、俺が進化してから会った奴と言うことになる。
マイケルさんやアーカイクさんは一応対象人物だが、ないよな。あとは、ハルメルンさんか。今エルシアの港に着いたばかりだろ。魔王にどうやって会うんだ。ないな。
まあいい。これで、ある程度考える対象は絞れた。
「魔王の息子達以外で誰か魔王に会っている人物を知りませんか?」
「ウルさんを迎えに行く前の日に、魔王が見たことのない人間と会っているのは見ましたが。
それが何か?」
「その人の顔の特徴とかは分かりませんか?」
「いや、遠くから見ただけですから。
大きなドラゴンを連れていましたよ。★5ティアマットです。
その後、ティアマットがその人間と他の仲間モンスターを乗せて飛んでいきました。」
俺は★5ティアマットを連れている人間になんて会ったことがないぞ。
でも、相手を探す上でこれは重要な情報かもしれない。
その人間は俺の事を知っている人物である可能性が高いからだ。
俺はグレイファスさんにお礼を言って戻った。
俺達は2日かけて南町に戻る。
そこで討伐隊は一旦解散となった。
あとは、評議会でどのような結論が出るかだ。
ミランドさんがグレイファスさんが主張してくれるらしいので平和に終わって欲しいが。




